コンテンツマーケティングにおける戦略とは?/マーケティング戦略の一環としてどう立案するか考える

モバイルパソコンの画面に「CONTENT」の文字とロケットのイラスト


コンテンツマーケティングとは、自社がターゲットに据えた消費者に対し、彼らが必要とする情報をコンテンツとして届け、ブランドの向上、自社製品・サービスの購入などに繋げるマーケティングの一手法です。
ただ、やみくもにコンテンツを量産し、配信しても、期待した効果は得られません。そこには、明確な戦略が求められ、良質なコンテンツをターゲットに確実に届けるために、ベストなコース取りが重要になるのです。
そこで今回は、コンテンツマーケティングにおける戦略の重要性について、企業の事例も交えて、詳しくご紹介しましょう。

この記事の目次

コンテンツマーケティングとは何か

コンテンツマーケティングとは何か


コンテンツマーケティングにおける戦略の有用性を述べる前に、コンテンツマーケティングとは何か、改めて確認しておきましょう。

コンテンツマーケティングの定義

コンテンツマーケティングの第一人者として知られる、CONTENT MARKETING INSTITUTEの創始者でもあるジョン・ピューリッジ氏は、コンテンツマーケティングの定義を次のように述べています。
「コンテンツマーケティングとは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています」。
端的に言うと、ターゲットとする顧客に対し、価値のあるコンテンツを継続して提供することにより、自社に気づいて魅力を感じてもらい、最終的には自社の製品・サービスを購買してもらうこと、ということになるでしょう。

コンテンツマーケティングにおける戦略

よくビジネスは、戦争あるいは戦いに例えられます。
ビジネスは市場において競合他社が存在し、実弾や弾薬は飛び交わないものの、常に熾烈な競争にさらされています。戦争と変わらない、真剣勝負といえるでしょう。「戦略」という概念は、戦いにおいては重要な意味合いを持ちますが、ビジネスにおいても同等の重みを持っています。
日本語大辞典(精選版)で、「戦略」を引くと以下のような解説が出ています。

せんーりゃく【戦略】
①いくさのはかりごと。戦いに勝つための大局的な方策や策略。戦術よりも、上位の概念。
②ある目的を達成するために、大局的に事を運ぶ方策。特に政治闘争、企業競争などの長期的な策略。

日本語大辞典(精選版)

つまり戦略とは、「ある目的を達成するために、長期的な視野に立ち、持てる力や資源を有効活用するための総合的な技術」ということになります。
これをコンテンツマーケティングに置き換えると、「コンテンツの力で成果を出すには何をするべきか」、あるいは「最短で効果を出すには何を削るべきか」など、総合的な視点で、目的を達成するためのシナリオが戦略ということになります。
コンテンツマーケティングの先進国アメリカでは、先に触れたCONTENT MARKETING INSTITUTEとMarketing Profitsとが、コンテンツマーケターに対して過去11年に渡って共同調査を行い、その結果を「B2B Content Marketing ~11TH ANNUAL BENCHMARKS,BUDGETS,AND TRENDS~」にまとめました。


※1「B2B Content Marketing ~11TH ANNUAL BENCHMARKS,BUDGETS,AND TRENDS~」
https://contentmarketinginstitute.com/wp-content/uploads/2020/09/b2b-2021-research-final.pdf


それによると、 B2Bマーケッターの43%が、「コンテンツマーケティングの戦略を文書化して持っている」と回答し、36%が「文書化してはいないが、コンテンツマーケティングの戦略はある」と答えており、両者を合わせると、全体の79%が、コンテンツマーケティングにおける戦略を有していることが分かりました。

なぜ、コンテンツマーケティングにおいて戦略が必要なのか?


コンテンツマーケティングも事業活動の一環である以上、一定期間内に想定した成果が求められます。これを事業目的と呼びますが、一般的にはKGI=Key Goal Indicator、日本語に訳すと重要目標達成指数となります。
民間企業であれば、利益の追求が経営を存続・維持させる上での目標ですから、売り上げ向上が第一義です。ただ、コンテンツマーケティングにおけるKGIは、企業や組織により、様々に設定されています。すなわち、「顧客数を増加させる」、「自社のブランドを向上させる」などです。
コンテンツマーケティングとは、KGI=到達点に至るまでのアプローチの方法であり、KGIに辿り着くための手段が戦略ということになります。
ではなぜ、コンテンツマーケティングに戦略が必要なのでしょうか。それは、以下の理由によるものです。

限られた経営資源を有効活用するため

コンテンツマーケティングは、効果が現れるまでに時間のかかる施策と言われています。事業を実践するには、資金、人、時間など、あらゆる経営リソースを投下しなければなりません。経営者であれば誰でも、最小のコストで最大の利益を期待するでしょう。それには、事前に「何を実現したいのか」というビジネス上のゴールを定め、そのゴールに到達するために、どの程度のリソースをどの施策につぎ込むか、という戦略が不可欠になるのです。

顧客との接点を最適化するため

コンテンツマーケティングを実施する目的は、「顧客接点の最適化」といわれています。自社にとっての見込み顧客、または顧客に対し、良質なコンテンツを継続して届けることにより、彼らとの良好な関係を築きくことが必須なのです。
しかし、どんなに優れたコンテンツでも、作成して配信すればそれで終わり、というものではありません。彼らが有益と感じる情報を、タイミングよく提供することが重要になるのです。そのためのベストなルートが、戦略ということになります。

組織内において、コンテンツマーケティングの方向性を統一するため

コンテンツマーケティングは、自社のターゲットがどのような課題を抱え、それを解決するためにどんなコンテンツが必要かリサーチ・分析し、コンテンツを作成して、正しい効果測定を行った上で、コンテンツの内容を修正していかなければなりません。一つの組織内に、各工程の担当者が複数存在することになります。従って、しっかりと戦略を定めておかないと、コンテンツの方向性がぶれ、定義で謡われているような、「価値のある一貫したコンテンツ」を作成・配布することができなくなってしまうのです。

コンテンツマーケティングにおける戦略の立て方

コンテンツマーケティングにおける戦略の立て方


ではここからは、コンテンツマーケティングの戦略の設定方法について、具体的に見ていきましょう。

現状課題の洗い出しとKGIの設定

まず、自社が抱える課題の洗い出してみましょう。
例えば、

「広告費に費用をつぎ込んでも、思ったように顧客数が伸びない」、「自社製品・サービスのリピーターが少ない」、「自社及び製品の知名度が低い」といったところでしょうか。

次に、これらの課題を、コンテンツマーケティングの手法でどう解決できるのか、KGIを考えてみましょう。上記の例でいえば、以下のようになります。


「広告費に費用をつぎ込んでも、思ったように顧客数が伸びない」

「新規顧客数を増やす」
「自社製品・サービスのリピーターが少ない」

「既存顧客を優良顧客に育成する」
「自社及び製品の知名度が低い」

「自社の認知度を高める」

ペルソナを設定する

コンテンツマーケティングの目的は、ターゲットとする顧客に対して、価値のあるコンテンツを継続して提供することで、自社に気づいて魅力を感じてもらい、最終的には自社の製品・サービスを購買してもらうこと、となるでしょう。
そこで重要となるのは、自社のターゲットとは「誰」で、価値あるコンテンツとは「誰」にとってなのか、という問いかけです。
自社の製品・サービスに魅力を感じ、購入してくれる人物は誰なのか、を導き出す上で大きな役割を果たすのが、「ペルソナ」の設定です。

ペルソナとは、古典劇で役者が被る「仮面」を意味します。心理学では、「人の外的側面、自分の内面に潜む自分」と定義されています。そこから派生して、マーケティング用語では、「架空のユーザーの姿・人物のイメージ」と解釈されています。
ユーザーの年齢、性別、職業、収入、居住地など、数値化できる定量的なデータはもちろん、趣向や好み、悩みなど、数値化しにくい定性的なデータまで、考え付く限りの要素を盛り込み、血の通った人物像に仕上げることが必要です。これにより、誰にどのようなコンテンツを、どんなチャネルで提供するべきか」が明確になります。

カスタマージャーニーの設計

カスタマージャーニーとは、ペルソナの行動が、購買プロセスのどの段階にいるのか、時系列で表したものです。ペルソナの動きを見える化することにより、企業と顧客との接点を数え上げ、彼らの欲している情報を、最適な場所、ベストなタイミングで届けることができるのです。
ここで留意することは、購買プロセスが変遷しているという事実です。
インターネットが登場するまでの、昭和から平成初期までは、消費者は商品の情報を、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアを経由して収集していました。
この頃は、消費者の購買行動は以下のようなプロセスを踏んでいました。

a.情報からその商品・サービスを認知する。(Attention)
b.商品を認知した消費者が、興味を持つ。(Interest)
c.その商品が欲しくなる。(Desire)
d.その企業のブランドや商品名を記憶する。(Memory)
e.購買行動を起こす。(Action)


この購買行動プロセスを、「AIDMA理論」と呼びます。
一方、2000年代に入り、インターネットが普及すると、消費者の生活は多大な影響を受けます。ことに、情報の収集と発信において、格段の変化をもたらしました。それに伴い、消費者の購買行動も、以下のように変化を遂げます。

a. 情報からその商品・サービスを認知する。(Attention)
b. 商品を認知した消費者が、興味を持つ。(Interest)
c.消費者が、商品やサービスについて、ネット検索する。(Search)
d. 購買行動を起こす。(Action)
e.購買した後、商品について情報発信・共有する。(Share)


当然、消費者の購買行動も変わり、このプロセスを「AISAS理論」と称しました。
AIDMA理論と決定的に異なるのは、AIDMAは、企業側は情報発信役に徹し、消費者はその情報を受け取るだけの役割でした。これに対してAISASは、消費者に検索(Search)と共有(Share)という、能動的な行動が加わることにより、企業と消費者とが互いに関係し合うようになったということなのです。

 

コンテンツの方向性と内容、チャネルを決める

この段階で、どのようなコンテンツを作成するのか、その方針を決定します。併せて、コンテンツの内容も決めて、作成に取り掛かりましょう。
配信に使用するチャネルも決めておきたいところです。
コンテンツをオウンドメディアで公開するのか、SNSに投稿するのか、あるいはYouTubeやニコニコ動画のような動画サイトに配信するのか、どのチャネルを使用するかで、折角作成したコンテンツも、目指すターゲットに届かない恐れもあるのです。設定したペルソナと、カスタマージャーニーに即して、コンテンツの方針と内容、適切なチャネルを決定しましょう。

KPIを適切に設定する

KPI(Key Performance indicator =重要業績評価指標)は、KGIをどこに設定するかによって変わります。コンテンツマーケティングのKGI(目的)が、新規顧客の獲得であれば、KPIはサイトのPV数、セッション数、UU数、問い合わせ数などが考えられます。また、KGIが既存顧客の育成であれば、KPIはサイトへのリピート率やエンゲージメント率ということになります。
目的地が変われば、進む方向もアクセス方法も変化します。
KGIを設定することにより、その到達点に至るまでの中間位置を示すKPIが決定されます。コンテンツマーケティングは時間のかかる施策であり、遂行した後、定期的に進捗を測定することにより、常に企業自らの立ち位置を把握することが可能になるのです。

効果測定を行い、その都度、修正を行う

綿密に戦略を立て、施策を実行しても、必ず効果が期待できるとは限りません。
施策を遂行したら、定期的に効果測定を行い、今行っているコンテンツマーケティングを改善していくことが重要になるのです。
いわゆる「PDCA」をこまめに回していくことが求められますが、こうすることにより、当初に設計したペルソナや、カスタマージャーニーを見直し、場合によっては変更する必要が出てくるかもしれません。ただ、そのようなケースでも、柔軟な姿勢で臨むように心掛けてください。

コンテンツマーケティング戦略の成功事例

コンテンツマーケティング戦略の成功事例


では最後に、戦略の観点から、コンテンツマーケティングに成功している企業の事例をご紹介しましょう。

「サイボウズ式」

ビジネスシーンでは多く利用されている、「kintone(キントーン)」や「サイボウズOffice」などのグループウェアを開発・販売している、サイボウズ株式会社が運営しているオウンドメディアです。
サイト内を回遊して気付くのは、読者の属性を入手するためのフォームが存在しないことです。そして、コンテンツ記事の内容は、「マネジメント」、「就活」、「多様性」、「ワークスタイル」、「人事制度」、「キャリア」など、広範なトピックを扱っている点です。このことから、同メディアの開設目的は、短期的な自社製品・サービスへの誘導ではなく、会社で働く多くの人たちが抱く課題や疑問を提起し、社会問題化しているテーマに目を向けてもらうことにあるようです。
面白いのは、トピックの中に「青野慶久」というタグがあること。同氏は、サイボウズの代表取締役社長ですが、代表者自らが、経営者や研究者などの見識者と対談し、その模様を詳細に伝えています。企業の代表者の人となりや企業理念がおのずと明らかになり、これを見ても、サイボウズへの親しみやすさを醸成し、企業ブランドの向上に繋げるためのメディア戦略に徹していることが見て取れます。
☆「サイボウズ式」

https://cybozushiki.cybozu.co.jp/category/company.html

「ライフネットジャーナル」

ライフネット生命株式会社が運営する、「人生とお金について考えるメディア」です。
保険の基礎知識はもちろん、新型コロナ禍で収入が激減した際の対処方法、小さい子供や女性の身体に関する健康情報など、多岐にわたるトピックを扱っています。
サイトのコンセプトは、「人生・仕事・お金」です。同社の取り扱う商品は生命保険であり、対象者は30代の働き盛りの世代。これから、結婚・出産・持ち家の購入など、人生の節目を迎える人達です。
今は保険のことは考えていないけれど、いずれ保険ニーズが顕在化した時には、同社のことを一番初めに思い出してもらえることを目指した、ブランド力の向上を目的とするコンテンツマーケティング戦略が特徴です。
☆「ライフネットジャーナル」
https://media.lifenet-seimei.co.jp/category/health/

まとめ:コンテンツマーケティングにおける費用対効果を高めるには、戦略策定が必須

微笑みながら両手の人差し指を差しのべる女性


今回は、コンテンツマーケティングという施策において、戦略が持つ意味について考察してみました。
コンテンツマーケティングを実践するには、限られた経営資源を有効に活用し、資金を投下した効果を最大化しなければなりません。そのために、戦略の設定は大きな役割を果たしています。
また顧客との接点を最適化し、組織内でのコンテンツマーケティングの方向性を統一するという効果が期待できるのです。
コンテンツマーケティング戦略の設定方法は、現状の洗い出しとKGI・KPI、ペルソナの設定、カスタマージャーニーの設計、効果測定と改善の実施などが挙げられます。
コンテンツマーケティングも事業活動の一環である以上、投下するリソースを最低限にとどめ、享受する効果を最大化するために、戦略の策定が重要となってくるのです。
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大庭隆之
大学卒業後、新聞社に勤務。企業へのインタビュー記事作成業務を経たのち、広告制作会社に勤務。退社後は、フリーランスのライターとして活動中。得意分野は、ビジネス、マーケティング、各種マーケットリサーチなど。
コンテンツマーケティングを成功に導く3つのステップ