これからより一層事業を大きくしたい人にとって避けて通れないのが、「事業発展のために会社を設立するかどうか」という問題ではないでしょうか。本記事では、現在個人事業主で事業を営んでいる人のために、会社設立の方法や会社設立のメリットデメリットについて解説します。
この記事の目次
本当に会社設立が必要か考えよう!
会社設立の方法を確認する前に、「本当に会社設立する必要があるのか」について考えてみましょう。会社設立を検討するのは、以下のような状況になった場合が多い傾向です。自分の現状が当てはまる場合は、会社設立を検討してみることをおすすめします。
- 事業をさらに発展させたい
- 従業員を雇った、もしくは増えた
- 売上・利益が増えた
- 消費税を支払うことになりそう
では、一つずつ見ていきましょう。
事業をさらに発展させたい
事業を発展させるためには、社会的信用度を高める必要があります。法人化することで、個人事業主のときよりも銀行融資を受けやすくなることが一般的でしょう。また、取引先を広げるために「会社設立をしたい」という考え方もあります。
従業員を雇った、もしくは増えた
従業員が5人未満の個人事業主は、特定業種以外であれば社会保険の加入義務はありません。しかし、会社を設立し法人となれば話は別です。法人の場合は、従業員の人数とは関係なく、社会保険の加入義務があります。
もし、これから従業員を雇ったり増やしたりする場合は、会社を設立して社会保険に加入したほうが人材を集めやすくなるのではないでしょうか。
売上・利益が増えた
個人事業主の支払う所得税の税率と、法人税の税率を見比べてみましょう。
所得税
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万~329万円9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
法人税(資本金1億円以下の普通法人など)2019年4月1日以降
課税される所得金額 | 税率 |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% |
※この税金に法人事業税・法人住民税もプラスされます。
上記の税率表を見るとわかるように、ある程度の所得が出るようになったら会社化したほうが税金の負担を低く抑えられます。売上や利益が増えてきたら会社の設立を検討するといいでしょう。
消費税を支払うことになりそう
法人・個人事業主にかかわらず、前々年度の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、消費税を支払うことが必要です。ちなみに、消費税を支払う義務があるかどうかの判定は、事業者ごとに行われます。ただし、年間1,000万円以上の売上がある個人事業主が年度途中で法人となった場合は、個人事業主と法人の判定は別々にされることが特徴です。
また、法人設立後は、設立1期目2期目の基準期間がないため、会社設立から2年間は消費税の納税義務が原則発生しません。
※ただし、会社設立後半年で売上と給与が1,000万円を超える場合は、第2期目から消費税支払い義務が生じます。
このように、「個人事業主で売上が1,000万円超えそう」という場合は、会社を設立することで消費税支払いを先送りできる可能性があるのです。
会社の種類
会社を設立するときは、どのような会社にするかを選ぶことが必要です。これから会社設立を考える人のために「株式会社」「合同会社」についてご紹介します。
株式会社 | 合同会社 | |
設立に必要な人数 | 1人 | 1人 |
出資者の責任 | 有限 | 有限 |
登録免許税 | 資本金の1,000分の7 ※15万円に満たないときは申請件数1件につき15万円 |
資本金の1,000分の7 ※6万円に満たないときは申請件数1件につき6万円 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
株式会社
株式会社は、株式を発行して他者から資金を集めることができます。そのため、会社の経営者と出資者が違うという場合が多い傾向です。もちろん、経営者自らが出資者となることもできます。幅広く資金調達をしたい場合は、株式会社が向いています。
なお、株式会社における会社の意思決定は、株主総会で行われ、出資額が多いほど議決権の割合が高くなる点が特徴です。
合同会社
合同会社は、経営者と出資者が同じという特徴を持つ会社形態です。2006年の会社法施行でできた新しい組織形態となります。会社の意思決定も株式会社の株主総会にあたるものを開催する必要がありません。
そのため、重要なこともすばやく決定できる点がメリットです。設立のための資金も株式会社に比べるとかかりません。しかし、合同会社には株式の増資ができないという注意点があります。幅広い資金調達をしたい場合には向いていません。
会社設立の具体的な方法(株式会社の場合)
では、株式会社を例に会社設立の方法を見ていきましょう。
1.商号と所在地を決める
「商号」とは、会社の名称のことで、原則自由に決定できます。しかし、実際に商号を決める前には商号調査が必要です。他社と被らない社名、近所に似たようなものがない社名を考えましょう。また、「株式会社○○」「○○株式会社」のように、商号の前後どちらに「株式会社」を付けるのかを決める必要があります。
さらに、商号と同時に所在地も決めなければいけません。会社の本店所在地は、自宅やコワーキングスペース、レンタルオフィスなどから選べます。しかし、借家の自宅を所在地とするときは、賃貸の契約書に「事務所としての利用禁止」が謳われている場合があるため要注意です。
2.事業目的を決め、定款を作る
次に、事業目的を決定します。「どのようなことを行う会社か」を明確にしてください。銀行に融資を依頼する際の審査に関わる可能性もあるため、わかりやすく具体的な事業内容を定めておくことをおすすめします。
事業目的が決まった後は定款の作成です。定款は、会社の設立登記の際に必要になり、以下の項目を必ず記載しないといけません。
- 商号
- 会社の目的
- 本店の所在地
- 資本金
- 発起人の氏名・住所
- 発行可能株式総数
作成した定款は、公証役場で認証を受けることで登記する資格が得られます。
3.会社の印章を作成
会社の印章の作成も必要です。法人実印以外は任意ですが、主に以下の4種類を準備しましょう。
- 代表者印(法人実印)
- 銀行印
- 社印(角印)
- ゴム印
4.資本金を払い込む(出資)
定款の認証が済んだら、会社設立の発起人の口座へ資本金を振り込みます。ただし、例えば資本金が100万円の場合、はじめから口座に100万円あるからといってそれをそのまま資本金にできるわけではありません。この場合は、いったん口座から出金し、再度入金する作業が必要となります。
5.登記の申請
会社を設立した旨を法務局で登記申請します。登記申請時に必要な書類は、主に以下のようなものです。
- 設立登記申請書
- 定款(謄本)
- 登録免許税納付用台紙
- 発起人議事録
- 出資金の払込証明書など
登記申請手続きは、代表取締役となる人が行うのが原則ですが、司法書士などに委任して代理申請することも可能です。ただし、その際は司法書士などに支払う費用が別途かかります。
会社設立のメリットとは?
会社設立の方法を知ったところで、そのメリットについても確認しておきましょう。
取引先から信用される
事業を大きくしたい場合は、新規取引先を増やすことを検討するのではないでしょうか。一般的に、個人事業主よりも、法人のほうが取引先からの信用も得やすくなります。特に、法人相手に事業を展開したい場合は、こちらも法人のほうが信用されるでしょう。
融資が受けやすくなる
融資についても、法人のほうが融資を受けやすくなります。なぜなら、法人は個人事業主と比べて財務の管理をしっかりと行うことが必要だからです。金融機関側が審査する際、法人であれば「どのような事業を行っているのか」「財務状況がどうなっているのか」が分かりやすいため、融資可否の判断が付けやすくなります。
経費計上しやすい
個人事業主は、家計に使うお金と事業に使うお金の線引きがあいまいになりがちです。しかし、法人の場合は、会社のお金はすべて事業のためのお金とみなされるため、個人事業主に比べて経費として認められる範囲も広くなります。
例えば、事務所に関する費用や、自動車に関する費用なども経費にすることが可能です。
会社設立のデメリットとは?
会社設立は、メリットだけではありません。デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。あわせて確認しておきましょう。
社会保険の加入義務
法人になると、従業員の人数にかかわらず健康保険や厚生年金への加入義務が生じます。従業員分の社会保険料の半分は法人が支払わないといけません。そのため、人員が増えるとそれだけ会社の負担が増えることになります。
ただし、国民健康保険や国民年金よりも保障は厚くなるため、人材を集めやすくなるという点からは社会保険への加入がデメリットばかりとは言えません。
赤字でも税金を支払わないといけない
個人事業主の場合、赤字であれば所得税などの支払いはありません。しかし、法人の場合は、赤字であっても法人住民税などの税金がかかります。そのため、どんなに赤字であっても税金を支払う程度の余裕は持っておくことが必要です。
会計手続きが多い
法人は、個人事業主と比べると会計に関する手続きが多い点もデメリットです。税金の申告は、個人事業主よりも手続きが煩雑となります。税理士などの専門家に依頼することもできますが、その際は別途費用が必要です。
「手間がかかっても節約のために自分で会計手続きをするか」「会計に関する手間を省くために費用がかかっても専門家に依頼するか」については、しっかりと考えておきましょう。
メリットが多い会社設立!ただし費用や手間のことも考えておこう!
会社を設立すると「信用度が高まり、取引先拡大や融資の際に有利になる」などのメリットがあります。これから事業を拡大したい場合は、個人事業主のままでいるよりもメリットが多いといえるでしょう。
しかし、会社を設立する際には登録免許税の支払いなど、個人事業主のときにはかからなかった費用が生じます。社会保険関連費用も同様です。そのため、会計に関する手間についても考慮しておかないといけません。
会社を設立したい場合は、「自分にはメリットのほうが多いのか」「手間や費用がかかりデメリットが多くなってしまうのか」についてもよく考えてみましょう。
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文・田尻宏子 複数の金融機関での勤務経験や証券外務員第一種、ファイナンシャル・プランニング技能士2級の資格を活かし、金融関連専門のライターとして活動中。生損保・不動産・ローンの情報を中心に「誰でも分かりやすい記事をお届けする」をモットーに執筆。
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