どのように設定する?中小企業の社長の年収

「会社を立ち上げたばかり」「これから立ち上げたい」といった方が決めないといけないのが、社長の年収です。しかし、どのようにして社長の年収を設定すればいいのでしょうか。今回は、中小企業社長の年収の実態、およびその決め方について解説していきます。

中小企業の社長の年収はどのくらい?

まず、参考までに中小企業とは何か?について確認しておきます。中小企業基本法によると、中小企業の定義は以下の通りです。

業種中小企業基本法の定義
製造業その他資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社、または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人
卸売業資本金の額または出資の総額が1億円以下の会社、または常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人
小売業資本金の額または出資の総額が5,000万円以下の会社または 常時使用する従業員の数が50人以下の会社および個人
サービス業資本金の額または出資の総額が5,000万円以下の会社または 常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人
出典:中小企業庁

業種によって、「どの規模が中小企業とされるか」は大きく異なります。一方、税務上では「資本金の額が1億円以下」もしくは資本等を有しない法人を「中小法人」としています。国税庁の「民間給与実態調査」(令和元年分調査)を見てみると、資本金別役員平均給与は、次の通りです。

資本金平均給与
2,000万円未満約582万円
2,000万円以上5,000万円未満約832万円
5,000万円以上1億円未満約1,086万円

資本金額が上がるにつれて、役員給与も上がっています。この調査結果は、役員全体の平均のため、社長の年収となると、多少違いが出てくるかもしれません。しかし、ある程度は参考になるのではないでしょうか。

社長の給与はどこから出す?

社長の給与をどこから出すかを考える前に、「役員報酬」とは何かを知っておきましょう。役員報酬とは、役員に支払われる給与のことです。次の役職者に支払われます。

役職役割
取締役・株式会社には必ず置くことが義務づけられている
・取締役会の構成メンバーから代表取締役を選出
執行役・取締役会で決めた業務を実行
会計参与・取締役と会社の計算書を作成
・税理士、公認会計士、税理士法人、監査法人に限定される
監査役・取締役の職務、会計等を監査する

給与といえば、勤務先から従業員へ支払うものもありますが、役員報酬と従業員給与には大きな違いがあります。

従業員給与基本的に全額損金に算入できる
役員報酬(役員への給与)損金に算入できるのは以下の通り。  
・定期同額給与:毎月同じ金額支払われる
・事前確定届出給与:「賞与」に当たるもの
・業績連動給与:会社の利益に連動して金額が決まる。ただし非上場会社が支給するのは難しい

社長や役員に支払われるお金をすべて損金に算入できると、それだけ課税対象金額が減ってしまいます。利益が出る年度に役員報酬を増やし、税金の支払いを逃れる会社が出ないとも限りません。そのため、役員報酬の全額損金算入が禁止されているのです。

社長の給与をどこから出すかですが、従業員同様、会社のお金から出すことになります。そのため、給与が高すぎると会社の経営を圧迫することにもなりかねません。そこで、役員報酬の決め方について詳しく解説していきます。

役員報酬とは

株式会社の場合、社長の給与を含めた役員報酬は、毎期株主総会で決定しないといけません。株主総会で役員報酬の総額を決定した後、取締役会で毎月支払う額などの具体的な金額を決めます。その際は、原則として毎月一定額を支払うようにしないといけません。また、「賞与」を支払う場合は事前に税務署への届け出が必要です。

ここで、役員報酬の種類についてご紹介しておきます。

役員報酬の種類

役員報酬の種類は、以下の3つです。

定期同額給与

毎月、同じ額を計上します。年度内は、売上の増減によって変えることはできません。損金として処理することが可能です。

事前確定届出給与

「この日に○○万円支払う」ということを決めて税務署に届け出することが必要です。届け出通りに支払いされていることが確認できれば、損金として処理することができます。

業績連動給与

「会社に利益が出た場合、そこから〇割支払う」など、事前に支払条件、指標を決めて有価証券報告書に記載。この条件、指標に基づき支払われた場合に損金として処理することができます。ただし、有価証券報告書提出義務があるのは、上場会社などやある程度の規模の会社のみとなるため、未上場の中小企業は損金として認められる可能性は低いでしょう。

役員報酬は何を元に決めるか?

社長の給与を含む役員報酬は以下の4つを元に決めることが多い傾向です。

・職務内容

・会社の業績

・従業員の給与

・同業者、同じ規模の会社の役員報酬を参考に

ただ、会社を設立した当初は、どのくらいに設定したらいいのかが分からない方も多いかもしれません。また、未上場企業の役員報酬は公表されていないため、参考にできる同規模の同業他社の資料が見つからないケースもあります。全く売上の予測が立たない場合は、生活費としてかかりそうな金額を報酬として設定することがおすすめです。

ただし、ご紹介した通り、役員報酬は年度の途中で変えることはできません。もし自身の判断で増額してしまった場合、その分は損金として扱われないため、金額は慎重に決めましょう。2期目以降の役員報酬は、売上に合わせて決めることができます。また、社会保険の支払額から役員報酬を決める会社もあるようです。

例えば、協会けんぽ(東京都・令和3年度分)の場合、報酬月額51万5,000~54万5,000円の方の健康保険料は5万2,152円(全額、介護保険第2号被保険者に該当しない場合)となっています。同じ保険料であれば、上限の54万5,000円に設定したほうが、役員報酬が多くなるでしょう。

社長の年収と会社の利益について

社長の年収を決める際は、会社の利益との兼ね合いも考えないといけません。役員報酬は、損金処理ができるため、法人税などの節税も可能ですが、報酬額を増やすと受け取った人の所得税は上がってしまいます。できれば、報酬額を決める前に以下の2つのうちからどちらを優先するかを決めるようにしましょう。

  • 法人税節税を重視し、社長の所得税節税は考慮しない
  • 社長の所得税節税を重視し、法人税節税は考慮しない

以前に比べ、法人税率が下がってきているため、個人の所得税との差異がそれほどなくなってきています。会社を長く続けるためにも、「役員報酬を抑えて、会社にお金を残す」という選択肢があることも覚えておきましょう。

いろいろな視点で見ながら社長の年収を決めよう!

上場企業やある程度規模の大きい企業と異なり、中小企業には有価証券報告書の提出がありません。とはいえ、役員報酬の金額は年度を通じて変えることは不可です。もし、変えてしまった場合、本来できるはずの損金処理ができない部分が生じてきます。また、会社設立当初は年収をどのくらいに設定するか迷うかもしれません。

その際は、毎月の生活費を参考に検討してみましょう。2年目以降は、売上に応じて増減してみてはいかがでしょうか。なお、2年目以降の報酬を決める際は、「損金を多くするために役員報酬を上げる」「会社に残すお金を増やすために役員報酬を低く抑える」といったことも検討しないといけません。法人税と個人の所得税率の差は以前ほどありません。どちらがいいのかもよく考えてみましょう。

文・田尻宏子 複数の金融機関での勤務経験や証券外務員第一種、ファイナンシャル・プランニング技能士2級の資格を活かし、金融関連専門のライターとして活動中。生損保・不動産・ローンの情報を中心に「誰でも分かりやすい記事をお届けする」をモットーに執筆。

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