中小企業の経営者として理解しておきたい実態バランスシート

新型コロナウイルスの影響が1年以上も続き、企業業績に悩む経営者が多いのではないでしょうか。過去にも、不動産バブル・ITバブルや、リーマンショック、震災など、約10年に一度、突発的なアクシデントがありました。
「現金がなくても、経営が順調なら大丈夫では?」と社長に聞かれることがあります。しかし、突発的なアクシデントに備えて、企業としては危機的な状況を回避する対策が必要です。今回は、中小企業の経営者にとって自社の経営実態を把握する際に役立つ、実態バランスシートについて解説します。

バランスシート(貸借対照表)とは?

貸借対照表とは、決算期などある一定時点における企業の財務状態を示すものです。一般的には、バランスシート(B/S)とも呼ばれており、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つで構成されています。右側(貸方)の「負債の部」と「純資産の部」が資金調達、左側(借方)の「資産の部」が調達した資産の運用状況を表しているのが特徴です。

バランスシート(貸借対照表)の見方

バランスシートでは、「資産の部」の合計と「負債の部」と「純資産の部」の合計が一致し、借方と貸方の合計金額が同じになります。これが、バランスシートと呼ばれる理由です。また、返済しなければならない「負債の部」に対して、自分の資産といえるのが「純資産の部」となります。
 

 

資産の部

企業が保有する財産(資産)を表し、1年以内に現金化できる現金や預金、売掛金、商品などが「流動資産」、1年以上の長期にわたり会社が保有する土地や建物、機械、有価証券などを「固定資産」と呼びます。

負債の部

金融機関などからの融資や物を仕入れた代金のような買掛金、未払金などを記載します。1年以内に支払う「流動負債」と、1年以上の長期にわたって返済する「固定負債」に分けられるのが一般的です。

純資産の部

株主から集めた資本金や、内部留保(利益剰余金など)が含まれます。純資産は、返済不要の資産(自分の資産)のため、総資本のうち純資産が多い(自己資本比率が高い)ほど自社体力があるとみなされます。
「自己資本比率」とは、負債と純資産の合計額(総資本)に占める純資産の割合のこと。会社の安全性や、自社体力を評価する重要な指標です。「純資産」が多いほど返済が必要のない資金が多いことになり、安定した会社とみなされます。

銀行などが重要視する実態バランスシートとは?

ここで問題になるのは、「決算書の数字がそのまま信用されるわけではない」ということです。金融機関などでは、それぞれに独自の審査基準を設けて企業の業績を判断しています。実態バランスシートから企業が現在どのようになっているのかを把握して、融資の審査をするケースが多いことは知っておきましょう。

実態バランスシートへの修正方法

貸借対照表の勘定科目には、売掛金や棚卸資産に含まれる代金が回収できない資産や現金化できない資産が含まれることが少なくありません。例えば、所有している不動産やゴルフ会員権などの時価が、決算書に記載されている簿価よりも低いと含み損があることになります。
経営者としては、以下のようにバランスシートを修正して、自社の実態バランスシートを把握しておくことが重要です。

  1. 回収不能の資産は、回収可能額に修正
  2. 時価と異なる金額の資産は、時価評価額に修正
  3. 実態と乖離している資産は、実態の金額に修正

※代表者から会社への借入金を負債とはせずに、自己資本に振り替えて修正することもあります。修正項目は、勘定科目の多岐にわたり、銀行によって判断基準は異なる傾向です。
簡単な例から実態バランスシートを作成する際の手順を見てみましょう。具体的には「回収不能の資産」を「回収可能額」、「時価と異なる金額の資産」を「時価評価額」に修正して、その対応する金額を「純資産の部」から控除します。
例えば、売掛金の中に回収不能の債権が100万円、所有不動産に含み損が100万円あった場合、流動資産と固定資産の金額からそれぞれに100万円控除します。それに対応する金額の合計200万円を自己資本から控除して、バランスシートを修正すれば完了です。

「純資産の部」がマイナスになることを債務超過と呼び、一般的には倒産リスクが高いと判断されます。バランスシートを修正し、「純資産の部」がマイナスとなるようであれば、早急に対応策を考えなければなりません。

実態バランスシートを作成し、早めの対策を!

金融機関は、企業の財務状況だけではなく、企業の技術力や販売力、成長性、代表者等の収入状況や資産内容などさまざまなことを考慮し、経営実態を踏まえて審査しています。自社の問題点を明確に回答できることは、銀行と付き合ううえでも大切です。
実態バランスシートを作成し、自社の経営実態の把握に努めることで、問題点を明確にすることができるでしょう。コロナ禍のような時代は、特に予期せぬ事態に備えた対策が必要になります。困難を乗り切るためにも、日ごろから自社の問題点を把握し、早めの対策を講じるようにしましょう。
 
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文・加治直樹(1級FP技能士、社会保険労務士)
銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。

 
 

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