非対面営業の具体的な実施方法について/営業の生産性を向上させるには?

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営業先へ足繁く通い、熱弁をふるって自社製品・サービスを売り込む、という訪問型の営業マンのイメージは、ステレオタイプではありますが、まだ残っています。
しかしこの1年で、新型コロナウィルスの蔓延により、状況は一変しました。
2020年4月はじめに、最初の「緊急事態宣言」が出されると、政府は企業に在宅勤務を強く推進して出社人数を抑制し、人の移動による感染の防止を図りました。
あれから1年が経ちましたが、新型コロナの終息は見通せず、ビジネスシーンにおいても、新たな仕事の形態を模索する動きが広がっています。
これまでも、「非対面営業」という考え方は、ある程度認知はされていましたが、どちらかというと、訪問型営業の補足的な活動と捉えられていました。しかし昨今では、直接、相手と接触することなく、商談・クロージング、成約までをこなす非対面での営業は、にわかに注目を集めています。
そこで今回は、訪問営業が直面する課題と、それを解決する手段としての「非対面営業」について解説します。

この記事の目次

限定的となる対面営業の効果と課題

限定的となる対面営業の効果と課題
「営業」=「訪問しての対面営業」という考え方は、依然として健在です。
とにかく顧客の元へ訪れて、担当者と信頼関係を築き、徐々に自社製品・サービスの説明を行い、購買行動へと導くというのが、営業活動のセオリーでした。この営業プロセスについては、全面否定する方はいないでしょうが、昨今ではその効果について、限定的とみる向きも増えています。

「ザイアンスの法則」から見る訪問営業の効果

「顧客の目を見て、熱意を込め、自社商品・サービスのメリットについて説明する」
という商談スタイルは、これまでは営業の基本中の基本とされてきました。相手が血の通わないロボットでもない限り、常に顧客のメリットを意識した「お客様のために」という誠実さは、営業マンの体温を通して伝わるはず、という根性論は今でも根強いものがあります。
また、新規顧客を開拓する場合、「まずは相手先へ訪問して、顔を覚えてもらう」ことが、商談・成約への第一歩と言われています。
人間という生き物は、面識のない相手に対しては警戒心を抱くものです。優秀な営業マンは、初対面の見込み顧客を相手にする際、初めの何回かは自身が扱っている商材の話はせず、世間話に終始するそうです。何度か通ううちに、相手側の警戒心が解けた頃合いを見計らって、商談を切り出すのです。
この手法には、科学的な根拠があります。
アメリカの心理学者、ロバート・ザイアンスは1968年に、「単純接触効果」という理論を発表しました。それによると、人間は全く面識のない人や事象については、警戒心を抱きますが、接触する回数が増えるごとに警戒心は薄れ、好意を感じるようになるというものです。
ザイアンスは学生を被験者として、接触回数と好感度との関係について実証実験を行いました。その結果、人は対象と繰り返し接触することにより、対象の特徴とは無関係に、好感度に変化が生じる、という事実が立証されました。
この理論は、マーケティング分野においては広く知られており、研究者の名前を冠して、「ザイアンスの法則」※1とも呼ばれています。
この法則の中で興味深いのは、「対象の特徴とは無関係に」という点です。重要視しているのは、単に接触回数なのです。つまり、初回は営業マンや商材について、何の興味も示さない買い手側も、接触する回数を増やすことにより、営業マンに好感を抱き、営業トークにも耳を傾けるようになることを意味しています。
「とにかく、顧客先を回れ」と檄を飛ばす上司の言い分も、あながちマンパワーを振り回しただけのものではなく、科学的に裏付けられたものであることが分かります。
対面営業による効果は、誰もが認識するところです。
ただ、従来のような体力と根性に裏付けされた営業手法は、これからは通用しない時代が近づいています。
その理由について、以下でご説明しましょう。
※1 「ザイアンスの法則」

減少する労働人口と生産性向上という課題

企業が成長し、存続していくためには、売上を上げ続けることが至上命題となっています。営業活動は、経営において重要な部分を占めています。営業部門の使命は、新規顧客の開拓に始まり、既存顧客の維持と深堀り、さらには購入後のアフターフォローなど、多岐に渡ります。営業部門の構成員である各営業マンは、見込み顧客の獲得とアポ取り、訪問による商談と成約、製品・サービス購入後のフォローとリピーターの育成など、業務を山ほど抱えています。「営業は体力勝負」と言われるように、営業1人にかかる負担は相当なものです。
ここで、ビジネスシーンを取り巻く社会の変化に、目を向けておく必要があります。
平成30年9月、経済産業省が作成した「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題」※2という資料によると、少子高齢化現象について深刻な数字が報告されています。それによると、1973年の第二次ベビーブームを境に、出生率は減少傾向にあり、2016年には初めて100万人を割り込みました。このまま減り続けると、2050年の出生率は約65万人まで落ち込むとの予測が出ています。一方、100歳以上の高齢者数は右肩上がりに推移しており、このままいくと2050年には約50万人を超えるとの見通しです。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した、「日本の将来人口推計(平成29年推計)」※3を見ると、日本における15歳から64歳までの生産年齢人口は、戦後から増加を続け、1995年の国勢調査では8,726万人とピークを迎えました。しかしそれ以降は減少局面に入り、2015年には7,728万人にまで落ち込んでいます。さらに将来の生産年齢人口は、2029年には7,000万人、2040年には6,000万人、2,056年には5,000万人を割り込むとの予測が出ています。
このような社会背景において、労働者の総数が減少傾向を辿る現在、企業では優秀な営業を確保することが困難な状況を迎えつつあります。営業活動においても、営業マン1人1人の生産性をいかに向上させるかは、経営上の課題となっています。そのために、各営業マンにかかる負担を軽減し、効率よく業務を遂行する手法として注目を集めているのが、「非対面営業」なのです。
※2「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題」
※3「日本の将来人口推計(平成29年推計)」

新型コロナウィルス禍で注目される「非対面営業」

新型コロナウィルス禍で注目される「非対面営業」
これまで営業と言えば、顧客と顔を突き合わせ、商談することと同義でした。
顧客側も、「来ない人はいない人」と揶揄するように、まずは営業マンに自社へ足を運ばせることを求めていました。その頻度に応じて、営業の熱意を見きわめていたものです。
しかし、新型コロナ禍の影響により、ビジネスシーンにおいても、買い手側に意識の変化が見られました。
マーケティングや営業向けに、総合ソフトを提供しているHubSpot Japan 株式会社は2019年12月と2021年2月に、「日本の営業に関する意識・実態調査」※4の結果を公表しました。
2019年10月の調査時点では、買い手の経営者や役員あるいは購買担当者にアンケートしたところ、全体の70.6%が「営業担当者に訪問を希望する」と回答しています。理由を尋ねると、35.2%が「顔を見ずの商談には誠意を感じない」と答え、30.1%が「営業担当者の顔を見ると安心感がある」との調査結果を得ました。
その後、新型コロナウィルスの感染拡大を経て、2020年12月の調査では、買い手に「訪問営業と非対面営業のどちらが好ましいか」と尋ねたところ、「訪問営業」と回答した人は35.0%だったのに対し、「非対面営業」と答えた人が全体の38.5%となり上回ったことが分かりました。これは、2019年10月に実施されたアンケートでは、それぞれ53.7%、21.0%という数字であったため、新型コロナ禍を経験したこの1年で、買い手側の意識が大きく変化したことが鮮明になりました。
※4「日本の営業に関する意識・実態調査」
2019年12月公表分
2021年2月公表分

「非対面営業」の具体的な実施方法

「非対面営業」の具体的な実施方法
非対面営業は、訪問営業とは違い、相手と直接対面せずに商談を進める営業手法です。方法としては2通りあり、1つがオンラインによるもの、もう1つがオフラインによるものが考えられます。

オンラインによる非対面営業

主な営業プロセスは、以下の通りです。
・リードの獲得とリスト作成。
・アポイントの獲得。
・先方との商談と、クロージング。
・成約とアフターフォロー。
営業の流れは、訪問営業と変わりませんが、商談からクロージング、成約、受注後の顧客フォローまでをオンラインで行うのが特徴です。「オンライン営業」、または「リモート営業」とも呼ばれています。
商談からクロージングまでは、オンライン商談ツールやWEB会議システムを活用し、顧客との非対面によるコミュニケーションを密に図ります。商談の際には、パソコン画面上で資料を共有し、プレゼンには動画を利用するなどの工夫も必要です。また、メールよりも手軽に先方とやり取りできる点では、「Slack」や「Chatwork」などのチャットツールを使えば、クロージングまでの顧客へのきめ細かい対応ができるのです。
そして晴れて成約ともなれば、電子契約サービスを使用して、オンラインで契約を締結させることが可能になります。政府のDX(デジタルトランスフォーメーション)政策の一環として、脱ハンコの意向と相まって、このような流れは今後加速していくことでしょう。

オフラインでの非対面営業

次にオフラインによる非対面営業ですが、これは端的に言うと「営業レター」です。「なんだ、手紙か」なんて思わないでください。
先に触れた「ザイアンスの法則」を思い出してください。繰り返し接触することにより、相手に与える好感度は増す、という研究結果ですが、これは実際に対面でなくても、同じ効果が得られます。
「それなら、わざわざ手紙を書くなんてアナログなことしなくても、メールでいいんじゃないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。確かにメールであれば、1枚1枚手紙を手書きする手間もコストも省けますし、一瞬にして何百何千のリードに一斉送信することもできます。ただ、ちょっと視点を変えてみてください。あなたが情報を受け取る側だとしたらどうでしょう。1日に受信するビジネスメールは、何通ありますか。多い人なら、何十通は当たり前という日もあるのではないでしょうか。その1通1通をいちいち開封して、内容を確認されている方は少ないのではないですか。
メールは簡単に送信できる反面、受信する側にとっても、中身を見ずに放置したり削除しても、あまり罪悪感を抱くことはないようです。
それに比べると、リアルな手触りのある手紙は、受け取った方も「何だろう?」と関心を示す確率は高いのです。最初はハガキに、自己紹介や挨拶文を書く程度で構いません。その際に気をつけたいことは、必ず顔写真を載せ、自身の人柄が伝わる一文を添えることです。こうすることで、手紙を受け取った人は、送り主がどのような人物か、イメージすることができます。一旦、相手の警戒心が解ければ、しめたものです。後は、先方が興味を持ちそうな「お役立ち情報」を、小分けにしてシリーズ化し、定期的に送るようにしてください。回を重ねて手紙を送付することにより、接触頻度は増し、顧客に好印象を与えることとなり、ひいては信頼関係を築くことにも繋がるのです。

まとめ:非対面営業を効率よく活用して、営業の生産性を向上させる

非対面営業を効率よく活用して、営業の生産性を向上させる
今回は、「非対面営業」について解説しました。
対面営業が直面する課題を明らかにすることで、非対面営業の可能性について述べ、併せて具体的な手法についてご紹介しました。
「ザイアンスの法則」が裏付けるように、対面での営業は相手と接触を重ねるに従って好印象を与え、商談に結び付ける効果があります。しかし、超少子高齢化と労働力不足を背景に、ビジネスを取り巻く社会状況は大きく変化し、営業1人にかかる負担をいかに抑え、生産性を向上させるかが喫緊の課題となっています。そこで課題解決の1つとして、注目を集めているのが非対面営業という手法です。これまで、対面で行ってきた営業プロセスを、手紙やメール、チャットツールやWEB会議システムを利用して効率よく行い、時間・コストを削減しながら最大の効果を上げることができます。
営業活動は、リードの獲得に始まり、見込み顧客の育成、商談・クロージング、成約までと多岐に渡ります。これまで対面で行ってきた相手との接触も、非対面に置き換えることにより、効率的にコミュニケーションを図り、生産性を向上させましょう。
各営業の生産性を上げる手段として、外部のプロの手を借りるという選択肢もあります。
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