企業のマーケティング活動において、コンテンツマーケティングは日々、その存在感を高めています。
ただこの施策は、実施するのにある程度の期間を要し、折角、資金や人的リソースを投入しても、効果を実感しにくいという側面があるのも事実です。
そのために、施策を途中で打ち切るという、残念な結果に終わってしまう企業の例も多く見られます。
そこで数値化した、客観的な効果想定が求められるのですが、KPIは重要な役割を果たしています。
今回は、コンテンツマーケティングにおけるKPIについて、詳しく解説しましょう。
この記事の目次
事業活動において重要となるKPI
事業が人的リソースと資金を投入し、利益を追求する活動である以上、一定の期間に、想定した成果を上げる必要があります。
例えば、「年間売上1億円」という目標を掲げたとして、現在の売り上げ状況がどのようであるか、正確に把握していないとしたら、いつ目標達成できるのか、見当がつきません。
「いつまでに、何をするか」を明確にすること、これがKPIの発想です。
KPIとは?
KPIとは、経営用語の一つで、「Key Performance Indicator」の頭文字を取ったもので、「重要業績評価指数」という意味になります。
KPIは、事業活動における目標を達成する上で、そのプロセスのどの位置にいるのか、可視化するための定量的な指標なのです。
この「事業活動における目標」は、経営用語では「Key Goal Indicator」と称され、これも頭文字を取ってKGIと呼ばれています。日本語では、「重要目標達成指標」という意味になります。「いつまでに、何を、どの程度達成するか」を、具体的な数値を用いて指標化したものがKGIです。
上記の例で言えば、「1年という事業年度内に、売上を1億円上げること」となるでしょう。
KGIとの関係性
KPIとKGIとは、密接な関係にあります。
KGIは、事業活動においての最終目標であり、ビジネスにおけるゴールと言えるでしょう。具体的には、「年間売上3億円達成」や、「自社ブランドの認知度を前年比30%アップさせる」などです。
KGIは、事業活動の最終到達点であり、地図を広げて目的地を定めることにほかなりません。ビジネス上のゴールにたどり着くために、現在位置はどこか、出発してからどの程度進んでいるか、などの判断をすることが必要になります。その判断の助けとなるのがKPIであり、施策の効果が出ているのか、計測するための中間指標なのです。
コンテンツマーケティングにおけるKPIとは?
そもそも経営上の概念であり、営業や人事評価などで、効果測定の一環として活用されてきたKGIとKPIですが、コンテンツマーケティングという施策においても、重要な役割を果たしています。
コンテンツマーケティングという施策について
まずは、コンテンツマーケティングの本質について、もう一度見ておきましょう。
コンテンツマーケティングの先進国であるアメリカで、同概念の普及に尽力してきたジョー・ピューリッジ氏は、以下のように定義付けています。
「コンテンツマーケティングとは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています。」
コンテンツマーケティングは、マーケティング手法の一つであり、マーケティングとは、「企業が顧客と良好な関係を築き、顧客が自社の製品やサービスを購入し続ける仕組み」作りということになります。
自社の製品やサービスを一方的に売り込むのではなく、見込み客や顧客が関心を持ちそうなコンテンツを常に提供し、自社に興味を持ってもらうことが最初の一手です。そこから徐々に製品・サービスに目を向けてもらい、購買行動を取ってもらうことが、最終的な目標なのです。
なぜKPIが重要なのか?
マーケティングにおいては、企業がターゲットとする消費者は、購買プロセス
のどの位置にいるかで幾つかに分類されます。
「AIDMA理論」はご存知でしょうか。
1920年代、アメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏が提唱した理論です。「Attention=注意」、「Interest=興味」、「Desire=欲求」、「Memory=記憶」、「Action=行動」の頭文字を取ったものです。
消費者は最初に、その企業や取り扱う製品・サービスの存在を知り(Attention)、
興味を抱き(Interest)、手に入れたいと思うようになり(Desire)、記憶にとどめ(Memory)、最終的に購買行動に至る(Action)という一連の購買決定プロセスを辿ります。このうち、Attentionの段階にいる消費者を「潜在顧客」、Interest、Desireの段階にいる消費者を「見込み顧客」、その後、「Memory」を経て、「Action」つまり、購買行動を起こす消費者を「顧客」というように分類することができます。
コンテンツマーケティングは、コンテンツを作成して配信すれば完了という、単純な手法ではありません。それぞれのフェーズにある消費者に向けて配信されたコンテンツが、目的を達成するためにどれだけ貢献したか、定期的に測定することが何より大切です。そのためには、指標となるKPIを定める必要があります。このKPIは、サイトのユーザー数、PV数、問い合わせの数、SNSでのシェア数など、様々です。貢献度に気を配りつつ、PDCAを回しながら、コンテンツを最適なものへと修正していくことが重要なのです。
コンテンツマーケティングの達成目標によりKPIは異なる
コンテンツマーケティングにより、何を達成したいのか。その最終目標がKGIであり、そこへ至るまでの中間指標がKPIです。目的地が変更されれば、ルートやアクセス手段は変わります。コンテンツマーケティングの目的は、大きく2つに分けることができます。1つは「新規顧客の獲得」、もう1つが「既存顧客の育成」であり、それに伴いKPIも異なります。
KGIが「新規顧客の獲得」の場合
いくら良質なコンテンツを配信しても、閲覧してもらえなければ意味がありません。自社サイトのコンテンツがどの程度、ユーザーの目に触れているかを把握しておく必要があります。それには、以下のKPIの設定が考えられます。
PV=Page View (ページビュー)
PVは、そのサイトがユーザーにどれだけ認知されているかを測る、最も一般的な指標です。ブラウザ上にWEBページが表示されれば、「1PV」とカウントされます。例えば、5人のユーザーがサイトのトップページを訪問すれば、その時点でPV数は5カウントとなります。さらに2人がページAを、1人がページBを、もう2人がページCを閲覧すれば、PV数は合計で10PVということになります。
セッション数
セッションとは、特定期間内にWEBサイト上で発生した、ユーザーによる操作のことを指します。1回のセッションには、複数のページ閲覧、イベント、「Face book」の”いいね”などのソーシャルインタラクティブ、eコマースにおける注文回数などが網羅されています。ユーザーは、1人で複数のセッションを行うことが可能です。複数のセッションは1日で起こることもあれば、数日、あるいは数か月置いた後に再度開始されることもあります。セッションには有効期限があり、1回のセッションが終了した時点で、次のセッションが新しくカウントされます。セッションは、以下のいずれかで終了とみなされます。
a.何の操作も行われず、30分が経過した場合。
b.午前0時を過ぎてから、再度の操作があった場合。
c.ユーザーが、あるキャンペーンを経由してサイトに訪問し、離脱後に別のキャンペーンを介してサイトに再訪した場合。
UU数(ユニークユーザー)
ユニークユーザーとは、一定の期間内にサイトを訪れたユーザーの人数を表します。決められた期間内(集計期間内)であれば、同一ユーザーがサイトを何回訪問しても、「1UU」としてカウントされます。つまり、自社サイトに関心を持っているユーザーが何人いるか、推し測る指標になります。
問い合わせ件数
オーガニック検索から自然流入してくるユーザーは、サイトにとって大事な訪問者には違いありません。ただ、コンテンツに興味を示さなければ、すぐにサイトからは離脱してしまうでしょう。しかし、ユーザーの方から問い合わせなど、何らかのアクションを起こしてくれば、「潜在顧客」、あるいはその先の「見込み顧客=リード」の可能性があります。収集した個人情報をもとに、インサイドセールスの手法でリードナーチャリングに繋げることもできるでしょう。
KGIが「既存顧客の育成」の場合
先に触れた定義では、「価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することで、~中略~自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すこと」がコンテンツマーケティングの目的としています。見込み顧客にとって有益なコンテンツを継続して提供することにより、成約にまで導くことが可能になります。さらには、自社への顧客ロイヤリティを向上させ、常に自社製品・サービスを選んでくれる「優良顧客」へと昇華させることもできるでしょう。そして、そのような優良顧客は、自社や取り扱う商品について、SNSなどを介してシェアしてくれるありがたい存在にまでなり得るのです。この一連の流れを「既存顧客の育成」と呼び、これを実現するために、以下のKPIが考えられます。
リテンション率
リテンションとは、英語で「維持」または「保有」を意味し、そこから派生して、マーケティング用語でリテンション率とは、「既存顧客維持率」を指します。リテンション率は、自社サービスが既存顧客にどの程度定着しているか、数値で表した指標です。従ってリテンション率を維持し、向上できれば、顧客満足度も高く、良好な関係を築いていると言えるのです。
リテンション率は、以下のように計算できます。
リテンション率=(集計期間終了時の顧客数-集計期間中に獲得した顧客数)÷集計期間開始時の顧客数×100
1つ例を挙げましょう。
集計を開始した時点で、顧客は50人いたとします。集計が終了した段階で、顧客は10人増えましたが、集計期間中に5人が解約しました。このケースでは、
(55-10)÷50×100=90となり、リテンション率は90%ということになります。
エンゲージメント率
Engagement=エンゲージメントとは、直訳すると「契約」、「約束」といった意味になります。マーケティングの分野では、「関与、つながり、愛着」などを表す用語であり、そこから派生して、顧客との関係性を強化し、売上の向上に結び付けることを、顧客エンゲージメントと呼んでいます。そして、その企業に対する顧客の愛着度を、数値で客観的に表した指標を「エンゲージメント率」と称しています。
エンゲージメント率の測定方法として、2通りの方法が考えられます。
1つは、Webによるアンケートです。
これは、「Net Promoter Score=ネットプロモータースコア」というもので、頭文字を取って「NPS」と呼ばれています。算出方法としては、「この製品・サービスを、あなたの知人にどの程度薦めたいですか」という問いかけに対して、0から10の段階で回答を求めます。次に回答結果から、顧客を3つのカテゴリーに分類します。
0~6:批判者
7~8:中立者
9~10:推奨者
「推奨者の割合」-「批判者の割合」=NPS(%)
NPSが高いほど、その企業の商品・サービスに対する顧客ロイヤリティが向上していることを表しています。
もう1つは、SNSによる測定方法です。
FacebookやTwitterなど、SNSのユーザーが爆発的に増加するにつれ、一般消費者の企業に対する動向も見て取ることが可能になりました。企業が自社のアカウントを通して投稿した内容に対し、ユーザーがどのようなアクションを起こしたかを算出することにより、エンゲージメント率を測定することができます。ここでは、FacebookとTwitterにおける、エンゲージメント率の確認方法を見ておきます。
【Facebook】
Facebookにおけるエンゲージメント率は、エンゲージメント数を投稿がリーチした人の数で割った数値です。
Facebookでのエンゲージメントは、ユーザーが、「いいね」、「シェア」、「コメント」、「クリック」のいずれかのアクションを取った時にカウントされます。
これらのアクションが多ければ多いほど、エンゲージメント率は高いことを示しています。
管理画面の、「投稿のエンゲージメント」をクリックすると、投稿ごとにリーチ数、アクション内容、エンゲージメントなどを確認することが可能です。
【Twitter】
Twitterにおけるエンゲージメント率は、twitterがエンゲージメントとして集計している総数を、インプレッション数で割ったものです。エンゲージメントは、「クリック」、「返信」、「フォロー」、「リツイート」、「いいね」の5つのアクションでカウントされ、これらの総数で表します。これに対してインプレッションは、ツイートがユーザーに見られた回数です。1人のユーザーが、そのツイートを複数回見れば、その都度カウントされます。管理画面の「アナリティクス」を見れば、エンゲージメント率を確認することができます。
まとめ:コンテンツマーケティングを成功させるために、適切なKPIの設定を
今回は、コンテンツマーケティングにおける、KPIの重要性について、詳しく解説しました。
経営において、事業活動を始める上で、KGI=重要目標達成指標の設定は、すべての出発点となります。そしてKPI=重要業績評価指数は、その事業活動が現時点でどの程度達成されているか、客観的に判断するための指標となるものです。
コンテンツマーケティングは、潜在顧客を多く獲得し、その中から見込み顧客=リードを育て、ゆくゆくは優良顧客に仕上げて、より高い収益を確保するための施策です。目標達成までの道のりは長く、その効果も数値では判断しにくいとされています。それぞれのフェーズにいる消費者に対して、適したコンテンツを配信できているか、絶えず確認し、修正していく必要があります。
そのために、KPIは重要な役割を果たします。
コンテンツマーケティングの目的は大きく分けて2つあり、1つは「新規顧客の獲得」であり、もう1つは「既存顧客の育成」です。目的に応じて、KPIは異なります。
KGIが新規顧客の獲得である場合、KPIはPV数、セッション数、UU数、問い合わせ件数などが指標となります。一方、KGIが既存顧客の育成であるなら、リテンション率やエンゲージメント率などが指標となります。
いずれにしても、具体的な数値目標をもとに、今行っている施策がどの程度達成されているか、客観的に判断してPDCAをこまめに回していくことが、コンテンツマーケティングを成功させるカギとなるのです。
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