中小企業における「ブランド戦略」の重要性とその効果


「うちの商品も会社もあまり名前が知られていない」「人も予算もそんなものに割けるほど余裕はない」という経営者の方も多いでしょう。しかし、中小企業だからこそブランド戦略は重要となってきます。中小企業におけるブランド戦略の重要性とその効果についてお伝えします。

この記事の目次

中小企業におけるブランド戦略とは

ブランド戦略とは文字通りブランド化するための戦略です。中小企業の経営者にはブランド戦略というものにあまり興味を示さない方が多いかもしれません。しかし、経済が総じてコモディティ化し、各企業に相応の差別化が求められている今日、ブランド戦略を策定し、実行することが必要です。とりわけ、中小企業にとっては生き残りの道をかけたブランディングが必須となっています。

中小企業の良い製品はなぜ高く売れないのか

ブランド戦略は、自社の商品やサービスを顧客に認知させ、「買いたい」という気持ちを起こさせるという、経営戦略の中でも最も大きなテーマのひとつです。優れたブランド戦略は、自社の製品やサービスを他社から差別化し、自社のアイデンティティとして消費者の認知を促します。

ブランド戦略は、自社のミッションやビジョンなどと密接な関係にあります。企業のミッションやビジョンは企業理念と言い換えても良く、経営者のみが語ることのできるものです。自分たちが何を目指し、いかなるバリューを社会に提供していくのかという明確なメッセージを伝えることのできる企業は、市場で確たる地位を確立し、常に消費者に選ばれる存在となり得ます。

一般的に、中小企業は大手企業に比べてブランド力が弱いと言われています。中小企業は品質の優れた製品を生産していても、その製品名や企業名があまり知られていないというケースも多々あります。その結果として、中小企業の製品は、市場においても実際の価値よりも低い評価を受ける、「ディスカウント現象」が生じるケースが少なくありません。

また、多くの中小企業はそもそもマーケティングやブランディングに関する高度な知識や経験を持った人材が乏しいという事実もあります。さらに、これまでの多くの日本の中小企業は、特に独自にマーケティングやブランディングを行う必要がなく、それらなしにゴーイングコンサーン(企業の永続性)を確保することができました。

しかし、世界の経済が総じてコモディティ化する中、マーケティングやブランディングをせずに差別化をすることが一般的に困難になっています。
 
現在の多くの日本の中小企業は、社内にマーケティングやブランディングの知識を持つ人材が乏しく、それゆえ適切なマーケティングやブランディングが実施できていません。それゆえゴーイングコンサーンが確保できないという負のプロセスに陥りつつあるのです。

専門家の存在が中小企業の三重苦を解消する


ブランド戦略を実践する上でまず把握しておかなければならないのは、「どのような商品やサービスを提供すれば顧客が満足するか」です。これは顧客ニーズ、あるいは消費者ニーズと呼ばれるものですが、それには市場調査が欠かせません。
 
日本においては一般に、大手企業ほど市場調査を重視しており、そのために必要な専門の人材と予算を十分に確保しています。

自社の商品やサービスのどの部分が、消費者に受け入れられているのか。自社には何が不足していて、競合他社は次にどのような手を打とうとしているのか。市場調査で採取したデータを活用して、今後、どんな製品を提供するべきかを絶えず検討しています。

市場調査から得られたデータを読み解くには、高度な分析能力が求められます。自社が勝負する市場はどこか、そして今後の可能性はどこに隠れているのかを、データを読み解いて考え出さなければならないのです。

大手企業では、社内にマーケティング部門のような専門チームを擁しているところが多いようです。消費者ニーズに自社の企業理念や理想を照らし合わせ、商品やサービスの開発にいそしんでおり、この繰り返しが自社のブランドを作り上げているのです。

また多くの大手企業、特に消費財メーカーなどにおいては、製品ブランドを自己完結的にマネージする「ブランドマネジメント」という戦略スキームが採用されています。

これは、製品を扱う事業部を一つの戦略単位(SBUと呼びます)として扱い、それぞれチームとしてブランディングを行ってゆくというスキームです。中小企業には、こうしたスキームが決定的に欠けており、その結果として、「ブランドなし」、「人材なし」、「予算なし」の「三なし」状態が生じてしまうのです。

では、中小企業はブランド戦略を実行するのは無理なのでしょうか。

必ずしもそうとは言い切れません。何事にも専門家というものが存在します。ブランド戦略に特化したコンサルティング会社に依頼することで、上記のような「三なし」状態から脱却することが可能になり、同時に社員にとっても、マーケティングのような慣れないにわか業務に煩わされることなく、本来やるべき業務に専念することができるというメリットがあるのです。

また最近は、外部の人材をオンデマンドで活用するアウトソーシングが花盛りですが、社内にマーケティングやブランディングのスペシャリストがいないのであれば、そうしたアウトソーシングプラットフォームを利用するのも手でしょう。アウトソーシングプラットフォームの多くには、マーケティングやブランディングを専門にアドバイスを行い、場合によっては直接業務を行う専門家が多数登録しています。

ただし、上述したSBUを社内に作ってブランドマネジメントを行うといった、ある程度の時間と人材が必要なプロジェクトを展開するのであれば、アウトソーシングプラットフォームで人材を集めるよりも、外部のコンサルタントを招聘して、チームビルディングを支援してもらう方が望ましいでしょう。

ブランドマネジメントは永続的に行われるプロジェクトであり、最終的には自社内にマーケティングやブランディングのノウハウを蓄積する必要があるからです。

欠かしてはいけない 「他者の知見」

中小企業の経営者の中には、自ら現場の最前線に立っている方も少なくないでしょう。しかし、そういうトップが、必ずしも市場や自社の状況を把握しているかといえば、必ずしもそうでもないのが現実ではないでしょうか。

特に営業畑出身の経営者の中には、みずからトップ営業を行い、まるで野戦軍司令官のように営業チームを率いるようなタイプの方が少なくないようです。そうしたタイプの方の中には、自社や自社製品のブランドの重要性を認識していない方が少なくありません。

総じて俯瞰するに、会社の将来を見据えてブランド構築に積極的に投資しようという中小企業の経営者は、まだまだ少ないと言わざるを得ません。事業経営も順調で、資金がない訳ではないのでしょうが、そこに価値を見出せないと感じているトップが多いということでしょう。

少なくとも、事業計画の重要な活動の一つとしてブランド構築を取り扱い、一定の予算を配したプロジェクトとして展開している中小企業の経営者は、絶対数では絶望的なほどに少数であると言わざるを得ないでしょう。

一方、資金不足や人材不足などにより、ブランド構築を自社のみで実践できる状況にはないが、危機感を感じていろいろと取り組んでいる企業も存在します。ブランド構築にほとんど関心のない企業と、危機意識を持ったブランド構築の必要性を認識している企業とを中長期的なスパンで比較した場合、市場においてどちらが生き残れる確率が高いでしょうか。

創業100年を超える老舗の大手企業が、自社ブランドを見直し、再構築することは非常に重要です。そうすることにより、伝統の上にあぐらをかいた、消費者をかえりみない経営方針を見直すことになるからです。また、歴史を持つこと自体がブランド構築の重要な要素であり、その重要性を認識し、その資産を正しく活用することが必要不可欠であるとも言えるでしょう。

創業時から受け継いでいる企業理念と、現在の社会における自社の役割を見比べてリブランドするには、そうした老舗企業でさえ、外部からの専門家を招いて意見を仰ぐそうです。ましてや、これからブランド構築を始めるといった中小企業においては、専門家の意見がより必要でしょう。

ブランド構築には時間とコストがかかる


中小企業経営者が認識しておくべきこととして、ブランド構築には時間がかかるという事実があります。ブランドを構築するには、製品の名前、デザイン、ロゴ、パッケージデザインなどに共有のテーマを持たせ、それらに関連するブランドアソシエーションを紐づけ、広告などを駆使して消費者へ広くリーチさせる必要があります。

  • 製品の名前
  • デザイン
  • ロゴ
  • パッケージデザインなど

当然のことながら、そうした活動は一朝一夕に実を結ぶわけではなく、実際の効果や成果が表れるまでには相当の時間を要します。

さらに、ブランド構築にはコストもかかります。一般にブランド構築と縁のない経営者ほど、そのことを理解できません。これは、特に人的ネットワークをベースにビジネスを展開してきた企業経営者に多く見られるようです。

しかし、ブランド構築をタダで行うことは不可能です。ブランド構築にはマーケッターやデザイナーなどの専門人材のコストや、マスメディアを使った広告、各種のインターネット広告、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディア、YouTubeなどの動画コンテンツなどのコストもかかります。ブランド構築とは長期投資の一種のようなものであり、ある種の積み立て貯金のようなものでもあります。そうした、息の長い長期投資を行うことなしに、ブランディングの果実を得ることは、ほとんど不可能なのです。

プロのスキルを積極的に取り込んで、価値あるブランド戦略を

時代や事業環境の変化を読み取り、社会に則したミッションやビジョンを見出すには、他者の知見を活かすことが重要です。マーケティングやブランディングに特化した専門人材に乏しい中小企業こそ、ブランド戦略のプロであるコンサルティング会社を積極的に活用し、彼らのスキルと経験を社内に取り込むべきではないでしょうか。

文・デファクトコミュニケーションズblog編集部

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ウルマル編集部
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