Saas業界のコンテンツマーケティングの成功事例


企業のマーケティングにおいて、顧客との接点をいかに確保するかは、重要な課題です。企業活動や製品などの情報を、効率よく新規顧客層へ発信する手段として注目されているのがメディアです。メディアは大きく分けると、ペイドメディア、アーンドメディア、オウンドメディアの3つに分類されます。中でもオウンドメディアは、コーポレートサイトやメールマガジン、会社案内、商品カタログ、チラシなど、企業が顧客に向けて発信するツールの総称ですが、その存在感は以前にも増して高まっています。オウンドメディアを有効活用することにより、企業価値を高め、売上を向上させることが可能になるからです。そして、そのカギを握るのが、「コンテンツマーケティング」と呼ばれる概念です。
今回は、SaaS業界を取り上げ、各社がコンテンツマーケティングにどのように取り組んでいるか、事例から学ぶことにしましょう。

この記事の目次

そもそもコンテンツマーケティングとは?

ポストイットに「CONTENT」「SEO」「SNS」などの文字 


はじめに、「コンテンツマーケティング」について、解説しておきましょう。

コンテンツマーケティングとは?

コンテンツマーケティングとは、主に企業サイトにおいて、見込み客(リード)にとって有益な情報を提供し、自社への関心を促し、最終的には購買行動を起こさせるマーケティング手法です。自社製品やサービスの一方的な売り込みでは、自然流入したリードはすぐにサイトを離脱してしまいます。一見、自社の商品とは関係がなさそうに見えても、読者が興味を持ちそうなコンテンツを掲載することで、自社の存在を認知させることが大切です。そして読者に、「このサイトに来れば、何か面白い情報が得られる」と、思わせることができればしめたもの。後は、継続的にコンテンツを配信しながら、ホワイトペーパーやeブックの提供、セミナーへの誘いなどを通して、購買意欲を掻き立てるように仕向けていくのです。

 

SaaS業界でコンテンツマーケティングは有効?

「SaaS」とは、「Software as a Service」の頭文字を取った造語です。
SaaSは、ベンダーが提供するクラウドサーバーを介して、ユーザーがソフトウェアを安価に利用できるサービスです。
これまで、企業の業務効率化を実現するソリューションは、導入するまでには大がかりなものが多く、費用を含めてコストは大きな負担となっていました。
ここ数年で、一部の経営者の間では既に注目されていたSaaSですが、政府の施策の一つに「DXの推進」という項目が加えられ、2020年3月以降、新型コロナウィルスの感染拡大を切っ掛けとして、一気に注目度は高まりました。
総務省は2020年8月に、世帯及び企業における情報通信サービスの利用状況について調査し、「通信利用動向調査」としてその結果を取りまとめました。※1
それによると、企業のクラウドコンピューティングサービスの利用状況は、利用している企業の割合は68.7%でした。
利用しているクラウドサービスの内容は、「ファイル保管・データ共有」が59.4%、「電子メール」が50.3%、「社内情報共有・ポータル」が44.8%、「スケジュール共有」が43.8%、「給与・財務会計・人事」が37.8と続きました。逆に、「営業支援」が17.6%、「システム開発・Webサイト構築」が10.8%、「生産管理・物流管理・店舗管理」が10.2%という結果になり、今後、高度な利用分野での伸びしろへの期待が予想されます。
次に、クラウドサービスを利用する理由としては、1位が「場所、機器を選ばずに利用できるから」で46.8%、2位が「資産・保守体制を社内に持つ必要がないから」で43.5%、3位が「災害時のバックアップとして利用できるから」で39.2%という結果となっています。これは、新型コロナ禍の影響により、企業がこれまで以上に、BCP=Business Contunity Plan、つまり、事業継続計画の策定に迫られていることを意味しています。
クラウドサービスの効果については、「非常に効果があった」と「ある程度効果があった」とを合わせると、全体の87.1%が効果があると回答しました。
最後に、SaaS業界とコンテンツマーケティングとの相性について、見ておきましょう。
SaaSでの料金体系は、サブスクリプションと呼ばれる定額課金が基本となります。ベンダーが安定した売上を確保するためには、なるべく多くの見込み客を獲得し、既存顧客を長期に渡って維持することが必要となります。
そのためにはまず、オウンドメディアで潜在顧客にとって有益なコンテンツを配信し、自社に興味を持ってもらうことです。オーガニック検索により、自社サイトに流入した潜在顧客に対し、継続して情報を発信することが肝要になるのです。これにより、潜在顧客が「このサイトに来れば、何か面白い情報が得られる」と思えば、最初の関門はクリアです。サイトへの関心はやがて、自社の存在と製品・サービスに向けられるようになるでしょう。ここまでくれば、あとはホワイトペーパーやeブックなど、より詳細な資料の提供で、潜在顧客を見込み客(リ―ド)へ、さらにはホットリードへと「育てる」ことが可能になるのです。そして、この段階になれば、インサイドセールスによるアプローチで、契約成立は確実なものとなるでしょう。
サブスクリプションは、ソフトウェアを購入するのではなく、利用することで価値を享受するビジネスモデルです。月々の料金は定額に抑えられており、それ故に利用側は、少しでも気に入らないことがあれば、簡単に解約してしまうでしょう。これはBtoCに限らず、BtoBについても言えることです。
従ってSaaS企業は、既存顧客に対しても満足度を向上させて、解約を食い止める努力を怠ってはならないのです。そのためには、彼らが求める価値のある情報の提供を、持続して行うことが重要です。
潜在顧客を多く獲得し、見込み客へと育てて成約率を上げる。既存顧客へは引き続き、価値を提供することで、LTV=生涯顧客価値を最大化する。SaaS企業にとって、他社との競合に勝ち抜き、企業を存続させるためには、コンテンツマーケティングという施策は、非常に親和性が高いと言えるのではないでしょうか。
※1 総務省「令和2年通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/210618_1.pdf

コンテンツマーケティングの成功事例10選

ヒントを思いついた男性のイラスト


ここからは、実際にコンテンツマーケティング施策を手がけ、一定の効果を出している企業の事例をご紹介します。
今回は、Saas業界編です。

salesforce blog


クラウドアプリケーションやクラウドプラットフォームを提供している、株式会社セールスフォース・ドットコムが運営しているオウンドメディアです。
顧客情報を、マーケティングやセールス、サービス、ITなどすべての部門で共有するための、統合型CRMプラットフォームの普及を目的に、ツールの活用事例などが詳細に紹介されています。
また、「利益を最大化するデータ分析の基本と営業・マーケで有効な手法を解説」のように、B to Bに特化したビジネススキルを、詳しく解説している記事も、数多く掲載しています。加えて同社は、セミナーやウェビナーの開催を積極的に行っていますが、そのリポートもブログ記事として、面白く読める工夫がなされています。これは、新規見込み客だけではなく、既に顧客となっている層に向けて、ツールのパフォーマンスを最大化させようという意図があり、ツール導入後のサービス強化に繋がっています。
◯「salesforce blog」
https://www.salesforce.com/jp/blog/home

HubSpot


CRMプラットフォームを提供する、HubSpotが運営しているサイトです。
コンテンツマーケティングを実践する上で、有益な情報がコンテンツとして扱われています。「ブログ記事の書き方」では、ブログ投稿の方法について詳細に説明しています。記事の中では、無料でダウンロードできるテンプレートが紹介されており、自然な動線の流れで、読者の属性情報を入手する工夫が為されています。
他にも、「顧客維持」、「カスタマーエクスペリエンス」、「SEO」、「Instagramマーケティング」、「メールマーケティング」、「セールスプロスペクティング」など、セールスやマーケティングに携わる人に向けて、幅広く話題を取り入れていることも、特筆するべき点と言えるでしょう。
◯「HubSpot」
https://www.hubspot.com/

「バズ部」


マーケティングコンサルを主に事業展開する、株式会社ルーシーが運営しているオウンドメディアです。
コンセプトは、「どこよりも結果が出るマーケティングノウハウを提供するメディア」です。
「コンテンツマーケティングの導入事例と実践方法の全て」や、「SEOで成果を出すために必要な知識と実践方法の全て」など、確実に成果を出すために、ステップを踏んで読むごとに、各手法を習得できる掲載方法がユニークです。
また、「コンテンツマーケティングの成功事例」では、同社のサービスを活用することにより、短期間に売上を倍増させた方法を関係者に取材し、分かりやすく解説しています。
◯「バズ部」
https://bazubu.com/

「Money Forward Bizpedia」


経理や人事に特化したソフトやクラウドを活用したサービスを提供する、株式会社マネーフォワードが運営するサイトです。
記事の内容は、会計や人事に関するものに限定されており、ある程度、読者を絞り込んだ上で、自社ソフトやサービスの購入を検討するよう、誘導する意図がうかがえます。また、無料でダウンロードできるサービス資料が充実しており、読者の属性を入手する動線の確保は、しっかり設計されているようです。
加えて、「Tweet by @_mfcloud」では、ツイッターと連携することにより、ブログ記事を広く拡散することに成功しています。
◯「Money Forward Bizpedia」
https://biz.moneyforward.com/blog/?_fsi=EcY3ZMhi

「経営ハッカー」


スモールビジネス向けクラウド会計ソフト「freee」を提供する、株式会社freee
が運営するオウンドメディアです。
個人事業主や中規模企業の経営者に向けて、会計、経理、人事労務、税務、確定申告、給与計算、起業、会社設立など、およそバックヤード及び経営全般に関わる情報を発信しています。
記事の内容は、スタートアップ企業のCEOや、年商数十億円を売り上げる企業の経営者などへのインタビュー記事も充実。また、同社が定期的に開催している「会計freeeユーザー会」の模様をリポートしており、ユーザーの生の声を読者に届けることで、会計ソフトを検討している潜在顧客の購買意識を喚起しています。
◯「経営ハッカー」
https://keiei.freee.co.jp/keyword/getsuji-kessan

SATORIマーケティングブログ


マーケティングオートメーション(MA)ツールの開発・販売を手がける、SATORI株式会社が運営しているオウンドメディアです。
ターゲットは新規見込み客から既存顧客まで、幅広い層に向けて、マーケティング全般に関するトピックを取り上げています。
ブログのカテゴリーは、マーケティングの基礎知識にはじまり、インバウンドマーケティング、SEO対策、メールマーケティング/メルマガなど、多岐に渡ります。中でも、マーケティングオートメーションに関する記事は50本以上も掲載されており、ある程度、MAに関する興味・知識を持つ読者を想定して、コンテンツ制作していることがうかがえます。
そしてそのような読者に対し、ホワイトペーパーやメルマガ配信、セミナーへの勧誘など、段階を踏んだコンテンツの提供を通して、彼らとの接触機会を増やし、新規の見込み客を顧客へと育てる「リードナーチャリング」を実践しているのが特徴です。
◯「SATORIマーケティングブログ」
https://satori.marketing/marketing-blog/

「Gaiax ソーシャルメディアラボ」


株式会社ガイアックスが運営している、SNS運用に特化した情報発信サイトです。同社は、SNS運用代行及びコンサルティング、Twitterアクティブサポート、ソーシャルリスニング(SNSの口コミ分析、)、各種データ分析などの事業を手がけています。
同オウンドメディアの開設目的を、「マーケターや企業の広報担当者が、ソーシャルメディアを有効に活用できるよう、実践的な利用方法の研究・情報発信」と謳っています。このことから分かるように、取り扱う具体的な内容としては、FacebookやTwitter、LINE、Instagramなどのソーシャルメディアに関連した、最新ニュースや運用ノウハウ、事例などを素早くとらえ、独自の知見に照らし合わせて分析・公開してるのが特徴です。
また、ツール開発担当者や、先進事例を持つ企業の広報担当者に取材し、貴重な一次情報をインタビュー記事に仕上げ、読者に提供していることも特筆すべき点と言えるでしょう。
◯「Gaiax ソーシャルメディアラボ」
https://gaiax-socialmedialab.jp/

「JAWS-UG」


AWS(Amazon Wab Service)が運営する、クラウドコンピューティングを使用する人たちのコミュニティサイトです。
学びや交流を目的として、ボランティアによる交流イベントや勉強会を行っています。同コミュニティでは、日本全国に「支部」というグループを持ち、それぞれの支部が独自のテーマに基づいて活動を行っています。注目したいのは、イベントに参加したユーザーが自ら、SNS発信を活発に行っている点です。企業側からの一方的なコンテンツ配信だけではなく、ユーザー同士の情報発信と交流を活性化することにより、コミュニティユーザーが増殖していく仕組みを構築しているのです。
◯「JAWS-UG」
https://jaws-ug.jp/

「サイボウズ式」


ビジネスシーンではお馴染みの、「サイボウズOffice」や「kintone(キントーン)」などのグループウェアを開発・販売を行っている、サイボウズ株式会社が運営しているオウンドメディアです。
サイト内を回遊して気付くのは、読者の属性を入手するためのフォームが存在しないことです。そして、コンテンツ記事の内容は、「マネジメント」、「就活」、「多様性」、「ワークスタイル」、「人事制度」、「キャリア」など、広範なトピックを扱っている点です。このことから、同メディアの開設目的は、自社製品・サービスへの誘導ではなく、会社で働く多くの人たちが抱く課題や疑問を提起し、社会問題化しているテーマに目を向けてもらうことであるとうかがえます。
面白いのは、トピックの中に「青野慶久」というタグがあること。同氏は、サイボウズの代表取締役社長ですが、代表者自らが、経営者や研究者などの見識者と対談し、その模様を詳細に伝えています。このことから、企業の代表者の人となりや企業理念がおのずと明らかになり、サイボウズへの親しみやすさを醸成し、企業ブランドの向上に繋げているようです。
◯「サイボウズ式」
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/category/company.html

「ferret One」


オールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」を提供している、株式会社ベーシックが運営するWebマーケティングメディアです。
漠然とした欲求を抱えるユーザーよりも、ある程度、目的意識がはっきりしている見込み客を前提としたサイト設計と、コンテンツ内容になっています。
「課題/業界別活用法」では、「サイトを立ち上げたい」、「DXを推進したい」、「業務効率化したい」、「LPを作りたい」、「IT/SaaS業界の活用法」、「製造業の活用法」、「コンサル行の活用法」など、業務別・業界別に想定される課題を取り上げ、ferret Oneでどのように解決できるのかを明示しています。これにより、読者は同ツールの持つ機能を、より身近にイメージすることが可能です。
◯「ferret One」
https://ferret-one.com/

まとめ:SaaS企業の事例を参考にし、コンテンツマーケティングを活用しよう

笑顔で右手の人差し指を出す女性。


今回はコンテンツマーケティングの概要と、SaaS業界との相性について、そして実際に効果を上げているSaas企業10選をご紹介しました。
コンテンツマーケティングとは、ユーザーにとって価値のある情報を、継続して発信することにより、自社への関心を促し、自社製品・サービスの購入に結び付けるマーケティング手法です。そして、サブスクリプションというビジネスモデルを前提としたSaaS業界では、その先を一歩進めて、既存顧客にもその都度有益な価値を提供し続けることで、顧客のLTVを最大化することを可能にしたのです。
今回ご紹介したSaaS企業10社は、いずれもターゲットとする顧客層を明確に捉え、彼らが求める価値を真剣に見つめ、コンテンツ制作・配信に活かしています。
この記事をご覧になっている、SaaS企業でマーケティング及び、広報に携わっている方は、是非、ご参考にしてみてください。
弊社では、コンテンツマーケティングの本質を見極め、オウンドメディア用など、幅の広いコンテンツの企画・制作を承っております。
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デファクトコミュニケーションズ
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ウルマル編集部
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