別記事「ブランドデザインは、自社でも行える」において、企業のブランド構築において活用できる媒体をそれぞれご説明しましたが、実際のコンテンツ制作の現場においては、それぞれを制作する上での注意点やコツがあります。ここでは、コンテンツの代表的な制作物を作成する際の注意点について解説していきます。
この記事の目次
IR・CSR系コンテンツを作る際の注意点
IRやCSRは会社の取り組みや実績を伝える上で有効な手段ですが、プロモーションツールではありません。誇大な表現を用いすぎたり、サクラを用いて大きな反響を得ているように見せたりしては、信頼と信用に欠けて軽薄な印象を与えてしまいます。あくまで「ブランディング」であるという意識を持ち、コンテンツの制作に取り組むよう注意しましょう。
また、IRやCSRは株主や専門家だけがターゲットであるという先入観を捨てましょう。IRやCSRで報告する社会貢献活動は、企業や事業を取り巻くユーザーや地域住民をはじめ、ステークホルダー全体がターゲットとなり得るのです。それぞれのターゲットが求める情報を分かりやすく発信することで、IRやCSRがコンテンツとしての本領を発揮できるようになります。
社会貢献や社会的責任をメッセージとして発信する際に陥りがちなのが、壮大な言葉を用いすぎることで、読者に具体的なイメージを与えられないということです。「地球の自然環境のために」「日本の子どもたちの未来のために」というメッセージは、非常に耳触りが良く美しい言葉ですが、具体的に何をしているのかが分からず親近感を覚えられません。
IRやCSRのコンテンツでは、実際に企業が取り組んできた活動を分かりやすく紹介し、それが対象者や地域住民にとってどのような影響を与えたかまで落とし込んだ内容にすることで、読者からの共感を得られるようになります。
IRやCSRのブランディング価値を向上させるためには、コンテンツの内容がターゲットにとって価値のあるもので、共感を呼び企業に好感を抱いてもらわなければなりません。パートナー企業に制作を依頼する場合は、表面的な活動内容を共有するだけでなく、なぜこの活動をするに至ったかといった背景や目的まで深く共有するようにしましょう。
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統合報告書を作る際の注意点
統合報告書では財務、非財務領域の区別なく、企業全体のパフォーマンスをまとめ、企業価値を伝える必要があります。そのため、企業の成長性や将来性などを理解してもらうために、KPIを開示することが望ましいでしょう。
また、人はストーリーに深く共感する性質があります。そのため、企業の事業戦略やビジネスモデル、価値創造のプロセスについて魅力的なストーリーで語り、企業が所有する資産をどのように事業活動に生かして、業績や社会貢献につなげようとしているかを分かりやすく伝えます。
統合報告書は内容量が多くなりがちですが、あまりにも情報過多になると読者に読んでもらうことができません。統合報告書のターゲットは株主のみならず、企業に関わるステークホルダー全体になります。
統合報告書やIR資料などに普段あまり接しない層にも情報を届けるためには、情報を完結にまとめて通読してもらえるようにすることが大切です。資料やサイトはテキストだけで埋め尽くさず、図や写真などビジュアルを有効活用し、直観的に内容を理解できる状態にします。
どれだけ素晴らしい情報であっても、ターゲットにその内容を読んでもらわなければ伝えることができません。強みや存在意義といった企業価値を理解し、エンゲージメントを高めてもらうためにも、「分かりやすさ」を最重要視して制作に取り組むべきでしょう。
企業出版を作る際の注意点
出版物というと、経営者や優秀な社員が自分の経歴や仕事に対する理念などを執筆するイメージが強いですが、ブランディングのための企業出版の目的は「企業の課題解決」に特化しています。そのため、集客や販売促進、ブランディング強化、インナーコミュニケーションなど、現状の課題を洗い出してその点を改善できるような内容に仕上げていきます。
また、書籍は5万~10万文字程度の文章量が必要になるので、これだけの内容を語ることのできる自社の強みを活かしたテーマに設定することをおすすめします。書籍はWebコンテンツとは異なり、半永久的に残る息の長いものです。
世間的なブームを意識しすぎるのではなく、3年後、5年後、10年後にも愛読されるロングセラーとなるような企画を検討することで、企業のブランディング価値を永く向上させることが可能になります。
同じテーマや企画内容であっても、ターゲットとなる読者の知識量やスキルレベルによって表現方法や記載内容は異なってきます。業界に詳しいビジネスパーソンをターゲットにするのか、潜在顧客となる幅広い層をターゲットにするのか。誰を相手に語りかける書籍にすべきかを最初に検討した上で、執筆を開始しましょう。
企業出版は経営者や社員自身が執筆することも可能ではありますが、数万文字もの文章を書き上げるのはスキル的にも時間的にも難しいと感じる方も多いでしょう。そのような場合は、信頼できる制作会社などのパートナーに依頼し、インタビューを受けることでライターが書き上げた原稿を元に書籍化することも可能です。
インタビューは複数日程に渡る可能性もありますが、発言内容が二転三転して書籍に一貫性がなくなってしまわないように注意しましょう。あらかじめ何を記載してもらいたいのか熟考し、リストアップしてインタビューに対応するとスムーズに進行できます。
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社長メッセージページの注意点
webサイトにおける社長メッセージページは、会社概要だけではお客様に伝えきれない企業としての想いや考え方、姿勢を表現するためのものです。ともすれば「あって当然のもの」として、無難で無作為に作られがちが社長メッセージページですが、実はトップページに次ぐ重要度を誇るコンテンツと言っても過言ではなく、クライアントから就活生まで、ありとあらゆるステークホルダーが見るものである、ということを前提にしておかなければなりません。
社長メッセージでよくあるのが、導入文として近年の社会情勢について言及し、これからも頑張っていくと言ったありきたりな挨拶文で締めくくるもの。確かに、当たり障りはないかもしれませんが、これでは極端な話、会社名さえ入れ替えてしまえばどこの会社でも使えるものになってしまいます。
会社として、そして社長として、どんな想いや考えで事業運営をしているのか。この世の中に何を届けたいと思っているのかを明確にし、自分自身の言葉で伝えていかなければなりません。
ただし、伝えたい事がたくさんあるからと言って、闇雲に長い文章となってしまったり、色々な対象に対する個別のメッセージを盛り込んではいけません。Webページは流し読みされるのが普通です。流し読みでも伝わる文章か、流し読みをさせないパワーワードを冒頭に置くなどして、人々の心をつなぎとめる工夫もしておきましょう。
また、言葉と同じかそれ以上に人々の印象に残るのは、その人の「見た目」でしょう。社長メッセージページでは文章だけを掲載している企業も少なくありませんが、本当に効果的なコンテンツとしたい場合、社長の写真は必ず掲載するようにしましょう。
その際、視線や表情、姿勢やポーズ、ひいては着ている服装や背景に至るまで、クリエイティブワークのすべてが社長のイメージを形作り、それが会社全体のイメージにも繋がっていきます。読者は、優しい表情であればあたたかな社風を感じとり、引き締まった表情であれば堅実で真面目な社風を感じとってくれるでしょう。
社長メッセージページを一度作れば、HP全体の刷新や社長の交代がない限り中身を変更しない、という会社も少なくありません。しかし、社会全体の変化スピードが急激に上がっている中で、企業として目指すべき方向性が必ずしも去年と同じであるとは限らないはずです。ともすれば、作成当時は先進的だったものが、数年後には時代に逆行するような、的外れなコメントとなってしまっていることも少なくないのです。
今まさに、会社が目指しているところはどこなのか、社長として果たすべき責任は何なのか、ということを定期的に更新していける体制を整えておきましょう。それぐらい、人々は社長メッセージページに多くの情報を求め、得ようとしているのです。
人事インタビュー記事の作り方の注意点
優秀な人材を効果的に集めるという意味では、採用サイトやその中身のコンテンツ、また採用におけるビジョンの構築について力と時間を注ぐことも、重要なブランディングの一つと言えます。そうした採用サイトでは、主に社長インタビューや先輩社員インタビュー、人事インタビューが掲載されることが多くありますが、ここでは人事インタビュー記事を作る際の注意点について解説していきます。
採用ページに掲載するインタビュー記事は、その対象によって伝えるべき内容が異なってきます。例えば社長インタビューであれば、会社の方向性や姿勢などの大きな視点での話が求められますが、一方で社員インタビューであれば、具体的な働く環境や、やりがい、苦労といった話を求めて見に来る人が多いでしょう。
そして人事インタビューでは、上記の2つとはまた異なり、より具体的な採用に対する考え方や求める人物像について語らなければなりません。この人事インタビュー記事は、いわば就活生がいかに志望動機や自己PRを作りやすくできるかが重要となっており、そのヒントとなる要素を多数散りばめることが、見に来た人を満足させる、より良いコンテンツとするための条件です。
近年、売り手優位の傾向が顕著になっている採用市場においては、候補者を面接に呼び、実際に会場まで来させることすらも難しいものとなっています。予約は取り付けたけれど、当日になってドタキャンされたことがある人事担当者も少なくないでしょう。
ドタキャンをしてしまう理由は人によってさまざまですが、大きな要素としてあるのは、面接に対する不安です。「上手く質問に答えられなかったらどうしよう」「圧迫面接をされたらどうしよう」「自分が言っても合格すると思えないし」こういった不安は、就活生の面接へ向かう足を重くします。
だからこそ、先ほども述べたように、自己PRや志望動機を作りやすくし、面接対策が完璧に出来ていると就活生に思わせることが大切であり、また実際どんな人が面接するのか、ビジュアルでもしっかりと安心させてあげることが必要なのです。人事担当者として、面接の現場に出る人の写真は必ず掲載するようにしましょう。
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商品制作ストーリー記事の作り方の注意点
技術が発達し商品がコモディティ化してくると、性能や金額といった外面的な差が生じにくくなり、必然的にユーザーはそれ以外の要素、つまり内面的な差を商品に求めるようになってきます。そこで重要になってくるのが商品制作ストーリー記事です。
その商品がいかにして生まれたかをストーリー化することで、独自の価値を感じてもらい、他社商品との差別化を図ってもらうのです。商品制作ストーリー記事を作成する際には、以下のことに注意して制作を進めなければなりません。
商品制作ストーリー記事を書く際、最も重要になるのは「導入の部分」です。ここでしっかり読者の心を掴むことができないと、後に続く商品の魅力や価値まで読み進めてもらうことができなくなってしまいます。
まずは商品制作の発端となった出来事や状況についてしっかりと説明し、読者の共感を得ることを目指しましょう。新しい商品を作るのであれば、何かしらそれを作らなければならなくなった理由や原因があるはずです。その部分を読者目線に立って語ることで「そうそう」「私も同じことを考えていた」と思わせなければなりません。
そうすることで、この商品開発者は自分の気持ちをわかってくれている。自分が満足できていなかった部分をしっかり改善してくれているはずだ。といった期待感がわいてくるのです。
共感を獲得し、読者の心を掴んだら、今度は開発に際して費やした日数や試行錯誤の数など、苦労した点をできるだけ具体的に語るようにしましょう。そうすることで、読者はその商品にかける開発者の熱い想いを感じることができ、商品に対する愛着を持ってくれるようになるのです。
また単純な話かもしれませんが、「これだけ苦労して作ったのだから、悪いもののはずがない」と感じさせることもできるでしょう。
出来上がった商品を見るだけでは感じることができない、人間の熱量をいかに感じてもらうことができるか。商品制作ストーリー記事では、そこに重点を置いて作成を進めていかなければなりません。
まとめ
さて、コーポレートブランディングや各種マーケティングに直結する媒体、コンテンツの作り方の注意点やコツについて説明させていただきました。社内で構築するリソースが足らないという場合には、パートナーを見つけながら、最適なブランド構築ができるよう進んでいきましょう。
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