デジタルコンテンツ戦略は、ブランド・イメージを新たにつくる上でも、既にあるブランド・イメージを拡張し変化させる上でも、重要な役割を果たします。
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ブランディングは、購買プロセスを効率化する
現代は類似商品のるつぼです。コンビニエンスストアの小規模店舗でも、ビールの棚は3段、発泡酒の棚も3段ほどあるのは普通。文房具店のボールペンの棚は何メートルにも跨って何列も伸びています。物を見ずに説明文だけで購入するインターネット通販でも、『ボールペン』で検索すると9万件以上(!)の商品ページがあります。
これは誰にでも経験があるかと思いますが、まともに比較して選ぼうと思ったら、ひとつの品物を買うために何分かかるかわからない時代ですよね。そして、買い物にかけたい時間は、昔と比べると短くなっている時代でもあるのではないでしょうか。一方で、その判断基準はいよいよ曖昧なものになってきています。買い物以外に時間を使って得たい体験の幅は、昔よりもずっと広くなっていますものね。
購入したことのない商品やサービスを、即断でさっと購入するための手助けをしてくれるのが、ブランドの存在です。
- このブランドのMサイズなら、試着しなくても恐らく大丈夫だ
- チークの色を変えてみたいので、いつも使っているブランドの別色を買おう
- 最近は●●という商品が増えたな、▲▲ブランドから出たら買ってみよう
- ▲▲ブランドの新商品が出たんだ。買ってみるか
このような体験は、誰にでもありますよね。最後に行き着く先は、『ここでしか買わない』と顧客の側が決めてしまうこと。そこそこ商品単価の高い紳士向けアパレルブランドが、なぜ利益率も販売数もさほど高くないと思われる『靴下』をこぞって販売しているのでしょうか?
その主な目的は、『着るものはここで全部揃うから、他は見なくてもいいや』と顧客に決めさせることにあると思われます。クロスセルではなく、囲い込みの戦略デザインなのです。
ブランドは、消費者の満足感を高める
『シャネルの5番』という、おそらく世界一有名な香水があります。この香水に関するさまざまな面白いエピソードは、ここでは紹介を割愛しますが、この香水を
- 買ったままの瓶で手渡し、使用してもらう
- 100円ショップで購入したアトマイザーに少量移し、
100円ショップで購入したアトマイザーに少量移し、『自由に使ってください』と油性ペンで雑に書いたものを手渡し、使用してもらう
上記2種類の方法でつけてもらった2人の女性に、パーティーへ出かけてもらったところ、偶然2人の両方が、ひと目で恋に落ちるレベルの好みのタイプの異性と電撃的に出逢ったとしましょう。そして、この日をきっかけに交際がスタートしたとします。このとき、どのような心理的な違いが生まれるでしょうか?
これが、ブランドの持つ2番めの魔力です。①の女性がいつか『あの日ね、シャネルの5番をつけていたの。いい香りがしたでしょう?』と満足気に語る可能性が高いことに対し、②の女性はいつか『実は、あの日つけていた香水、タダで貰ったよく知らないものだったの、ごめんね!』と謝罪する可能性が高いです。まったく同じ香りを身にまとっている2人であるにもかかわらず。
購入する瞬間の満足感、使用している時間の満足感、他人にそれを話すときの優越感、などなど。社会に認知されているブランドコンセプトには、商品やサービス自体が元々持っている実質的価値に加えて、心理的な充足をもたらす力があります。この力を一言で表すならば、『ステータス』ということばです。②の女性が受け取ったのは、香水という物体。①の女性はその物体と一緒に、ステータスを受け取っています。
ブランドが存在するメリット(企業編)
企業がブランドから得るメリット=(競争力)+(成長機会)+(収益性)
競争力
事業運営上、 ターゲットに対して有効なブランドを持つことは、競合との明確な差別化をはかることです。商標権を設定すれば、法的な保護のもとでさらなる優位性を獲得する可能性もあります。
成長機会
ブランド内のラインナップの拡張、展開するブランド数の拡張、いずれの方法によってもビジネスチャンスを増やすことができます。
収益性
ブランドは商品やサービスや webサイトに、以下の力を与えます。
- 次も買ってもらえる力・高くても買ってもらえる力
- 顧客の方から買いに来てもらえる力(販促に依存しない力)
このことが、商品やサービスの収益性を向上させます。単価を上げ、経費を下げる効用と言ってよいでしょう。
ブランドは資産であるという考え方(ブランド・エクイティ)
1991年、カリフォルニア大学のデイヴィッド・アーカー教授が体系化した『ブランド・エクイティ戦略』という概念があります。ブランドネームやブランドロゴが、『元々そこになかったはずの価値を生み出してしまう力』を持っていることは事実ですよね(逆に、あったはずの価値を減らしてしまうことも起こりえます)。このことを基に、ブランドは資産として扱うべきであるという考え方です。
お客様にとって好ましい『違い』が増大すればするほど、資産としてのブランドの価値も高まり、構築されていきます。ブランドの資産価値は、顧客と築いてきた信頼の量が可視化したものと言ってもよいでしょう。
ブランドの5種類
MBAマネジメント・ブック(1995・ダイヤモンド社・株式会社グロービス)という、ビジネスの辞典のような本があります。この本に、さまざまな『ブランド』のあり方の違いを理解するうえで、非常に端的な分類が定義されているので、紹介してみましょう。なお、1995年の書籍ということで、ブランドの具体例は引用せず、筆者が加筆しています。
例えば、開発部門が生み出した新商品を市場投入するとき、『これを何物として売るのか?』という戦略は、新商品がこれから辿っていく運命を決める、きわめて重要な要素のひとつです。このとき、ブランドの5種類という物差しはシンプルで有効な尺度になります。情報の聞き取りや調整を行うべき社内外の相手が誰になるのかも、変わってきますよね。
ブランド戦略はマーケティング・ 広告を一線を画するものであり、奥深く難しいものです。挑戦するにあたっては、まずこのような原理の部分を、頭に入れておきたいですね。
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