数年前に日本テレビで放映された、「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」では、石原さとみ扮する主人公が、恋や仕事に奮闘し、成長する姿がコミカルに描かれています。このドラマの中で特に注目されるのが、「校閲」という仕事です。ドラマの効果もあってか、校閲という職種の募集に対して、応募者が急増したという話も聞かれました。ただ、この校閲という仕事の内容について、正確に理解している方はどれだけいるのでしょうか。
そこで今回は、校閲という仕事とはどのようなものか、また、校閲者になるために必要なスキル、やりがいなどについて、詳しく解説します。
この記事の目次
校閲という仕事の内容
ドラマがヒットしたことにより、校閲という仕事に注目が集まったのは事実です。タイトルにもある通り、地味な印象があることは否めません。ドラマが放映される以前は、校閲という言葉さえ知らない人は多かったことでしょう。「新聞社や雑誌社で、ひたすら文章の校正をする仕事でしょ?」それも間違いではありません。しかし、校閲の仕事はそれだけではありません。もっと守備範囲が広く、奥の深い業務と言えるでしょう。そもそも、校正と校閲とはしばしば混同されますが、まったくの別ものです。
まずは、そこからご説明しましょう。
校正と校閲との違い
両者とも、文章の誤りをチェックし訂正する点は共通していますが、目を光らせるポイントが異なります。
校正は、元になる原稿と、ゲラと呼ばれる印刷する前の文章を突き合わせ、誤字・脱字などのミスを発見し、内容が元原稿の内容から逸脱していないか、赤字を入れて修正する作業です。
一方、校閲は、誤字・脱字の訂正はもちろん、事実関係の誤りや表記の揺れ、読者が不快に感じる差別的な不適切表現などを洗い出し、修正を加える作業です。しっかりとした事実に基づき、誤字・脱字のない文章で書かれた内容は、読む者に対して説得力があります。校閲の段階で、徹底的に事実確認を行い、文章構成上の矛盾点を探していきます。こうすることにより、時には著者でさえ気づかない誤りを正し、文章の精度を高めていくことに繋がるのです。
ネットコンテンツでも重要な校閲
先に述べた校正・校閲は、大手新聞社や出版社、印刷会社など、主に紙媒体を扱う組織において、専門部署が設けられています。校正・校閲の専任者が在籍し、文章の誤りを修正することに多くの時間を割いています。間違った表現を含んだ文章が、一旦、輪転機にかけられて印刷されてしまったら、もう取り返しはつきません。例え、後から刷り直して訂正するにしても、相当の費用と時間が生じてしまうでしょう。ですから、校正・校閲部署は、正しい情報を発信する上で、「最後の砦」と言えるのです。
では、オウンドメディアなどのデジタルコンテンツについては、どうでしょう。
ネットに掲載される情報は、速報性と、紙媒体に比べて修正が容易である点が特徴です。しかしこれは、ネットメディアの弱点でもあるのです。もしも、事実無根の情報が自社のサイトから流れたら、その拡散の早さから、一瞬にして世界中を駆け巡るでしょう。そして「デジタルタトゥー」と呼ばれるように、一旦、公開された情報は完全に消し去ることは不可能です。間違った情報や不適切な表現は、発信した企業の汚名と共に、ネットの大海を永遠に漂い続けることになるのです。
内容が有益であっても、数字や表記のミスがあると、記事の信頼度は損なわれてしまいます。また、文章内に差別的な表記や、読者に不快な感情を起こさせる表現があると、発信元である企業の品位や良識が問われることにもなり得ます。校正や校閲に力を入れて、コンテンツの質を上げることで、企業のブランドを向上させることにもなるのです。
校閲に必要なスキルは?
校閲という言葉を辞書でひも解くと、「文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、訂正したり校正したりする」仕事と定義されています。一見すると、日本語が読解できる人間なら、注意深く作業すれば勤まる業務のようにも思われますが、実際にはそんなに甘い仕事ではありません。校閲する上で、最低限、身につけておくべくスキルを下記に挙げてみました。
1.文章は、誤字・脱字なくかかれているか、チェックできるスキル。
2.文体や言い回しなど、文章が適切な表現で書かれているか、指摘できる能力。
3.固有名詞や人名・地名、数字、住所や電話番号、QRコードなど、事実関係確認、いわゆるファクトチェックができる能力。
4.表記の揺れ、つまり表現の不揃いを指摘できる力。
5.表記ルールに則り、正しい表記が為されているか、確認できる能力。
6.文字の級数や書体、ルビのずれなど、文章の体裁をチェックするスキル。
7.主に紙媒体を発行する際に行われますが、版面の大きさや書体・級数、行間、画像・図面のずれ、色の指定など、印刷する上で必要なレギュレーションの確認ができる能力。
8.画像やイラスト、グラフなどが文章と整合性が取れているか、見抜く能力。
大まかに分けても、上記のようなスキルが必須になってきます。これらのスキルを駆使して、文章と対峙することになります。校閲の仕事は、細かい作業の連続です。公的な数字の誤りや、人名・地名の表記ミスがないか、その都度、資料を参照して調べてゆきます。加えて、昔は許されていても、現在は差別的な意味を含む表現など、読者を不快にさせる表記を見つけて修正する作業も要求されます。それには、強靭な集中力が求められると同時に、最後までやり遂げる根気が必要になるのです。
校閲の仕事に欠かせない強い使命感と意思
校閲の仕事は、書き手と読者との橋渡し役と言えるでしょう。決して楽な作業ではなく、日々、文章と向き合い、内容の信ぴょう性や事実との整合性を突き詰めていく仕事です。
よく「間違い探しクイズ」に例えられますが、決定的に違うことが一つあります。間違い探しクイズは、はじめにいくつ間違いがあるか知らされますが、校閲ではそれがありません。書き手で、「間違えてやろう」とたくらんで、文章を書く人はいません。従って校閲は、業務時間の大部分を、文章が間違っていないことを確認する作業に費やすことになるのです。例え、99か所の間違いを指摘できたとしても、たった1か所の誤りを見過したら、それでその作業は0点と評価されてしまいます。
「縁の下の力持ち」とも言える校閲の仕事ですが、情報発信する上でなくてはならない機能です。書き手の意図を、正しい表現で読み手に伝える、という使命感をもって作業に取り組むことが何よりも大切です。
まとめ:コンテンツ制作においてはプロの手による校閲を
今回は、校閲の仕事について、校正との比較や必要なスキルなど、色々な角度から眺めてみました。
大手新聞社や出版社などでは、専門部署を設けて専任者を作業にあたらせるほど、校閲は重要な役割を担っています。
昨今では、一般企業においても、メールマガジンや自社サイトなどで、独自に情報発信する機会は格段に増えました。文章の精度を高め、有益な情報を読者に届けることは、企業ブランドを向上する上でも欠かせません。マスメディアほどではないにしろ、校閲はおろそかにできない作業です。とはいえ、専任者を抱える余裕はなかなかないのが現状です。
そんな時には、外部の制作会社や、校正・校閲を請け負う専門業者を上手に利用する、という方法もあります。ある意味、校正・校閲は職人的なスキルが要求される作業ですので、その仕事はプロに任せ、担当者はコンテンツ制作に注力することが可能です。
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