オウンドメディアの運営において、コンテンツマーケティングという施策は欠かせません。同施策は、自社サイトに記事を掲載すれば、取りあえず始めることは容易で、ハードルが低いというメリットはあります。しかし、闇雲に記事を公開すれば良い、というものではありません。
ご存じのように、コンテンツマーケティングは成果が現れるまでには、ある程度の時間を要します。何となく記事を配信するだけでは、コストに見合った施策の効果は得られず、息切れして施策は打ち切り、ということにもなりかねません。
そこで今回は、コンテンツマーケティングにおいて、記事コンテンツはどのような意味を持つのか、その種類も含めて、詳しくご紹介します。
この記事の目次
コンテンツマーケティングとは?
コンテンツマーケティングとは、どのような施策であるのか。
まずは、その定義と本質について確認しておきましょう。
コンテンツマーケティングの定義
コンテンツマーケティングの先進国であるアメリカにおいて、同施策の第一人者であり、コンテンツマーケティング・インスティテュートの創始者でもあるジョン・ビューリッジ氏は、コンテンツマーケティングの定義を次のように述べています。※1
「コンテンツマーケティングは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています」。
※1
https://contentmarketinginstitute.com/what-is-content-marketing/
コンテンツマーケティングとはどのような思索か
コンテンツマーケティングはマーケティングの一手法であり、マーケティングとは、「企業が顧客と良好な関係を築き、顧客が自社の製品やサービスを常に購入する仕組み」を作ることにほかなりません。
コンテンツマーケティングは、自社の製品やサービスを一方的に売り込むのではなく、ターゲットと見込んだ見込み客や顧客が興味を抱きそうなコンテンツを提供することから始まります。これを継続して行うことにより、自社に関心を持ってもらい、そこから次第に製品・サービスに目を向けさせ、最終的には購買行動を取らせることが目的なのです。
P&G(プロクターアンドギャンブル)やマイクロソフト、シスコシステムズなど、世界的にも有名な大手企業が、こぞってコンテンツマーケティングを活用し、成果を上げています。これらの企業がコンテンツマーケティングを利用する理由として、売り上げ数値の増加、コスト削減のほかに、「企業に忠誠心を抱く、良好な顧客を獲得できる」ことを挙げています。
この「企業に忠誠心を抱く良好な顧客」とは、マーケティングの本質で触れたように、企業と良好な関係を築き、その企業の製品やサービスを常に購入する人たちということになります。
コンテンツマーケティングにおけるコンテンツの種類
コンテンツマーケティングを実施する上で、重要になるのが「どのようなコンテンツを作るか」ということです。ただ、これを考える前に、コンテンツの種類について理解しておくことが大切です。
コンテンツには、以下のような種類があります。
記事コンテンツ
オウンドメディアの運営において、検索結果の上位に表示されることは重要なポイントです。折角、良質なコンテンツをサイトに掲載しても、ユーザーに見てもらえなければ意味はありません。検索結果からの自然流入を増やすことにより、1人でも多くのユーザーに、コンテンツに目を止めてもらうことが求められます。検索エンジンは、文字情報のみを認識し、そのサイトがユーザーにとって有益なものであるかを判断します。従って、文字ベースの記事は、第一に用意しなければならないコンテンツとなります。
動画
オウンドメディアにおけるコンテンツは、ブログ記事が主流ですが、昨今では動画の活用が目立つようになりました。文字や画像のみのブログ記事に比べて、動画は動きに加えて音声による訴求力もあり、商品の使用法や事例などを、分かりやすく伝えることが可能です。
文章を書けばコンテンツとして成立する記事とは違い、確かに動画は作成するのに時間と手間がかかります。しかも、より良質なものにするには、収録した後に編集作業も必要です。しかし一旦作成してしまえば、自社サイトで公開することはもちろん、YouTubeなどの動画サイトで配信することもできます。Twitterで発信すれば、内容に興味を持ったユーザーに拡散してもらえる可能性もあります。
サイトへの流入経路は、検索結果を経たものばかりではありません。動画を閲覧したユーザーは、ダイレクトに自社サイトへ訪問してくれるでしょう。
より強いインパクトで、自社や自社製品・サービスのイメージを植え付けるには、動画は格好のコンテンツといえるでしょう。
ランディングページ
ランディングページ=Landing Pageとは、直訳すると、「最初に着地するページ」を意味します。検索エンジンや被リンク、Web広告を介してサイトに訪れたユーザーが、最初に閲覧するページを指します。問い合わせや資料の申し込みなど、ユーザーに何らかのアクションを起こさせる目的で、商品やサービスの紹介を1ページにまとめたものです。
一般的な企業のコーポレートサイトとは異なり、訪問者に最終的なCV=コンバージョンを促すことを意識して作られています。そのために、デザインやボタンの位置など、離脱者を少なく抑えるための工夫が凝らされているが特徴です。
ホワイトペーパー
サイトへの訪問者が、何らかの課題を抱え、解決策を求めている場合、ホワイトペーパーは、リード=見込み客をホットな顧客へと変貌させる有力なアイテムとなり得ます。内容は、サイトでは伝えきれない製品・サービスの詳細な説明や、利用することによりどのようなメリットが得られるのか、あるいは実際の導入事例、独自に実施したアンケート調査など、多岐に渡ります。
ホワイトペーパーをダウンロードするには、個人情報の入力が必須であるため、得られた属性をもとに、メールマガジンを定期的に配信したり、リスト化してインサイドセールス部門に引き渡すなど、次に展開へ繋げることができるのです。
インフォグラフィック
インフォグラフィックとは、データや情報を、イラストや図を用いて、分かりやすく表現したものを指します。文字ベースの記事は、ある程度読み込まないと内容を理解できませんが、インフォグラフィックでは視覚に訴えるため、情報を一目で伝えることができるのです。
種類としては、イラストを使用して物事や状況を説明するピクトグラムやダイヤグラム、相関図やフローチャート、年表などがあります。
コンテンツマーケティングの記事コンテンツのパターン
ここからは、SEO対策には欠かせない、記事コンテンツについて、もう少し詳しく考察してみましょう。
消費者の行動パターンを表す「AISAS」理論
マーケティングでは、消費者の購買決定プロセスをいくつかに分類し、それぞれのステージにおいてどのような働きかけが有効か、理論化しています。
古くは、アメリカの学者である、ローランド・ホール氏が提唱した「AIDMA」理論が挙げられます。消費者は、「Attention=注意」、「Interest=関心」、「Desire=欲求」、「Memory=記憶」、「Action=行動」の順に購買行動へと至ります。
しかし、インターネットの普及とともに、消費者の意思決定プロセスは変化を遂げました。電通が理論化した「AISAS」では、「Attention=注意」、「Interest=関心」、「Search=検索」、「Action=行動」、「Share=共有」という順番になりました。消費者は、情報収集と情報拡散において、インターネット検索とSNS利用を通して大きな力を得たのです。
顧客が購買決定プロセスにおいて、どの段階にいるかを理解することにより、顧客の状況に応じたコミュニケーション戦略を取ることができるようになりました。コンテンツマーケティングにおいても、この流れに沿ったコンテンツの作成が望まれます。
Attention=注意
自社や自社製品・サービスの存在が、消費者に認知されていない段階では、まず彼らの注意を引かなければなりません。この場合、あまり積極的に売り込みをかけたのでは、消費者にはかえって敬遠されてしまうでしょう。
例えば、電動アシスト自転車に興味を持つ、子育て世代の専業主婦がいるとしましょう。彼女は街中で、他の子連れの主婦が、電動アシスト自転車に乗り、登り坂を苦も無く走り去っていくのを目撃しました。「いいなぁ」と彼女はつぶやきました。こうも思いました、「私にも乗れるかしら?何か、難しそう」と。スマホを取り出すと、ますはネット検索です。
とにかく自分に使えるか否か、具体的な乗り方など、解説風の記事を探すかもしれません。
この注意を喚起する段階で、有効なコンテンツ記事は「How To 記事」です。
彼女はまだ、特定メーカーの商品を知りません。ですから、大雑把な商品の使い方や機能など、特定商品を知るきっかけとなる記事の作成が好ましいでしょう。
Interest=関心
電動アシスト自転車の乗り方や、バッテリーの充電方法など、商品の大まかな使い方を覚えた後、彼女が次に取った行動は、実際に市場に出回っている自転車の比較でした。検索キーワードは、「アシスタU STD フロンティアデラックス 比較」でしょうか。あるいは、「ビッケモブdd ステップクルーズe 比較」かもしれません。
いずれにせよ、このInterestの段階では、次第に購買意欲が高まりつつあります。それゆえに、検索者の意思に沿うように、「比較検討記事」が必要になるのです。自社の商品も取り混ぜて、他社の商品をいくつか並べ、機能や価格など、比較して解説するのです。
Search=検索
購買行動プロセスも、中盤に差しかかりました。
ここまでくると、検索者はようやく特定の商品に照準を定めます。そしてその商品について、もっと詳しく知りたいと思うようになるでしょう。AISASの「Search=検索」にあたります。上記の例でいえば、彼女は電動アシスト自転車「アシスタU STD」のデザインや、価格などが気に入り、この商品について、詳しく調べるでしょう。
検索キーワードは、「アシスタU STD 操作性」、「アシスタU STD バッテリーの持ち具合」などでしょうか。従ってこの段階では、用意するべき記事コンテンツは、「SEO対策記事」です。検索者は、具体的な企業名や商品名を使って調べようとしますから、積極的に検索結果の上位表示を狙いましょう。
ただ、このステージにおいては、まだ意欲的な販売姿勢を見せてはいけません。なぜなら検索者はまだ、購買の意思を固めたわけではなく、ひたすら商品についての詳細な情報を求めているに過ぎないからです。ここで露骨に売り込もうと意気込んでは、検索者はサイトから離脱してしまうでしょう。
Action=行動
電動アシスト自転車について、多くの情報を得て、商品について深く理解した彼女は、いよいよ「Action=行動」のステージへと進みます。行動とは、言うまでもなく購買行動です。
この段階までくれば、検索者は購買意思を固めているので、こちらは自社の商品を積極的にアピールします。このステージに相応しいコンテンツは、「ネイティブ広告型記事」です。
ネイティブ広告とは、本文記事の中に、宣伝内容を自然な形で盛り込んだものです。新聞や雑誌などの紙媒体でいえば、記事広告と呼ばれるものです。
AIDMA理論では、消費者が商品を購入した段階で、購買行動プロセスは終了します。しかし、AISAS理論ではそれで終わりません。
先ほど述べたように、インターネットの普及は消費者に、情報収集と情報発信の点で大きな変化をもたらしました。消費者はネット検索により、これまで接する機会のない膨大な情報を、指先一本で手に入れることが可能になりました。
そして情報発信においても、消費者は能動的に動くようになりました。SNSなどを介して、自らの体験や意見を拡散するようになったのです。
昨今では、商品やサービスを利用した消費者が、評価をTwitterでつぶやいたり、Instagramで発信するようになりました。また、商品レビューのサイトに、使用した感想を書き込む人も少なくありません。
このShareの段階では、記事コンテンツの読者は、既に自社の商品を購入した人たちが対象です。従って、「電動アシスト自転車のバッテリーを長持ちさせるコツ」など、自社の商品をより快適に利用してもらえるような、「お役立ち記事」が望ましいでしょう。これにより、ただの購入者を、自社の「ロイヤルカスタマー」へと昇華させることも可能です。
コンテンツマーケティングの成功は一朝一夕にはならず
コンテンツマーケティングという施策は、すぐに結果が出るような、即効性のあるものではありません。
ここまで読んでお分かりのように、読者の行動プロセスと歩幅を合わせ、そのステージに見合った記事コンテンツを作成し、提供しなければなりません。そのためには、記事コンテンツ作成後、どれだけ目的に近づけたか、効果測定を行う必要があります。
PDCAサイクルを小さく回しながら、記事の方向性を絶えず軌道修正していくことが重要になるのです。
まとめ:記事コンテンツの作成は、消費者の行動変容を見据えて行う
今回は、コンテンツマーケティングという施策において、記事コンテンツに焦点を当ててみました。
コンテンツマーケティングは、コンテンツにはいくつかの種類があります。検索エンジン対策にもなる、文字ベースの記事コンテンツ。画像の動きや、音声で訴えかける動画コンテンツ。サイトに訪問したユーザーが最初に閲覧するランディングページ。サイト内では伝えきれない情報を、個人情報と引き換えに読者に提供するホワイトペーパー。図やイラスト、グラフやピクトグラムなど、見る者へ視覚的に一目で情報を伝えることが可能なインフォグラフなどです。
記事コンテンツの作成においては、消費者の購買プロセスを理解し、各ステージに合わせた内容を考慮することが何よりも重要になります。
記事コンテンツは、社内で商品・サービスに精通する社員が作成するパターンと、外部のコンテンツ制作会社に委託する場合とがあります。商品・サービスについて熟知している人間が記事を書く方が、より詳細な情報は伝わりますが、時と場合によっては、専門的過ぎて偏った内容になる恐れもあります。
外部のプロに依頼する際は、記事の執筆に長けたライターを抱え、資格を有した専門家の監修までを請け負う会社、SEO対策までをコンサルする企業など様々です。当然ですが、提供するサービス項目が増えるほど、費用も高額になりますので、自社の目的に合った業者を選択するようにしてください。
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