新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、企業はリモートワーク導入に向けた対応を迫られています。4月7日に発令された政府の「緊急事態宣言」は、その後、5月25日をもって全国で解除されました。しかし、新型コロナウィルスの流行は完全に終息したわけではなく、「アフターコロナ」を見据えた新たな働き方を模索する動きが広まっています。
日立製作所は2020年5月26日、新型コロナウィルスが終息した後も在宅勤務を継続し、週に2~3日の出社でも効率的に働けるように、人事制度を見直す旨の発表を行いました。※1
新型コロナの感染が世界規模で拡大し、経済にも深刻な影を落としてから約2カ月が経過しようとしています。十分に準備が整わない中で、なかば見切り発車の状態でリモートワークへ移行した企業も少なくないでしょう。リモートワークを常態化し、理想的な働き方を追求する上で、改めてリモートワークを見つめ直すことは重要ではないでしょうか。
今回は、リモートワークとは何か、また導入することによる効果と、成功させるためのポイントについて解説します。
※1 2020年5月27日付 日本経済新聞・朝刊
この記事の目次
リモートワーク・テレワーク・在宅勤務 何が違う?
リモートワークを導入する際、誰もが抱く疑問は、「リモートワークとテレワーク、それに在宅勤務。何が違うの?」というものでした。ここでは、今さらながら、リモートワークとテレワーク、在宅勤務それぞれの違いについて再確認しておきましょう。
リモートワーク
「リモートワーク」は、「remote=離れて」と「work=働く」とを合わせた造語で、拠点となるオフィスを離れ、移動中の車内やカフェなどを利用して、場所や時間にとらわれずに働くことです。IT関連のエンジニアや、クリエイティブ関連のデザイナーなどが、組織に属さずフリーランスで働くことを指す言葉として使われることが多いようです。きちんとした言葉の定義はなく、テレワークと混同されることがしばしばです。
テレワーク
「テレワーク」とは、「tele=遠く」と「work=働く」という言葉を合わせた造語です。こちらは、一般社団法人日本テレワーク協会※2が次のように定義しています。
「テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き片」と定めています。リモートワークと何が違うのか、と思われるでしょうが、同協会ではテレワークをさらに2つに区分し、特徴付けています。
<雇用型テレワーク>
企業に勤務する就労者が行うテレワークを指します。
・在宅勤務
パソコンや資料などを自宅に持ち込み、就業場所とする働き方です。
・モバイルワーク
オフィスや施設に依存することなく、いつでもどこでも仕事が可能な状態を指します。
・施設利用型
サテライトオフィスやテレワークセンター、などを就労場所とする働き方です。
<自営型テレワーク>
小規模事業者や、個人事業主などが行うテレワークです。
・SOHO
独立自営の度合いが高く、主に専業性が高い仕事を指します。例えば、フリーランスで働くエンジニアやデザイナーなどです。
・内職副業型勤務
独立自営の度合いが低く、特殊技能を必要とせず、他の人でも容易に代わることができる仕事を行うことです。例えば、主婦が空き時間を利用して行う内職などが挙げられます。
※2一般社団法人日本テレワーク協会
在宅勤務
前述したように、在宅勤務はテレワークの一形態であり、就業場所を自宅に限定した働き方です。本来は場所を選ばないテレワークですが、外出自粛が奨励されて以降、カフェや公共の場所でモバイルワークすることが、はばかられる風潮がありました。そうした中で、テレワーク=在宅勤務という捉え方が、定着したように思われます。
リモートワークの導入効果
では、リモートワークを導入することで、業務にどのような効果が得られるのでしょうか。
総務省は、「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」※3の中で、リモートワークの効果を、以下の4項目を挙げています。
生産性の向上
リモートワークの導入に際しては、業務内容を再確認し、作業フローの見直しや紙資料の電子化などが求められます。リモートワークの導入をきっかけとして、業務効率の改善を促す効果があります。また、在宅勤務やサテライトオフィス勤務の場合は、資料作成や企画立案などの作業に専念させることが重要です。そのためには、割込み作業などを発生させないなど、業務の運用方法を再検討することが望まれます。これにより、従業員1人1人の生産性が向上します。在宅勤務により、不要な移動時間が削減され、会議や報告に要する残業を発生させない効果も期待できます。
外部環境変化への対応
グローバル化の進展により、海外企業との連携が日常になりつつあります。時差のある海外企業とのやり取りも、リモートワークを活用することにより、深夜残業や早朝勤務を行わなくても対応できるようになります。また、変化が激しいビジネス環境において、旧態依然とした企業文化に固執していると、時代の波に乗り遅れてしまうことにもなりかねません。リモートワークへの移行をきっかけとして、組織風土の改革を行い、制度や仕組みを刷新することで、外部環境に順応できる企業の体質改善を促す効果が得られます。さらに、例えば北海道と沖縄など、離れた拠点を抱える企業は、リモートワークを活用することにより、コミュニケーションを促進させ、業務効率化を加速させることができるでしょう。
人材確保
少子高齢化を背景とした労働人口の減少により、企業は人材確保に努めなければなりません。これまでは、子育てや介護などで、優秀な従業員が離職を余儀なくされてきました。リモートワークにより、時間や場所に縛られない働き方が実現されれば、育児や親の介護などによる離職を防ぐことができるようになるでしょう。また、リモートワークを導入している企業であることは、従業員の働きやすさを重視し、ワークライフバランスの実現を目指しているという、前向きな姿勢を示しています。これは内部的にみると、従業員の企業への信頼感を醸成することになり、人材の流出を低減させる効果があります。外部的には、従業員を大切にする企業であるとのイメージにつながり、採用力を強化することにもなります。
業務継続(BCP)対応
自然災害や事故、場合によってはテロ行為などで、システムダウンや公共交通機関の麻痺など、企業活動が妨げられることを想定し、日頃から準備しておかなければなりません。不慮の事態が発生し、公共交通機関が機能しなくなり、停電などでシステムが停止しても、リモートワークの遂行により、事業を継続させることが可能になります。まさに、今回の新型コロナウィルスの脅威に対し、リモートワークを実施することで、感染拡大を防ぐ一助にもなりました。
※3 総務省「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000616262.pdf
リモートワークを成功させるために必要なこと
新型コロナウィルス禍の影響により、にわかに拡大したリモートワークですが、慣れない勤務形態に戸惑う声も聞かれます。その1つに挙げられるのが、従業員の評価です。在宅勤務により部下の仕事ぶりが見えず、評価に悩む上司は多いようです。社内で部下の働く様子が見えていれば、勤怠を管理することは容易ですが、リモートワークで働くとなるとそうもいきません。成果だけで評価するべきとの意見もありますが、それだけでは従業員のやる気を継続させるには限界があります。仕事を完遂するまでのプロセスも、評価対象とすることが求められます。
それには、社員に日々の業務内容と、成果を報告させることが重要です。毎日が無理であれば、少なくとも週に1回、就業状況を部下に報告させ、上司がコメント付きで評価するのです。部下は遂行した業務を上司に承認してもらうことで、自分の仕事の仕方が正しいものであることを確認できます。これにより、目標に向かって仕事をしようというモチベーションにも繋がります。
社員の勤務状況を管理するために、ウェブカメラを常時作動させることを義務付けている企業もあります。しかしこれは、はなから社員を信用していないという、上司の懐疑的な姿勢を匂わせるものであり、かえってやる気をそいでしまうでしょう。
では上司はなるべく口を出さず、社員が自主的に報告してくるまで待つべきか、というとそうとも言い切れません。リモートワークは確かに、社員の自主性にゆだねることは大切です。ただ、人間というものは、あまり放っておかれると、孤独にかられてしまうものです。上司は社員1人1人の働いている環境を頭に入れ、チャットなどを用いて時々、「声掛け」してやることが望まれます。リモートワークを成功させるには、社員への信頼感をもとに、自社なりの評価制度を構築することが大切です。
まとめ:新しい働き方のスタンダードとして注目されるリモートワーク
新型コロナウィルス禍により、急速に社会の注目が集まったリモートワークですが、まだ全社的に浸透している企業は少ないようです。
今回は、今さら聞けない、リモートワークとは何かと、導入することによる効果、リモートワークを成功に導く上で必要なことについて解説しました。
今後、新型コロナウィルスが終息し、「新常態」が模索されていくでしょう。働き方の新しいスタンダードとして、リモートワークの存在はこれからも高まっていくことは明らかです。
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