リモートワークのメリット・デメリットとは?在宅勤務を導入する上での注意点を解説

PCを開いて窓の外を見上げる女性


新型コロナウィルスの感染拡大の防止を目的に、政府は4月7日に東京都をはじめとした7都道府県に「緊急事態宣言」を発出してから1カ月半が経過しました。その間に対象地域は全国に拡大し、政府はさらに感染を抑え込む観点から、企業に向けてリモートワークや在宅勤務の導入を強く要請してきました。
5月25日現在、緊急事態宣言は全国的に解除されました。経済界では早くも「コロナ後」を見すえて、新たな働き方を模索する動きが広まっています。リモートワーク・在宅勤務は、新しい働き方を探る上で一つの指針を与えるワークスタイルと言えるでしょう。
そこで今回は、リモートワークについて、企業の現在の導入状況を概観した上で、リモートワークに移行することにより、どのようなメリット、デメリットがあるか、改めて考えてみます。

この記事の目次

リモートワークの導入状況


株式会社東京商工リサーチが、2020年4月に公表した「新型コロナウィルスに関するアンケート調査」※1によると、リモートワーク・在宅勤務を実施したと回答した企業は、17,340社中4,402社で全体の約25.3%でした。また、規模別に見ると、大手企業(資本金1億円以上)の約48.0%が実施しているのに対し、中小企業(資本金1億円未満)で実施している企業は全体の約20.9%で、大手企業の半分以下という結果が出ました。これは大手企業に比べて中小企業は、社内におけるインフラの整備及び人員の不足が理由に挙げられます。
※1株式会社東京商工リサーチ
「新型コロナウィルスに関するアンケート調査」
https://img03.en25.com/Web/TSR/%7B95f35b4a-3811-48b8-adc1-0f238c787b0c%7D_20200410_TSRsurvey_CoronaVirus.pdf

リモートワーク・テレワーク それぞれの特徴


ところであなたは、「リモートワーク」、「テレワーク」の2つの違いについてご存知でしょうか。しばしば混同されますが、それぞれ異なる特徴を持つ働き方です。

リモートワークとは?その特徴について

ではまず、リモートワークからご説明しましょう。
「リモートワーク」とは、「remote=離れる」と「work=働く」とを合わせた造語です。
拠点とするオフィスに出社せずに、勤務先から離れた場所で仕事をする働き方です。場所や時間にとらわれずに、自由に働けるリモートワークは、企業や労働者からも注目を集めている勤務形態です。リモートワークを実施するには、情報通信技術(ICT)をうまく活用して、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを用いることが求められます。従って、リモートワークを初めて導入するには、コミュニケーションの方法やセキュリティ面、ネットワーク環境の整備などが必要になります。

テレワークとは?

次に「テレワーク」ですが、「tele=離れる」と「work=働く」とを合体させた造語であり、
こちらは総務省が、「ICTを活用し、場所や時間を有効利用して柔軟に働くこと」と定めています。「リモートワークと何が違うの?」と思われますよね。総務省では、テレワークを以下のようにさらに分類しています。
・雇用型テレワーク
主に企業に勤務する被雇用者が行うテレワークを指します。自宅で就業する在宅勤務、施設にしばられずにいつでも働けるモバイルワーク、サテライスオフィス・テレワークセンター・スポットオフィスなどで就業する施設利用型勤務、の3つに分けられます。
・自営型テレワーク
個人事業主や、小規模事業者などが行うテレワークをこう呼びます。そこからさらに分類され、専業性が高い仕事を行い、独立自営の色合いが濃いSOHOと、例えば主婦などが空いた時間を利用して簡単な仕事を行うなど、独立自営の意味合いが弱い内職副業型勤務とに分かれます。

リモートワークとテレワーク どちらの呼称を使えばいい?

ここまで読まれた方は、「どちらの名称を使えばいいのかな」と首をかしげる向きもおありでしょう。
働き方の形態において、両者に大きな違いはありません。ただリモートワークは、網羅する範囲が組織に所属して仕事を行う被雇用者を主としているのに対し、テレワークは企業に勤務する被雇用者から、ITエンジニアなど、技能を活かしてフリーランスで働くワーカーまでをも含む点が異なります。
また、政府系機関やシンクタンクなどのサイトではテレワークを、IT系の企業サイトではリモートワークを多く目にします。あまり明確な理由があってのことではないようですが、政府系機関が公表する資料ではテレワークが多用されているようです。このサイトでは、政府公表のデータをしばしば引用していますので、便宜上、リモートワークとテレワークを同義に扱います。

リモートワークを導入するメリット

総務省では2019年5月31日、企業や世帯に対して情報通信サービスの利用状況について調査した、「通信利用動向調査」※2を公表しています。
それによると、テレワークの導入目的を問われ、全体の約56.1%が「定型的業務の効率性の向上」と回答しています。次に「勤務者の移動時間の短縮」と答えた人が約48.5%、「身障者や高齢者、介護・育児中の社員などの通勤困難者への対応」と答えた人が約26.0%でした。その後には、約21.7%の「勤務者にゆとりと健康的な生活の実現」、約18.2%の「人材の雇用確保と流出の防止」が続きます。
また、リモートワークを導入した企業のうち、リモートワーク導入の効果が、「非常にあった」あるいは「ある程度効果があった」と回答した会社の割合は、全体の81.6%にものぼりました。
※2総務省「通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/190531_1.pdf

リモートワーク導入メリット:労働生産性の向上

総務省が発表した「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」※3によると、テレワーク導入と1社あたりの労働生産性※4、を見ると、「テレワークを導入していない企業」が599万円であるのに対し、「テレワークを導入している企業」は957万円と、1.6倍もの開きがありました。また、テレワークがもたらす効果として、テレワークを積極的に導入している企業の約6割以上が「労働時間の減少」と答えています。リモートワークに移行することで、効率性を向上させて仕事に集中できるため、労働時間の短縮に結びついています。
※3総務省「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」

※4労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数

リモートワーク導入メリット:勤務者の移動時間の短縮

リモートワークを導入して、一番目に見えるメリットが、通勤時間が短縮できる点でしょう。リモートワークの一形態である在宅勤務では、自宅が勤務場所となります。就労者は会社まで身体を運ぶ時間が節約できるため、有効的に使える時間が増えます。また企業の側では、毎月固定費として計上していた交通費が大幅に削減できるため、人件費のコストカットに大きく貢献しています。

リモートワーク導入メリット:身障者や高齢者、介護・育児中の社員などの通勤困難者への対応

社員の中には、身体的にハンディキャップのある方、あるいは高齢の方は、毎日の出勤を苦痛に感じることは多いはずです。リモートワークで働ければ、不要な負荷が身体にかからないため、勤務を継続させることができるでしょう。また、育児を抱えた女性や、高齢で介護が必要な親のいる就労者は、これまで常勤で働くことができずに離職を余儀なくされていました。しかし、リモートワークで働くことが可能であれば、生産性を落とさずに育児や介護と仕事とを両立させることができるでしょう。

リモートワーク導入のメリット:勤務者にゆとりと健康的な生活の実現

例えば勤務時間が朝9時から夕方の5時までとすると、在宅勤務であれば、就労時間後は、子どもの保育園のお迎えに行ったり、介護であれば病院や施設に付き添ったりと、これまでは難しかった時間の使い方が可能になります。プライベートで使える時間が増えれば、社員は心身ともに健康を維持し、ベストな状態で仕事に取り組むことができ、ひいては生産性の向上につながります。

リモートワーク導入のメリット:人材の雇用確保と流出の防止

日経HR社が2018年8月に実施した「働き方改革に関する意識調査」※5において、「転職活動で応募する企業を選ぶとき、転職志望度が上がる制度は?」との質問に対し、「テレワーク」と回答した人の割合は全体の49.5%に達しています。優秀な人材の確保は、事業が存続する上で欠かせませんが、これまでは会社に出社することが前提だったため、地理的な制約のために採用できないケースは多くありました。リモートワークが当たり前の職場になれば、地方はおろか、海外からも社員を募ることができるようになるでしょう。
※5日経HR社「働き方改革に関する意識調査」

リモートワーク適用に伴うデメリット


前述した総務省の「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」によると、「テレワークの津入の主な課題」として、「情報セキュリティが心配」、「社内コミュニケーションに不安を感じる」、「適切な労務管理が困難」という項目を挙げています。

リモートワーク導入のデメリット:情報セキュリティが心配

総務省の「通信利用動向調査」では、「情報通信ネットワークに対するセキュリティ被害と対応の状況」についての調査では過去1年間に、「何らかの被害を受けた」と回答した企業が全体の約55.6%で、被害の内容は「ウイルスを発見又は感染」が46.9%と最も高い結果が出ました。
セキュリティについては、「何らかの対策を講じている」と答えた企業は約97.8%で、内訳は「パソコンなどの端末にウイルス対策プログラムを導入」した企業が約82.9%、次いで「サーバにウイルス対策プログラムを導入」した企業が約61.0%、「ID・パスワードによるアクセス制限」を行っている企業が約51.6%であることがわかりました。リモートワークには、ICT環境が必須であるため、リモートワーク導入企業はセキュリティに対する意識が高いことが見て取れます。

リモートワーク導入のデメリット:社内コミュニケーションに不安を感じる

リモートワークに移行し、ICT環境が整うと、沿革にいる人やプロジェクトごとにチーム内でのコミュニケーションを密に図ることは、今後促進されるでしょう。
その反面、対面によるコミュニケーションが減る分、生産性の低下を懸念する可能性は否めません。特にクリエイティブ関連の仕事では、対面によるブレーンストーミングなど、人と人との濃密な関わり合いが新たなアイディアを生むこともあり、リモートワークと対面による作業との使い分けが必要になるかもしれません。

リモートワーク導入のデメリット:適切な労務管理が困難

リモートワークは、基本的には自宅やサテライトオフィスなどで、1人で作業を行います。従って、上司や同僚の目が届きにくい場所で仕事をするので、実際に業務に従事しているか、勤怠管理が難しい側面があります。そうであると、成果物でしか業務実態を把握できないため、人事評価がしにくく、新たな評価基準が求められます。

まとめ:導入する目的を明確にして全社で共有することが重要


今回は、リモートワークの導入状況を踏まえ、導入することによるメリット、デメリットについて解説しました。
2020年4月の段階で、リモートワークに踏み切った企業は全体の約25%で、必ずしも高いとは言えません。また、大手企業の約48.0%が実施しているのに対し、中小企業では、整備・人員不足から、リモートワークへ移行した企業は全体の約20.9%にとどまり、大手企業との格差が鮮明になりました。
リモートワークを導入することにより、効率性の向上、勤務者の移動時間の短縮、通勤困難者への柔軟な対応を可能にし、就労者のワークライフバランスを実現し、優秀な人材の雇用確保といったメリットがあります。その反面、情報セキュリティの脆弱性への懸念、社内コミュニケーションに対する不安、労務管理の困難さといったデメリットもあります。
リモートワークを一気呵成に、全社的に導入するには困難が生じます。部門単位でスタートし、その効果や不具合を検証することが大切です。それらを積み重ね、リモートワークを導入する目的を明確にし、全社で共通認識することが何よりも大切です。

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