コンテンツマーケティングを成功に導く手順とは?/効果的な方法・手法を解説

人差し指を差し出すスーツ姿の男 目の前に緑の葉っぱを乗せた積み木

2000年を境にして、インターネットの社会やビジネスシーンへの浸透と共に、消費者や企業を取り巻く環境も激しく変化しました。スマートフォンなどのITツールの普及に伴い、今や小学生から高齢者まで、SNSやWEBサイトなどの利用は、生活の一部として溶け込んでいます。

このような環境の変化の中で、従来から主流だった「プッシュ型マーケティング」は限界を迎え、代わりに、消費者に能動的に行動してもらい、見つけてもらうマーケティング、言い換えると「プル型マーケティング」に注目が集まるようになりました。このプル型マーケティングこそ、「コンテンツマーケティング」を語る上で欠かせないコンセプトを含んでいます。

つまり、これまでのように、企業起点のPR情報を一方的に発信するのではなく、コンテンツの力で、顧客との関係性を良好に保つことが最も重要であり、それこそが昨今、ビジネスにおいても存在感を高める理由でもあります。

マーケティングの先進国であるアメリカでは2010年頃から、日本でも2014年頃からコンテンツマーケティングに取り組む企業は増加の一途を辿り、今ではリアル・ネット上を問わず、コンテンツと呼ばれるものは世に溢れている状況です。このような中、これからコンテンツマーケティングに取り組もうと目論む企業において、経営者や施策の担当者の中には、「今さらコンテンツマーケティングを始めても、折角作ったコンテンツが埋もれてしまうのでは?」との懸念を持たれる方も多いのではないでしょうか。

コンテンツマーケティングは比較的、新しいマーケティング手法であり、成功を収めるための正しい方法、メソッドのようなものはまだ確立されていません。企業の施策の目的や、ターゲットする顧客によって、コンテンツの内容も取るべき戦略も違ってくるためです。それだけに、「ユーザー目線で作られた有益なコンテンツ」を、きちんと練られた戦略により、届けるべき相手に配信できれば、施策の実践は、求める成果をもたらしてくれるでしょう。

そこで今回は、コンテンツマーケティングを実施するために、踏んでおくべき基本的な手順について、詳しく解説していきます。

この記事の目次

コンテンツマーケティングの目的を定める

コンテンツマーケティングも、一定の資金を投下し、期間を要して施策を実施する以上、期待される成果を上げる必要があります。この成果が、コンテンツマーケティングの目的ということになりますが、企業の事業活動の一環である限り、突き詰めれば「売上げ数字の向上」に他なりません。

しかしこれでは、余りに漠然としていて、足元で何から着手していいのか、戸惑ってしまう担当者も少なくないでしょう。そこで、あえてビジネスゴールを設定し、当座の目標とすることにより、行動指針を設けてどの方向に向けて施策を展開すれば良いのかが、自ずと明らかになります。

ビジネスゴールを定める

これからコンテンツマーケティングの実行に着手する企業は、新たな航海に乗り出す船に例えることができるでしょう。未開の海に漕ぎ出そうとした時、まず必要なものは、「目的地」ではないでしょうか。この目的地が、「ビジネスゴール」ということになります。

マーケターの間で、コンテンツマーケティングという用語が飛び交っていた頃、「マーケティングの流行だから」、あるいは「SEOに効くらしい」といった動機で、安易にオウンドメディアを起ち上げた企業は、枚挙にいとまがありません。
これらの企業のほとんどは、ビジネスゴールを定めずに動き始めた結果、施策の着地点が見えず、息切れして失敗に追い込まれてしまうケースが多いようです。

また、ビジネスゴールが明確になっていないと、コンテンツの作成自体が目的になってしまいかねません。あるいは、既にコンテンツマーケティングを実施しているけれども、目に見える効果が確認できていない企業が、戦略の見直しを図りたいと思っても、施策の落としどころをはっきりさせておかないと、どの方向に向かって戦略を建て直せば良いのかさえ分かりません。

ビジネスゴールを設定するには?

ビジネスゴールを設定する際、よく用いられる方法に、「SMARTの法則」と呼ばれるコンセプトが存在します。同法則は、George・T・Doran 氏が発表した論文、「There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and Objectives 」※1の中で初めて提唱された理論です。「SMART」とは、「Specific=具体的な」、「Measurable=測定可能な」、「Assignable=明確な」、「Realistic=現実的な」、「Time-related=時間に関連する」の頭文字を取ったものです。

上記の5つの要素は、目標設定に取り入れることにより、目標達成する確率が高まると認識されています。同法則はその後、多くのコンサルタントや著名人に採用され、場合によっては、5つの要素の幾つかは別の言葉に置き換えられ、洗練されていきました。

本稿では、あくまで原文に忠実に従い、論文中で使用されている言語に注目しました。

a. Specific

Specific―target a specific area for improvement.
翻訳:改善するために、具体的な目標を定める。

事業を成功へと導くためには、抽象的ではなく、より具体的な目標の設定が重要であることを説いています。George・T・Doran 氏は、目標をクリアした時のイメージが、リアルに共有することができれば、企業や組織に属する人員のエンゲージメントは高まると認識しています。

b. Measurable

Measurable―quantify or at least suggest an indicator of progress.
翻訳:物事の進捗を定量化すること。あるいは少なくとも、進んでいる事を指し示すこと。

業務の進捗具合や、目標の達成率を測るために、数字を用いた目標の数値化(可視化)が欠かせません。また、進捗状況を可視化できれば、PDCAを効果的に回すことも可能です。具体的に定量化できる指標を用いて、「目標の達成のために、どれだけ実行できたか」、あるいは「実際の効果は、どの程度あったか」などを、実地に検証することが可能になるからです。

c. Assignable

Assignable―specify who will do it.
翻訳:誰が目標を達成するのか、明確にすること。

この「assignable」は、書物によっては、「achievable=達成可能な」に置き換えられています。原文では、誰が実際に目標を達成するのかを明確にし、責任の所在を明らかにすることが重要であると定めています。ただ、実行者が明確に定められていれば、目標の設定はより現実味を帯びますし、達成可能な目標の設定も、自ずと行われるでしょうから、要素の一部が置き換わっていても、さして支障はないようです。

d. Realistic

Realistic―state what results can realistically be achieved, given available resourced.
翻訳:与えられたリソースの範囲内で、現実的にどのような目標達成ができるかを述べること。

Realisticの意味は、「現実的な、実際的な、写実的な、リアルな」というものです。この文脈で言うなら、上記の「achievable=達成可能な」と被る部分があります。ただ、現実的な達成目標といっても、現状維持では意味がありません。少しでも進捗がうかがえる、挑戦的な目標の設定が望まれます。

e. Time-related

Time-related―specify when the result(s) can be achieved.
翻訳:結果がいつ達成されるのか、明確にすること。

いくら目標設定を明確にしても、だらだらと時間をかけていたのでは、投下してきた資金も人的リソースも、回収はおぼつかないでしょう。「施策の目標達成は、いついつまでに完了する」という、はっきりとしたタイムリミットが必要になります。

※1「There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and Objectives 」
https://community.mis.temple.edu/mis0855002fall2015/files/2015/10/S.M.A.R.T-Way-Management-Review.pdf

・ビジネスゴールの方向性を理解する

「SMARTの法則」により、具体的な目標の設定が難しい場合は、その一つ前のステップとして、大まかな分類に分け、方向性だけでも決めてみてはいかがでしょう。

ビジネスゴールの方向性に関しては、以下の4つがよく活用されています。先にも触れたように、最終的なゴールは売上や顧客獲得数の向上、成約率向上などが掲げられるのでしょうが、方向性としてはもう少し抽象的でも構いません。「どのような顧客に対し、どういう接点を持つべきか」を念頭に置くことが望まれます。

a.ブランドの認知

その商品・サービスの購入に際して、ブランドの認知が大きな影響を与える場合。「グッチ」や「シャネル」など、企業イメージが商品・サービスに付加価値を与える時、企業を好ましく認知してもらうことが、最初の目標となります。

b.ブランドロイヤリティ

かつてのアップル商品のように、趣味性の高い商品においては、既存顧客が自社や、取り扱う商品・サービスについて、ある種の愛着を感じる場合があります。そのような既存顧客を、「ファン」と呼びますが、この「既存顧客をファン化する」ことを目的に設定するケースもあり、SNSを介した情報の拡散という、「口コミ効果」を狙ったものです。

c.カスタマーエデュケーション

顧客に対し、自社や商品・サービスについて、正しい情報を伝えることを目標設定にしています。これはB to B ビジネスにおいて、購入までの検討期間が長い場合、あるいはB to Cでも、不動産や一戸建て、保険や証券など、比較的高額な商品・サービスの場合に、有効な目標設定です。

d.カスタマーエンゲージメント

B to Cビジネスにおいて、商材を日常で消費されるものに限定し、常に使ってもらうことで、自社に対する親しみと信頼性を築くことを目標設定にするケースです。例えば、「ユニクロ」や「GU」などは、シャツやデニムなどを消耗品と割り切って、価格を安価に設定することで、「普段使い」のイメージを消費者に浸透させました。

コンテンツマーケティングにおける戦略設定

ビジネスはよく、戦いに例えられます。
ビジネスでは、市場において競合他社が存在し、常に熾烈な競争に晒されています。その点では、実弾が飛び交う戦場と変わらない、真剣勝負と言えます。戦いにおいては、「戦略」という概念は重要な意味を持ちますが、ビジネスにおいても同様です。

辞書で「戦略」という言葉を引くと、「ある目的を達成するために、長期的な視野に立ち、持てる力や資源を有効活用するための総合的な技術」という答えが示されます。

この考えをコンテンツマーケティングに落とし込むと、「コンテンツの力で成果を出すにはどうするべきか」、あるいは「最低限のコストで効果を出すには何を省略するべきか」など、総合的な視点で、目的を達成するためのシナリオが戦略ということになります。

なぜ、コンテンツマーケティングには戦略が必要なのか?

コンテンツマーケティングも事業活動の一環ですから、決められた期間内に一定の成果が求められます。これを事業目的と呼びますが、一般的にはKGI=Key Goal Indicator、日本語に訳すと重要目標達成指数となります。

民間企業であれば、利益の追求が経営を存続・維持させる上での目標ですから、売り上げ向上が第一義です。ただ、コンテンツマーケティングにおけるKGIは、企業や組織により、様々に設定されています。すなわち、「自社のブランドを向上させる」、「年間売り上げを今より30%向上させる」、あるいは「新規の見込み顧客数を、あと300人増やす」など、具体的な数字で達成の度合いを測ることのできる指標です。

コンテンツマーケティングとは、KGI=到達点に至るまでの方法であり、KGIに辿り着くための手段が戦略ということになります。
ではなぜ、コンテンツマーケティングに戦略が必要なのでしょうか。それは、以下のような理由が挙げられます。

a.限られた経営資源を有効活用するため

コンテンツマーケティングは、目に見える効果を現れるまで、ある程度の時間を要する施策と言われています。事業を遂行するには、人、資金、時間など、全ての経営リソースを投下しなければなりません。経営者であれば誰でも、最小限のコストで、最大の効果を期待するのではないでしょうか。それには、事前に「この施策に何を期待するのか」というビジネス上のゴールを決め、そのゴールに到達するために、どの程度のリソースをどの施策につぎ込むか、という戦略が必要になるのです。

b.最適な顧客との接点を見極めるため

コンテンツマーケティングを実施する目的は、「顧客接点の最適化」とも言われています。自社にとっての見込み顧客、または既存顧客に対し、良質なコンテンツを継続して届けることにより、彼ら・彼女らとの良好な関係を構築することが重要なのです。

ただ、どんなに優れたコンテンツだとしても、作成して公開すればそれで終わり、というものではありません。彼ら・彼女らが有益と感じる情報を、タイミングよく提供することが必要になるのです。そのためのベストな方法が、「戦略」なのです。

c.組織内において、コンテンツマーケティングの方向性を共有するため

コンテンツマーケティングは、自社のターゲットがどのような課題を抱え、それを解決するためにどんなコンテンツが必要かを調査・解析し、コンテンツを作成して、正しい効果測定を行った上で、コンテンツの内容を修正していく、というサイクルを繰り返す企業活動です。この一連の行程を継続させるには、ある組織内においては、各行程の担当者を複数配置する必要があります。従って、しっかりと戦略を練り込んでおかないと、コンテンツの方向性がぶれ、定義で述べられているような、「価値のある一貫したコンテンツ」を作成・配布することができなくなってしまう恐れが生じるのです。

具体的な戦略設定の方法

ではここからは、具体的なコンテンツマーケティングの戦略設定について、順を追って見ていきましょう。

コンテンツマーケティングがマーケティングの一手法である以上、基本となる3C分析(customer=顧客、competitor=競合、company=自社)を行った上で、大まかに3つの手順を踏んで策定していきます。

戦略の設定1 誰に(WHO)

コンテンツマーケティングを、見込み顧客や顧客とのコミュニケーションという観点から論じるとき、まず「誰に=who」情報を伝えるのか、という所がすべての起点になります。ターゲットとなる顧客を明確にしておかないと、伝える情報の内容も伝え方も違ってくるからです。

ペルソナの設計

 

 

コンテンツマーケティングの目的は、ターゲットとする顧客に対して、価値のあるコンテンツを継続して提供することにより、自社の存在に気づいてもらい、最終的には自社の製品・サービスを購買してもらうことです。そこで大事な点は、自社のターゲットとは「誰」で、価値あるコンテンツとは「誰」にとってなのか、という疑問です。

自社の製品・サービスに価値を見出し、購入してくれる人物は誰なのか、を浮き彫りにする上で、大きな役割を果たすのが「ペルソナ」の設定です。

ペルソナとは、古典劇で役者が被る「仮面」を意味します。心理学では、「人の外的側面、自分の内面に潜む自分」と定義されています。そこから派生して、マーケティング用語では、「架空のユーザーの姿・人物のイメージ」と解釈されています。

ユーザーの年齢、性別、職業、収入、居住地など、数値化できる定量的なデータに加え、趣向や好み、悩みなど、数値化しにくい定性的なデータまで、あらゆる要素を盛り込み、血の通った人物像に仕上げることが肝要です。こうすることにより、「誰にどのようなコンテンツを、どんな方法で提供するべきか」が明確になります。

ペルソナの作り方(B to C ビジネス)

実際にペルソナを設定する方法について、解説します。但し、この項では、B to C ビジネスにおける、一般消費者を対象とします。B to B ビジネスにおけるペルソナについては、後述します。

まず、自社にとって一番身近な存在である、既存顧客に目を向けることです。ペルソナは、「自社にとっての理想的な顧客」という解釈が成り立つので、売り上げ数字から見て、上位2割に属する顧客、すなわち上位顧客と呼ばれる人たちからの意見を募ることが望ましいでしょう。

次に、白羽の矢を立てた顧客に、個別でのインタビューを申し入れます。インタビューの件数は、1人のペルソナに対して3~5件程度で十分です。

インタビュー項目は、数値化できるデータとできないデータ、つまり、定量的データと定性的データとに分けて行うと良いでしょう。

【定量的データ】
氏名/性別/年齢/学歴/職業/収入/未婚・既婚/家族構成/居住圏/リアルでの友人数/SNS上の友人数など。

【定性的データ】
趣味/習慣/休日の過ごし方/購読している新聞・雑誌/今抱えている悩み/好きなテレビ・ラジオ番組/好きなYoutubeチャンネル/好きな旅行先など。

このインタビューの目的は、「ターゲットとする顧客が誰で、購入に至るまでに必要な情報は何か」を探るためのものですから、質問項目を余り細かく用意しても意味がありません。また、設定するべきペルソナの人数ですが、これは自社で人数分の手法を用意できるか、つまり、資金や人的リソースをどの程度、施策に割けるかによります。最初は2~3人程度のペルソナで、スタートすれば十分でしょう。

そして、コンテンツマーケティングにおけるペルソナ設定の際に、インタビューで欠かせないことが2つあります。

1つは、自社の上位顧客が、当初、商品・サービスの認知時において、どの段階に位置していたか、という点です。これは以下のように、5段階に分類されます。

レベル1:自らのニーズにすら気付いていない。(潜在顧客)
レベル2:困っていることはあるが、どうやって解決していいか分からない。
レベル3:ニーズは認識しているが、自社の存在や商品・サービスについては、まだ知らない。
レベル4:自社の商品・サービスには気付いているが、他社との区別がつかない。
レベル5:自社の商品・サービスについてはよく知っているし、欲しいという気持ちはある。

そしてもう1つは、上位顧客が、「最初に自社の商品・サービスを利用したいと思ったきかっけ」と、「最終的に、自社の商品・サービスを購入するまでに必要だった情報は何か」を聞き出すことです。

前者は、ユーザーが抱える悩みは何だったか、あるいはこれまで使用してきた消費財が壊れたからなど、購入のきっかけとなる動機について、ヒアリングすることで明らかになるでしょう。

また後者であれば、商品・サービスを検討する上で、一番知りたかった情報は何か、どのようなキーワードで検索したか、を聞き出します。さらには、購入する際の基準、競合社にはないデザイン・機能・使い勝手・価格などの差別化ポイントについて、ヒアリングしておきましょう。

ペルソナの作り方 (B to B ビジネス)

B to C ビジネスでは、商品の購入時における意思決定者は個人です。従って、その個人の属性を細かく分析して、ペルソナ設計に活かすことで、有効なコンテンツを作成することが可能になります。

一方、B to B ビジネスにおいては、 買い手側は、企業などの組織体になります。購買時の意思決定に関しては、購入担当者だけではなく、上長や他部門の担当者など、複数の意見が交錯し、作用する場合がほとんどです。B to C ビジネスと比較すると、購入に関わる人数も増え、購買行動プロセスも複雑になります。ですから、企業のプロファイリングを検討する場合、個人が組織内でどこに配置されているかを考える必要があります。その上で、企業の構成を考慮して、キーマンとなる人物を特定するのです。

そこで活用したいのが、「ファーモグラフィックス」というデータです。ファーモグラフィクスとは、その企業の業種、企業規模、年間売上、従業員数、主要取引先など、会社案内や企業サイトで紹介されている「会社概要」と同程度の内容です。

B to B ビジネスにおいては、購入の目的は個人ではなく、組織の目的が重要視されます。加えて、購入に関与する意思決定者は複数人いるため、購買までのプロセスは複雑になるのです。そこで、この意思決定者をキーマンとして認識し、それぞれのペルソナを設定していくことです。

戦略の設定2 何を(WHAT)

コンテンツマーケティングを実践する上で、まず担当者を悩ませるのが、「何をコンテンツとして作成すればよいのか」ということです。そのコンテンツの内容は、誰をターゲットに据えるかで変わることは、既に述べたとおりです。

「誰を」を定めるために、ペルソナの設定を行い、その過程でインタビューしたことにより、ペルソナのニーズはある程度、把握することができます。次に、どのようなコンテンツを作ればよいか、より鮮明にイメージするためには、「何を」をさらに固めていく必要があります。それには、ヒアリングの中身をさらに深堀りしていくのが近道です。

ニーズの把握

営業活動においては、売り上げの成果を測る指針として、一般的には受注数や受注率が重要視されていることは、ご存じのとおりです。しかし、営業活動をさらに改善するためには、「失注案件」にも着目することが必要です。

営業をかけたにも関わらず、受注に至らなかった案件を失注案件と呼びますが、早い話が失敗例です。この失注案件を分析することにより、どこに成約できなかった原因があるのかを明らかにし、そこからの営業活動に反映することができるのです。

これは、コンテンツマーケティング施策においても同じことで、ユーザーが購入にまで至らなかった、いわば失敗例には、示唆に富んだ事実が隠れているものです。消費者の購買行動プロセスにおいて、当人が覚えているのは、商品を認識した時と、購入を決めた時ぐらいではないでしょうか。その間のプロセスは、覚えていても曖昧になっていることが多いものです。

その点、消費者が自社の商品・サービスを、一旦は購入しようと検討したものの、結局は購入しなかった、あるいは他社の商品・サービスを選んだという場合は、その理由については意外と鮮明に記憶していることが少なくありません。なぜなら、人間はネガティブな原因は、脳裏に刷り込まれやすいからです。「デザインが気に入らなかった」、「製品に望んだ機能が、組み込まれていなかった」、あるいは「価格が高い」、「他社製品の方が、コストパフォーマンスに優れていた」など、色々な声が聞かれることでしょう。ただ、その中には、十分に検討して他社に流れたのではなく、そもそも、商品を検討する基準ややり方を知らなかった、というケースも含まれているかもしれません。

もしそのような場合は、購入前に自社の商品・サービスと他社のそれとを、比較・検討するためのチェックリストを作成し、コンテンツとして公開する方策が考えられるでしょう。自社ではなく、他社の商品・サービスを選んだユーザーに対し、その理由を尋ねることで、自社の顧客が気付いていないニーズを発見できる可能性も、出てくるのではないでしょうか。

カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーとは、消費者が購買行動プロセスを辿る過程を、旅になぞらえて表現した、マーケティング手法の一部です。カスタマージャーニーマップは、その過程を左から右へと時系列に展開し、企業が意図した顧客体験を消費者に提供できているか、確認するために作られています。これを見れば、自社の見込み顧客が求めている情報が、適切なコンテンツ内容、媒体で伝わっているか、逆に出来ていなければ、どこに改善点があるのかを理解できます。

ここで気を付けておきたいのは、カスタマージャーニーの元となる、購買行動プロセスが時代と共に変化しているという事実です。

インターネットが登場するまでの、昭和から2000年はじめまでは、消費者は商品の情報を、テレビや新聞・雑誌などのマスメディアを経由して収集していました。
この当時は、消費者の購買行動は以下のようなプロセスを歩んでいました。

情報からその商品・サービスを認知する。(Attention)

商品を認知した消費者が、興味を持つ。(Interest)

その商品が欲しくなる。(Desire)

その企業のブランドや商品名を記憶する。(Memory)

鋼材行動を起こす。(Action)

この購買行動プロセスを、「AIDMA理論」と呼びます。

その後、2000年代に入り、インターネットが普及すると、消費者の生活は少なからず影響を受けました。特に、情報の収集と発信に関しては、従来と比較しても、大きな変化をもたらしました。それに伴い、消費者の購買行動も、下記のように変化を遂げています。

情報からその商品・サービスを認知する。(Attention)

商品を認知した消費者が、興味を持つ。(Interest)

消費者が、商品やサービスについて、ネット検索する。(Search)

購買行動を起こす。(Action)

購買した後、商品について情報発信・共有する。(Share)

自ずと、消費者の購買行動も変容し、このプロセスを「AISAS理論」と称しました。

AIDMA理論とAISAS理論とが、決定的に異なる点は、AIDMAでは、企業側は情報発信役で、消費者はその情報を受け取るだけの役割でした。これに対してAISASでは、消費者は検索(Search)と共有・拡散(Share)という、2つの強力な能力を手にすることにより、情報収集に関して、能動的な行動を取るようになったのです。これは、企業と消費者とは、互いに作用し合う、双方向的な関係になったことを意味しているのです。

P & G(プロクター・アンド・ギャンブル)は2004年に、「FMOT=エフモット」という理論を提唱しました。FMOTとは、「First Moment of Truth」の略で、日本語では「最初の瞬間」と」訳されますが、これは消費者が商品購入を決める最初の瞬間を指しています。同社は、「消費者は店頭で、目当ての商品が展示された陳列棚を見ると、最初の3~7秒でどの商品を買うかを決める」と論じており、消費者が今まさに商品を購入しようと決める瞬間を、FMOTと称したのです。

さらに2010年代には、インターネットの本格的な浸透と、ITツールの普及につれて、消費者の行動様式が大きく変貌します。Googleは、「ZMOT=ズィーモット」という、新たな顧客購買行動プロセスを提案しました。これは、「Zero Moment of Truth」の略で、「顧客は店舗に来てから何を買うかを決めるのではなく、インターネットで商品の情報を集め、店に来る前には、既に買うものを決めている」というマーケティング理論です。

「Moment of Truth」とは、「真実の瞬間」という意味であり、企業と顧客とが初めて接点を持ち、顧客が商品購入やブランドイメージを決定する瞬間のことを指しています。Googleの説く「Zero Moment」とは、P & G の「First Moment of Truth」を意識したものであることは、言わずもがなであり、この真実の瞬間は、インターネット社会では、顧客が来店するファーストアクションの前、すなわちゼロ段階で起きている、という主張です。

では、このZMOT理論に基づいた場合、競合社に勝ち抜くためには、顧客に対してどのような情報提供を行えばよいのでしょうか。

Googleが、買い物客5,000人に対し、12カテゴリーの商品に関して、独自に調査を行いました。※2 この調査報告書の中では、消費者が購入前に、どのように情報収集しているかが明らかにされています。

それによると、ZMOTにおいては、1位が全体の50%を占める「検索エンジンを活用して、オンラインで情報を探している」、2位が49%の「友人や家族と商品ついて話す」、3位が38%で「オンライン上の比較サイト」、36%が4位の「製品を作成した企業のサイトからの情報」、5位の31%「商品のレビューサイトや、商品を推奨する裏書」が続きました。

これらの調査結果から、購入前の消費者は、検索行為を行いながら、友人や家族などからの口コミ、比較サイトやメーカーサイト、商品レビューサイトなどから、活発に情報収集している状況が伺えます。そしてこの段階では、消費者は浅く広く情報収集しているため、商品を強く売り込むような姿勢ではなく、情報を集めるお手伝いをする感覚で伝えると良いでしょう。

※2 「WINNING TRUTH OF THE MOMENT」
https://ssl.gstatic.com/think/docs/2011-winning-zmot-ebook_research-studies.pdf

コンテンツの作成

「コンテンツとは何ですか?」と問われて、即答できる人はどのくらいいるでしょうか。

「コンテンツ」という言葉は、余りに広い意味で使用されているため、人によって解釈はまちまちです。ある人は、「テキストベースで、静止画像をあしらったブログ記事」と言うでしょうし、ある人は「動画や音声を駆使したメディア」と言うかもしれません。

しかし、コンテンツマーケティングにおけるコンテンツとは、元来、その形態ではなく、中身を指します。つまりは、ターゲット顧客が求める「情報」こそが、コンテンツの正体です。

コンテンツの種類

一口にコンテンツと言っても、様々な種類があります。
施策において成果を上げるためには、達成するべき目標に合わせて、最適なコンテンツを選択する必要があります。それには、あらゆるコンテンツの種類を理解しておくことが望ましいでしょう。

【コラム記事型コンテンツ】
コンテンツマーケティングのコンテンツでは、コラム記事型は最もスタンダードな形です。テキストベースのコラム記事は、誰でも容易に始めることができますし、目的に応じて書き分けることで、1つのテーマを幾つものコンテンツとして展開することが可能です。そしてこのコラム型は、さらに幾つかの形態に分類できます。

a.お役立ち系コラム

コラム記事型の中では、この「お役立ち系」は、多くの企業が採用しています。大半のユーザーは、自分が何かについて知りたいと思いついたら、まずインターネットの検索機能を使うでしょう。検索キーワードにヒットしたサイトを訪問し、求める情報が得られなければ、離脱して別のサイトへと移行してしまうでしょう。

しかし、そのサイトに、「お役立ち情報」が掲載されていたら、ユーザーは気に留めるかもしれません。コラム記事を一読してくれれば、それだけでも、来訪者のサイトでの滞在時間を稼ぐことができます。ユーザーがブックマークを付け、何度もサイトを訪れてくれればしめたものです。ユーザーに自社の存在を認知してもらい、取り扱う商品やサービスにも関心を持ってもらえれば、コンテンツの役割は十分に果たしたと言えるでしょう。

b.アンケート・調査系

消費者へオンラインリサーチを行い、アンケート調査の結果をコンテンツとして公開している企業サイトが、多く見られるようになりました。しっかりとした事実に裏付けられて書かれた記事は、読者からの信頼度も高く、注目を集めやすいコンテンツでもあります。

「Questant」※3や「Google フォーム」※4など、無料で提供されるテンプレートを使って、消費者からの意見を手軽に募ることが可能になりました。「自社の製品やサービスについて、どう思うか?」、あるいは「このような機能を追加してほしい」など、ユーザーの生の声を製品の開発に活かすことができます。
またユーザーに、独自に作成したアンケートに回答してもらい、その結果を集計・分析し、自社の意見を加えて公表することにより、コンテンツ記事として活用できます。

※3「Questant」
https://questant.jp/

※4「Google フォーム」
https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/

c.面白系・バズり型コラム

インターネットの社会への浸透と、ITツールの普及と共に、消費者の情報発信力は劇的に強化されました。

自分が「面白い」、あるいは「価値がある」と思った話題は、SNSなどを介して、すぐに拡散できるようになりました。あるトピックが、インターネット上の口コミを介して、あらゆるメディアで取り上げられる様子は、「バズる」と呼ばれています。

コラム記事型コンテンツの中でも、SNSでバズることを想定して作られたものは、「バズりコンテンツ」と称されます。自社の公開したコンテンツが、SNSでバズらせることができれば、さして広告費をかけずに情報拡散することができます。また、拡散された情報を読んだ他のユーザーが、興味本位でサイトに訪問してくることもあり得ます。面白系・バズり型コラムは、企業が意図した情報の拡散以外にも、サイトへの自然流入を増加させる効果が見込めるコンテンツなのです

【コラム型以外のコンテンツ】
オウンドメディアで公開するコンテンツは、従来は文章ベースのコラム記事が基本でした。ただ昨今では、コンテンツの形態は、コラム型だけではなく、動画や音声など、色々な種類が現れています。

a.ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、ダウンロード型コンテンツの代表格です。
企業がある課題を抱え、打開策を模索している担当者に対し、自社の商品・サービスを導入することにより、どのように課題を解決できるかを、サイトに書かれた内容よりも、さらに技術的に詳しく、多くのボリュームで書かれた報告書と言えるでしょう。

自社製品の導入事例、商品の使い方の解説、あるいは、自社で独自に行ったアンケートや調査の結果など、多岐に渡ります。

ホワイトペーパーは、自社が扱う商品・サービスについて、開発者や技術担当者の目線で解説したものも多く、サイト上では公開しきれないほどの文章量と、より専門的な内容で構成されています。映画に例えるとWEBサイトに掲載されている記事が予告編、ホワイトペーパーの内容は本編、ということになるでしょうか。

そして、ホワイトペーパーの入手方法には、導線の工夫が仕込まれています。サイト内の記事の内容に沿って、関連キーワードに近い場所へクリックボタンを設置しておき、それ以上の情報を欲している読者を入力フォームへと誘導するのです。

入力フォームでは、読者は「企業名」、「氏名」、「年齢」、「業界・業種」、「連絡可能なメールアドレス・電話番号」など、個人情報の入力を求められます。企業側はこれらの情報を、ホワイトペーパーの提供と引き換えに獲得できるという訳です。

企業側は、読者を、たまたまサイトへ訪れた来訪者か、見込み顧客=リードの可能性のあるユーザーか、見極めようとしています。個人情報を提供してでも、商品やサービスの詳細な情報が欲しいという、ユーザーの意思をくみ取ることにより、企業側は、単なる読者からもうワンステップ上の、見込み顧客=リードになる可能性あり、という判断を下せるのです。

b.メールマガジン

メールマガジンは、コンテンツマーケティングがビジネスシーンで注目される以前から、顧客との関係性を深めるためのツールとして、広く利用されてきた手法です。

企業側から伝えたい情報を、不特定多数の相手に一斉に届けることがメリットです。インサイドセールスなどでも実践しているように、上手に利用すれば、リードナーチャリングにも効果を上げるコンテンツです。

ただし、他のコンテンツに比べると、プッシュ型としての性格が強いため、相手が関心を持たないのに、メールを執拗に送り続けると、企業への印象は悪くなってしまうので、配信の頻度は調整が必要です。

c.ランディングページ

「Landing Page=ランディングページ」は、そのサイトを訪れる読者が、最初に閲覧するページを意味します。さらにそこから派生して、リスティング広告やSNSを見たユーザーが、バナーやリンクをクリックして訪れる、商品・サービスの情報提供だけに特化したページを指します。

コンテンツマーケティングにおいては、ランディングページは、ページ訪問者に対し、ある特定のアクションを起こしてもらうことを意図して、作成されています。

ページの訪問者に期待するアクションには、商品・サービスについての問い合わせがあり、これは売り上げに直結します。もう一つのアクションは、無料の会員登録や、サンプルの申し込みなどです。これにより企業側は、ユーザーの個人情報を入手することができるのです。さらには、展示会や説明会など、イベントへの参加の誘導があり、これは見込み顧客の獲得が見込めます。

企業側は、WEB広告やSNSの記事をクリックして、サイトへ訪問してきたユーザーは、はじめから商品・サービスについて関心を持っている、と想定しています。従って、ページに掲載される情報は、該当する商品・サービスに関するもののみに絞られていることが前提となっています。

そして、ランディングページを離脱して、他のページへ遷移してしまわないように、ランディングページ以外のページへのリンクをわざと省き、訪問者を囲い込んでしまいます。そうすることにより、CVR=コンバージョン率を上げることが可能になるのです。

d.動画コンテンツ

今後ますます注目が集まるコンテンツとして、その訴求力の高さから、動画が挙げられます。テキストや静止画だけで構成されたコラム記事と比較して、動きや音声の効果により、視覚や聴覚に効果的に訴えかけることができます。商品の説明や取り扱い方法、事例の紹介など、文書だけでは伝えづらい内容には、動画はより適しています。

しかし、文書を書いて公開すれば、コンテンツとして成立するコラム記事とは違い、動画の作成には、色々と準備や時間がかかります。さらにクオリティを追求するのであれば、それなりの撮影・編集技術や機材が必要になり、金銭的なコストも発生してくるでしょう。外部のプロダクションに作成を依頼するとなると、さらに費用が加算されることになります。

ただ動画は、一度完成してしまえば、オウンドメディアで配信するのは当然として、SNSで公開したり、WEB広告で活用したりと、コンテンツの利用幅は広がります。

e.セミナー(ウェビナー=オンラインセミナー)

コンテンツマーケティングにおいては、セミナーの開催も有力なコンテンツとして数えられています。セミナーへの参加者にしてみれば、自身が抱く疑問に、専門家が直接答えてくれる数少ない機会です。また、普段なら会えない著名人や有識者と、対面でやり取りができるのですから、またとないイベントです。

ただ、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、対面によるセミナーよりも、WEB上でのオンラインセミナーが主流になりつつあります。ウェブとセミナーとの造語である「ウェビナー」という言葉も、この2年間でビジネスシーンでも馴染んだようです。

オンラインセミナーにおいては、コメンテイターと参加者とが、パソコンやスマートフォンの画面を通して、お互いの顔を見ながら会話します。これにより参加者は、実際の会場にいるようなライブ感覚を体験することができます。参加者は、コメンテイターに直接質問したり、参加者同士で会話したりと、双方向なやり取りができることが特徴です。

また、参加希望者に対しては、事前に資料をアップロードしたり、WEBのURLを伝えてセミナーの告知を行えます。セミナーの開催中でも、話の内容に応じて資料を差し替えたり、追加のファイルを共有するなど、臨機応変な対応が可能です。

さらに主催者側は、ネットを介して、参加者と双方向的なやり取りができるため、プレゼン中のコンテンツについての関心度合い、参加度合いをリアルにモニタリングすることができます。

セミナーの内容は録画しておけるので、当日欠席した参加希望者も、後からコンテンツを参照できます。録画したセミナーの内容は、編集して自社オリジナルの動画コンテンツとして、SNSで公開したり、オウンドメディアで配信したりと、二次・三次利用が可能です。

戦略の設定3 どのように(HOW)

コンテンツマーケティングにおける3つの要素のうち、「誰に」、「何を」が決まったら、最後の「どのように」について考察することにしましょう。

苦労してコンテンツを作成しても、誰の目にも触れないのでは意味がありません。また、見当違いの相手にコンテンツを提供しても、こちらの意図した行動を取ってもらえるか、つまりコンバージョンにつながるかは疑問です。

これまで、コンテンツマーケティングの目的を設定することと、コンテンツの種類を把握することの大切さについてご説明してきました。ここからは、どのコンテンツを、どのようなタイミングで提供するべきか、顧客の購買行動プロセスに沿った形で考えてみることにしましょう。

今回は、「AISAS理論」の購買行動プロセスを参考にします。

認知段階

この段階では、自社が見込み顧客=リードと定めるターゲットに対し、オウンドメディアで彼ら・彼女らが関心を抱きそうな記事を作成・公開することで、PV数を増やすことが重要です。

この段階に相応しいのは、コラム記事型コンテンツです。また、コンテンツの伝達チャネルは、検索による自社サイトへの自然流入、メールマガジン、リスティング広告、SNSなどが考えられます。

興味/関心段階

この段階では、自社のオウンドメディアで、記事を読んだ見込み顧客=リードに対し、その記事で取り上げた話題に関して、さらに興味・関心を抱いてもらうことが肝要です。より詳細な解説を行ったり、セミナー(オンラインセミナー)へ誘うなど、相手の興味や関心をさらにあおるべきでしょう。

この段階で望ましいコンテンツは、ホワイトペーパー、動画コンテンツ、セミナー(オンラインセミナー)などです。伝達チャネルは、サイト内にあるバナー広告、ポップアップ画面から誘導する申し込みフォームなどです。

検索/比較検討段階

この段階までくると、見込み顧客は自社の認知と共に、商品・サービスへの関心も徐々に高まっている頃です。

消費者がある商材に興味を抱いた時、まず起こす行動は、インターネットによる検索行為です。例えばある女性が、電動アシスト付き自転車に興味を持ったとしましょう。彼女は、検索キーワードに「電動アシスト付き自転車」と入力し、次に「価格」、あるいは「デザイン」など、思いつくままにキーワードを打ち込み、検索を繰り返すでしょう。そうするうちに、幾つかのメーカーのサイトを訪問し、検討材料はある程度集まってくるはずです。

では次に彼女が起こす行動は、他社との比較です。比較する項目は、デザイン、商品機能、価格など多岐に渡るため、企業側としては、詳細なデータと画像などで、ホワイトペーパーをしっかりと作り込んでおく必要が生じます。また、商品の操作方法や、取り扱い説明などは、動きと音声を加えた動画コンテンツで、分かりやすく解説すると良いでしょう。もちろん、併行してメールでセミナー(オンラインセミナー)への勧誘を行うなど、キャンペーンの告知や特典の付与なども、配信するようにしてください。

購買検討段階

見込み顧客=リードは、現時点では自社や自社製品・サービスに、さして関心を示さない「コールドリード」と、購買までもう一歩のところまできている「ホットリード」に分類することができます。

最初はコールドリードでも、「育てる」ことにより、徐々にホットリードへと変えていくことは可能です。マーケティングでは、コールドリードをホットリードへと育てることを、「リードナーチャリング」と読んでいます。

ここまでリードが、購買行動プロセスのどの位置にいるかに合わせて、お役立ち情報や課題解決に結び付くコンテンツの提供を通じて、彼ら・彼女らにどのような利益がもたらされるか、より具体的かつ鮮明にイメージさせてきました。

これにより、リードの購買意思は高まり、具体的な購買へと近づいていくことになります。この段階で、コールドリードはホットリードへと変貌することになるのです。

ホットリードは、既に商品・サービスの購入には、前向きな姿勢を示しているので、自社の商品・サービスを購入することにより、どのように課題解決に結び付くのか、具体的なイメージを呼び起こす事例の紹介など、背中をもう一押しするようなコンテンツが適しています。伝達チャネルは、営業担当やインサイドセールス部門の担当者による、電話やメール配信などです。

共有/拡散段階

インターネットの社会への浸透と、ITツールの発達と普及に伴い、消費者はSNSなどを介して、強力な情報発信力を獲得しました。ある商品を購入して、期待した以上の満足を得られれば、顧客はその時の体験を、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSで拡散するでしょう。

そして、その拡散された情報は、他の消費者の目に触れると、利害関係のない第三者からの情報として、信頼性は高まることになるのです。これが、「口コミ」と呼ばれる現象であり、この口コミ効果は、新規顧客の獲得に貢献するだけではなく、既に自社の商品・サービスを購入した顧客をさらに魅了し、自社ブランドを向上させることにもなるでしょう。

SNSによる情報の拡散=シェアは、顧客の自主的な行為であるため、企業側で操作することはできません。自社の製品・サービスにより、顧客体験を高めることで、顧客は自身の体験を他者と共有しようとします。

これを見越して、企業側としては、購入後のアフターフォローの充実ぶりを告知したり、商品のこれからのバージョンアップ情報を開示するなど、顧客が欲しがりそうなサービスを、先回りして提供することで、顧客によるSNSでのシェアを狙うことができるでしょう。

最適なメディアを選定する

コンテンツマーケティングを実践するために、メディアを起ち上げ、情報発信していくことになりますが、いよいよ、オウンドメディアの開設を行います。

オウンドメディアとは、企業が所有する、情報発信用のメディアの全てを意味します。この中には、ネット上で運営されるコーポレートサイト、ダウンロード用コンテンツ、メールマガジン、紙媒体である会社案内、チラシ、商品の説明書、営業担当者や店頭販売員からの口頭説明、展示会での商品案内など、多種多様なものが含まれます。

自社が持つ情報発信手段を有効に組み合わせ、最適な方法でコンテンツを提供することが、コンテンツマーケティングの戦略と言えるでしょう。

ただ、一般的に取り沙汰されるコンテンツマーケティングは、ネット上のサイトにコンテンツを公開し、顧客に働きかける手法が多いため、ここではインターネットを介した、コンテンツの配信方法について解説します。

既存サイト内のサブディレクトリ型

現在のビジネス環境において、自社のコーポレートサイトを持っていない企業は少ないでしょう。コンテンツの配信方法として、一番手っ取り早いのが、「サブディレクトリ型」です。

これは、既存のサイトにディレクトリを足していく形式で、オウンドメディアを一から立ち上げるよりも、開設までのハードルは下がります。

自社のコーポレートサイトの配下(サブディレクトリ)に、新たにオウンドメディア用のページを組み込むイメージになります。ドメインは、「https://◯◯◯.jp/column」といった形になります。

別ドメインのオウンドメディア型

上記のサブディレクトリ型とは対象的に、既存のコーポレートサイトとは別にドメインを取得し、独立した形でオウンドメディアを起ち上げるケースです。

こちらは、コンテンツだけを集めて、共通したテーマに基づき、運営するメディアのイメージです。

オウンドメディア開設前に準備しておくもの

この項では、自社で独自にドメインを取得し、オウンドメディアを開設するという設定で話を進めます。

サーバーを準備する

自社のメディアを立ち上げる際、まず準備するものはサーバーです。サーバーとは、ネットワーク上で接続されたコンピュータの中で、他のコンピュータから指示や要求を受け、処理結果や情報を返信する役割を担う、コンピュータやプログラムを指します。

このサーバーが介在することにより、世界中どこにいても、情報の送受信が可能になりました。しかし、かなりの大手企業でもない限り、自社で専用サーバーを用意する必要はありません。ほとんどの企業は、独自ドメインを取得する際に同時契約し、レンタルサーバーを使用しています。

レンタルサーバーを選ぶ際に、気を付けておきたい点が2つあります。

1つは、自社のオウンドメディアで何をするのか、明確にしておくことです。オウンドメディアを起ち上げる際、レンタルサーバー選びで陥りやすいケースが、必要のない機能まで装備されたマシンを選択してしまうことです。それは、一回も使用しない機能に、無駄な金額を支払い続けることになるからです。

もう1つは、これから借りようとしているレンタルサーバーが、SSL対応しているかどうか、という点です。インターネットを経由したデータ通信は、常に悪意の第三者の目に晒されていると思った方が賢明です。

SSLとは、「Secure Sockets Layer」の略で、インターネット上の通信を暗号化する技術です。

SSL対応のサーバーであれば、データ通信は暗号化されているため、個人情報の流出や改ざんなどは、未然に防止することが可能です。

個人情報が簡単に、第三者にハッキングされる時代においては、自社サイトへの来訪者を情報漏洩というリスクから守ることは、オウンドメディアを運営する側の義務といえるでしょう。

自社サイトのセキュリティを強化することで、ユーザーは安心してアクセスすることが可能になり、その一事が自社への信頼感を醸成することにもなるのです。

CMS=Content Management System

コンテンツマーケティングを本格的に実施するならば、相応の知識とスキルを有するプロに任せるのが一番の近道です。

ただ、テキストベースのブログ記事の更新や、静止画像の差し替え、サイト内ページのデザインや、簡単なレイアウト変更などであれば、コストや効率面から考えると、社内の担当者が行った方が良い場合もあります。

しかし、全く知識のない人であると、HTMLなどのプログラミング言語や、ウェブデザインの習得に時間を取られ、本業に充てる時間が削られてしまい、これでは本末転倒になってしまいます。そこで上手に利用したいのが、「WordPress」や「Movable Type」などのCMSです。

CMSには種類がいくつかあり、その中でも「WordPress」※5は、世界中で多くの人々に利用されています。HTMLなどのプログラム言語の知識がなくても、WEBサイトを作成することができます。ソフトウェアは利便性や操作性に優れており、利用は基本無料です。

プラグイン機能を使えば、自社のコーポレートカラーを利用したデザインにカスタマイズすることも容易です。加えて、複数の人間による編集も可能なので、スマートフォンやタブレットを操作して、あらゆる場所から記事を投稿・修正することもできます。

一方の「Movable Type」※6は、国内で5万サイト以上に導入されているCMSです。最新版の「Movable Type 7」は、コンテンツを構造化して保存し、出入力を容易にした、コンテンツの拡張性に富んだCMSです。

コンテンツタイプのフィールド作成により、誰でも操作しやすい投稿画面が作成され、構造化されたデータが作成できます。

Data APIでは、柔軟なコンテンツの運用と、ワンソース・マルチユースが実現しました。これにより、あらゆるコンテンツを、パソコンやスマートフォン向けのWEBサイト、各種のアプリケーション、デジタルサイネージなど、出力形態やデバイスを問わず、使用できます。

※5「WordPress」
https://wordpress.com/ja/

※6「Movable Type」
https://www.sixapart.jp/movabletype/

まとめ:コンテンツマーケティングの基本的な手順を踏まえて、最大の効果を!

今回は、コンテンツマーケティングを実践する上で、押さえておくべき手順について、その基本的な方法論について述べました。

コンテンツマーケティングという施策も、行動の指針となる目的を定める必要があります。同施策も事業活動の一環である以上、突き詰めれば、「売上数字の向上」ということになりますが、それでは余りに大雑把過ぎて、足元で何から手を付けてよいか戸惑ってしまいます。

そこで必要となるのが、当座の目標となる、「ビジネスゴール」の設定です。これを設定する際、大まかな方向性を決めておくと良いでしょう。それには常に、「どのような顧客に対して、どういう接点を保つか」を念頭に置き、「ブランドの認知」、「ブランドロイヤリティ」、「カスタマーエデュケーション」、「カスタマーエンゲージメント」を心掛ける必要があります。

コンテンツマーケティングを効果的に遂行する上で、欠かせないのが「戦略」です。コンテンツの力で成果を出すにはどうするか、あるいは、最低限のコストで最大の効果を出すには何を削減するべきかという、総合的な視点に立ち、目的を達成するためのシナリオが戦略です。

具体的な戦略設定の方法は、「誰に」、「何を」、「どのように」届けるか、という3つに集約できるでしょう。

「誰」に対して、コンテンツを発信するのか。それを決めるには、「ペルソナ」の設計が必須です。ペルソナとは、マーケティング用語では、「架空のユーザーの姿・人物のイメージ」と解釈されています。ペルソナを固めることにより、自社のターゲットとは「誰」で、価値あるコンテンツとは「誰」にとってなのか、が明らかになります。

「何を」コンテンツとして定め、作成するのかは、担当者の一番の悩みと言ってもよいでしょう。これを探るには、既存顧客からのインタビューにより、自社へのニーズの把握が欠かせません。ただ時には、失注案件、すなわち、自社の商品・サービスを選ばなかった消費者から、その理由を聞き出すことも大切です。そうすることで、既存顧客とは違った視点での意見を収集することができるからです。

そして、コンテンツの作成に際しては、コンテンツの種類について、把握しておく必要があります。まず、手軽に始められるのが「コラム記事型コンテンツ」です。これには、お役立ち系、アンケート・調査系、面白系・バズリ系などがあり、いずれも、テキストベースの記事コンテンツであり、企業サイトへの自然流入増、企業ブランドの認知向上などが見込めます。

それ以外にも、ホワイトペーパーなどのダウンロード型コンテンツ、メールマガジン、ランディングページ、動画コンテンツ、ウェビナーなどが挙げられます。

戦略設定の3つ目の要素である「どのように」ですが、これは、ユーザーの購買行動プロセスに沿って、それぞれのステージで、適切なコンテンツを届けることが重要になります。

コンテンツマーケティングの目的と戦略が決まったら、いよいよオウンドメディアの開設ということになります。サイトの運営に関しては、自社のコーポレートサイトを既にお持ちであれば、その配下(サブディレクトリ)に、新たにオウンドメディア用のページを組み入れる方法があります。もう1つは、既存のコーポレートサイトとは別にドメインを取得し、独立した形態でオウンドメディアを起ち上げるケースです。

オウンドメディアの開設前に、準備しておくものとしては、1つにはサーバーがあります。とは言っても、企業が自前でサーバーを所有することは稀で、ほとんどの企業は、ドメインを取得する際に、レンタルサーバーの契約を交わしています。レンタルサーバーを選ぶには、自社で使用する機能を見極め、使用しないサービスは省いて費用を節約することと、目当てのレンタルサーバーがSSL対応など、セキュリティ面で充実しているか、という点に目を向けてください。

コンテンツマーケティングは、比較的新しいマーケティング手法であり、まだ完全には体系化されてはいません。それは裏を返せば、企業の数だけ手法が存在するということです。しかし、無暗にブログ記事を作成して、配信しても、意図した効果は期待できません。そこにはおのずと、マーケティングの方法論が息づいており、理に適った手順を踏んでこそ、施策の効果を最大化できるのです。

それには、外部のプロの知見と技術を借りる、という選択肢もあり得ます。

総合コンテンツ制作会社である弊社には、コンテンツ制作および、SNSを介してのアプローチ方法など、コンテンツマーケティングの効果を最大化させるスキルと知見を有した人材が、多数在籍しております。
お客様のニーズに対応し、最適なコンテンツの作成、オウンドメディアの運営支援を行います。
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大学卒業後、新聞社に勤務。企業へのインタビュー記事作成業務を経たのち、広告制作会社に勤務。退社後は、フリーランスのライターとして活動中。得意分野は、ビジネス、マーケティング、各種マーケットリサーチなど。
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