求人におけるコンテンツマーケティングの効果とは?/転職者にささるコンテンツ制作とメディア活用法

PCを開いてヘッドセットを付ける男性

マーケティングの新たな手法として、存在に注目が集まる「コンテンツマーケティング」。
「潜在顧客を多く獲得する」、「費用をかけずに、自社製品・サービスのプロモーションができる」、あるいは、「自社のブランドを向上させる」など、その効果については、折り紙付きです。ただ、コンテンツマーケティングの施策のメリットは、それだけではありません。

実は、企業の採用活動においても、コンテンツマーケティングが大きく貢献していることに、どれだけの方がお気付きでしょうか。
そこで今回は、コンテンツマーケティング施策の効果の一つ、採用面でのメリットについて、詳しくご説明しましょう。

この記事の目次

まずは「コンテンツマーケティング」をおさらい


コンテンツマーケティングについて、その本質について理解し、発展させることにより、採用活動におけるメリットが見えてくるでしょう。

コンテンツマーケティングの定義

CONTENT MARKETING INSTITUTEの創始者であり、コンテンツマーケティングの第一人者としても知られるJoe・Pulizzi氏は、コンテンツマーケティングの定義を次のように述べています。

「コンテンツマーケティングとは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています」。

ここから、コンテンツマーケティングの本質が読み取れます。
すなわち、ターゲットと定める顧客に対して、彼ら・彼女らにとって価値のあるコンテンツを継続して提供することで、自社に気づいて興味を抱いてもらい、最終的には自社の製品・サービスを購買してもらうこと、ということになるでしょう。
さらに近年では、顧客に対して自社への「ファン化」を促し、自社製品・サービスの拡散を図ることにより、口コミ効果を期待する企業も増えています。

採用活動においてコンテンツマーケティングの考え方がなぜ重要か


もともと、「コンテンツマーケティング」とは、マーケティング手法の一つです。
マーケティングの根本は、企業が市場を分析し、消費者の要求を的確に捉えて商品化し、購入し続けてもらう仕組みを構築することです。
この仕組みが、採用活動においても、一定の成果を上げることが分かってきました。

採用市場を取り巻く環境の変化

1990年代を通じて、経済の低成長化を背景に、事業を取り巻く環境は先の見通せない状況が続き、企業側は非正規雇用者の比率を高め、自らの存続を図ってきました。それに伴い、日本型終身雇用は終焉を迎え、正規社員の転職への意識も高まっていきます。

総務省が2019年2月に公表した労働力調査※1によると、転職者数の推移は、2006年から2007年にかけて346万人とピークを迎えました。2008年のリーマン・ショックを受けて2010年にかけて大きく減少しました。その後、2011年からは転職者比率は緩やかな上昇曲線を描き、2019年には351万人と、統計数値が比較可能な2002年以来、過去最多となりました。

さらに転職者に対し、前職を離職した理由を尋ねると、事業不振などの「会社都合」で職を辞した転職者は、2008年のリーマン・ショックから2009年にかけて大幅に増加しましたが、2013年以降は減少傾向を辿ります。一方、「より良い条件を求めて」仕事を探した転職者数は、2013年以降は増加に転じ、2019年には127万人と、2002年以来、過去最多を数える調査結果となりました。

このことから、終身雇用を背景とした、一社にしがみつく正社員の姿は徐々に魅力を失い、むしろ積極的に転職しようとする労働者の存在が、採用市場をより活発なものにしているのです。

※1 令和2年2月21日 総務省 労働力調査資料
https://www.stat.go.jp/data/roudou/topics/pdf/topics123.pdf

労働者の価値観の多様化

学卒者を対象とした一括採用、画一的な社員教育、終身雇用など、かつては日本企業の強みとまで言われた「日本型雇用システム」。しかしこれらが、多層的組織を生み出し、迅速な意思決定に支障をきたしていることは事実です。海外勢を迎え撃ってのビジネスにおいては、最早、過去の遺物となりつつあります。

マイナビが、2020年2月に調査した、「転職動向調査2020年版」※2によると、
転職を選択するポイントとして挙げたのは、1位が「給与や賞与が高い」の52.1%。2位の「社員の人間関係が良い」が38.7%、3位の「福利厚生制度が充実している」が続きます。

以前は転職と言えば、「より高い給与とキャリア形成のため」と、相場は決まっていました。しかし、およそこの20年で、労働者の意識も大きく変わりました。上記の調査結果が示す通り、転職の決め手は、依然として「高い給与と賞与」が高い水準にはありますが、そのほかにも、職場の良好な人間関係であったり、充実した福利厚生制度など、多様化していることも事実です。

※2 マイナビ「転職動向調査2020年版」
https://saponet.mynavi.jp/column/detail/20210506094831.html

なぜ採用活動において、コンテンツマーケティングが有効なのか

少子高齢化による労働人口の低下に加え、より労働力の流動化が促される今日、どの企業も十分な労働力の確保には苦労しています。増して、自社が本当に求めている人物、優秀な人材を採用するには、企業側からの積極的なアプローチが重要になっています。

また先に触れた、マイナビの転職意識調査では、「応募へ影響する企業の施策・制度は?」の問いかけに対しては、1位が「有給取得率向上施策」、次いで「充実したキャリア育成支援・社内研修制度」、「多様な雇用形態の選択が可能な制度」、「企業独自の休暇制度(例:失恋休暇、誕生日休暇など)」、「社外の副業や兼業を促進する制度」などが続きました。
このことから、求職者が企業に求める価値観も多様化しており、自社での仕事にやりがいを感じ、長く働いてくれる人材を見出すには、同じ企業理念を共有することが求められるのです。

ここで、コンテンツマーケティングの本質を思い出してください。

「ターゲットと定める顧客に対して、彼ら・彼女らにとって価値のあるコンテンツを継続して提供することで、自社に気づいて興味を抱いてもらい、最終的には自社の製品・サービスを購買してもらうこと」でした。

これを採用活動に、当てはめてみましょう。
「ターゲットに定める求職希望者に対し、彼ら・彼女らにとって価値のあるコンテンツを継続して提供し、自社に気付いてもらい、自社の社員応募にエントリーして、最終的には自社に入社してもらうこと」となるでしょう。

ここで忘れてならないのは、コンテンツマーケティングのもう一つのメリット、すなわち、「顧客を自社のファンにする」という点です。これは、採用活動では、「入社した後も、企業にエンゲージメントを感じ、働き甲斐を見出して、会社の未来を担う人材」を獲得すること、ということになるでしょう

では、求職希望者にとって、価値のあるコンテンツとは、何を指すのでしょうか。

採用コンテンツに必要な要素


ではここからは、コンテンツに盛り込む内容について、具体的に見ていきましょう。

企業理念

企業の理念は、経営者が作るものです。その中には、創業者の思い、企業の存在意義、将来に向けてのビジョンなどが詰まっています。企業の活動は、すべてここから始まるのです。求職希望者は、この企業理念に共感することにより、自らの働く姿勢を問い直し、「この会社で働きたい」という強い動機付けとなるのです。

事業内容と提供する製品・サービス

その企業に、経営を支える主幹事業があり、他に事業の多角化を図っているのであれば、分野別に何をしているのか、分かりやすく伝えることです。競合他社と比べて、どのような強みを持つのか、詳細に伝えるコンテンツが必要です。

募集している職種

今回募集する職種と、どのようなスキルをもつ人材を求めているのか、具体的に発信すること。これを見ることにより、求職希望者は新たなステージで、自身がどのように貢献できるのか、イメージすることが可能になります。

社員紹介と社内の風景

前出した転職動向調査では、転職を決める要素として、1位の「高い給与と賞与」に次いで、2位が「社員の人間関係が良い」でした。転職者にとって、これから働く職場にどのような上司や先輩がいて、日々、どのような職場の雰囲気に包まれているのかは、条件面にも匹敵するほど大事な関心事でもあるようです。

先輩社員にインタビューして、一緒に働きたい人物像を聞き出したり、オフィスや仕事現場の様子を伝えるなど、動画や音声を駆使してコンテンツとして提供することで、求職希望者は、入社後に自分が働く姿をイメージしやすくなるでしょう。

社内制度

マイナビの転職意識調査では、応募へ影響する企業の施策・制度の1位が「有給取得率向上施策」でした。2位が「充実したキャリア育成支援・社内研修制度」、後に「多様な雇用形態の選択が可能な制度」、「企業独自の休暇制度(例:失恋休暇、誕生日休暇など)」、「社外の副業や兼業を促進する制度」などが挙げられています。

入社後に、実際にどのような制度を利用できるかは、多様な働き方を追求する求職者にとっては、重要な判断材料となります。失恋休暇や誕生日休暇など、その企業独自の制度をアピールすることで、企業文化を印象付けることにより、強力な動機づけになります。また、他のメディアや、SNSなどで取り上げてもらえる可能性も高まるでしょう。

採用コンテンツマーケティングで活用したい3つのメディア


コンテンツマーケティングでは、コンテンツをどのように作成するかは、重要な課題ですが、それと同等に大切な視点があります。それは、「顧客接点」です。

どんなに良質なコンテンツでも、ターゲットの目に触れなければ意味がありません。

マーケティングでは、有用な顧客接点の大半を、メディアに依存しています。
一口にメディアと言っても、色々な形態があり、情報発信においては主に、「オウンドメディア」、「ペイドメディア」、「アーンドメディア」の3つが挙げられます。

ただ、コンテンツマーケティングにおいては、1つのメディアのみにこだわっていては、成果は限定的になってしまいます。
そこで、この3つのメディアを効果的に組み合わせたメディア戦略を、「トリプルメディア」と呼びます。

このメディア戦略は、採用活動においても有効です。

オウンドメディア(owned media)

オウンドメディアとは、企業が自社で所有するメディアの総称です。企業の公式サイトをはじめとして、メールマガジン、紙媒体の会社案内、商品カタログやチラシなど、多岐に渡ります。消費者にリーチし、自社ブランドを向上させることを目的としています。昨今では、自社サイト内に、採用情報に特化したページを増強したり、先輩社員のインタビューや業務内容などを、動画で詳細に説明するなど、運用に力を入れている企業も多く見られます。

ペイドメディアは、企業が広告費を支払って、広告枠を確保し、事前に作成した企業や商品の広告をするメディアです。テレビやラジオ、新聞・雑誌など、従来からマスメディアと呼ばれるものから、インターネット上で展開されるリスティング広告など、様々です。

採用においては、求人サイトや転職サイトに、有料で求人広告を掲載します。
高額な費用が必要になりますが、企業単体では接点を持ちにくい、大勢の求職者に情報を拡散することが可能です。

アーンドメディア(earned media)

「アーンドメディア」の「アーンド」とは、「earned=獲得する」という意味です。何を獲得するのかというと、ユーザーの共感や顧客からの信頼感です。TwitterやFacebookなどのSNSや、口コミ、営業を目的としない個人ブログなどが、アーンドメディアに該当します。ことにSNSは、就職予備軍ともいえる学生や若者の多くが、日常の情報源として利用し、そこから得られる情報は、何かを決断する際の貴重な判断材料ともなっています。従って採用側にとり、アーンドメディアを効果的に活用することは、戦略上、重要なポジションにあるといえるでしょう。

アーンドメディアは、ペイドメディアやオウンドメディアと異なり、企業側で自由に操作することはできません。その企業の活動やイメージに好感し、オーディエンスが勝手に拡散してくれるのを待つしかありません。それゆえに、情報を発信する側は、歯がゆさを感じるものですが、一旦、情報が拡散されれば、企業ブランドの向上や商品の売上に貢献することもあるため、重要なメディアと言えるでしょう。

有名人が、「あの会社の化粧品はいい」とSNSで発信することで、一時的にではありますが、その会社の商品が大量に売れるというのはよくある話です。利害関係のない第三者が高く評価することで、消費者から商品やサービスに対する信頼感が増すのです。これは、莫大な費用を投じても、広告にはできないことです。

そしてこれは、採用においても応用が利きます。
その企業の社員に接した顧客が、サービスに好感を抱き、SNSで拡散した結果、それを見た学生がその企業に焦がれを持ち、実際に入社したという話も聞かれます。

トリプルメディアで相乗効果を期待する

単独のメディアで、求職希望者にアプローチするよりも、各メディアを有機的に組み合わせる方が、より高い効果が期待できるでしょう。

連携する流れとしては、最初にペイドメディアとアーンドメディアで、情報を多くのオーディエンスに認知させます。次にオウンドメディアで、自社の企業理念や社員インタビュー、職場の雰囲気などをコンテンツとして提供します。

まとめ:コンテンツマーケティングは採用面でも効果的


今回は、コンテンツマーケティングという施策において、採用活動ではどのような意味を持つのか、解説しました。

かつてない少子高齢化による労働人口の減少、労働市場のさらなる流動化などを背景に、採用市場も活発化。また、労働者の仕事に対する価値観も多様化し、インターネットの普及に伴い、能動的に情報を求める転職者も増加しました。
そのような状況で、企業側も積極的かつ戦略的に情報発信を行い、自社が求める求職希望者にアプローチする必要に迫られたのです。

コンテンツマーケティングは、ターゲットとする顧客にとって、価値のある情報を継続して提供することにより、自社の存在に気付かせ、自社の製品・サービスに興味を抱かせ、最終的には購買行動を促す施策です。

これを採用活動に当てはめると、ターゲットに定める求職希望者にとって、価値のあるコンテンツを継続して提供し、自社に気付いてもらい、自社の社員応募にエントリーして、最終的には自社に入社してもらうこと、となります。
このことから見ても、コンテンツマーケティングは、企業の採用活動において、とても親和性の高い施策と言えるでしょう。

マーケティングにおけるコンテンツマーケティングでは、コンテンツの作成と配信方法が重要になりますが、これは採用活動においても大きな要点となります。

採用コンテンツに必要な項目としては、企業理念、自社が提供する製品・サービス、募集職種、動画などによる社員インタビューや社内風景、社内制度などが挙げられます。

そして、これらのコンテンツを、目指す求職希望者に的確に届けることがポイントとなります。それには、ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアをターゲットごとに使い分け、相乗効果を狙うトリプルメディアという手法が有効になります。

自社の企業理念に共感し、企業文化に好感を抱く転職者を採用することは、企業が継続して企業活動を行う上で欠かせません。そして、そのような社員を多く育て、日々の業務において企業理念や文化を体現させることにより、企業ブランドを向上させることにも繋がるのです。

とはいえ、採用活動を一任されている人事部の方々には、コンテンツマーケティングを採用面で応用するにも、本業に追われて中々、実行に移すにはハードルが高いかもしれません。もしそうであれば、外部のプロに相談する、という選択肢もあります。

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大学卒業後、新聞社に勤務。企業へのインタビュー記事作成業務を経たのち、広告制作会社に勤務。退社後は、フリーランスのライターとして活動中。得意分野は、ビジネス、マーケティング、各種マーケットリサーチなど。
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