ここ4~5年の間に、マーケティング業界の間でも注目を集めるコンテンツマーケティング。
オウンドメディアの運営を任されているなら、どのような施策で、どんな効果が期待できるのか、興味をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
今回は、初心者の方向けに、コンテンツマーケティングがどのようなものか、また実施することによるメリット、具体的な始め方などについて詳しく解説します。加えて、実際にコンテンツマーケティングが功を奏した企業の事例も、あわせてご紹介します。
この記事の目次
コンテンツマーケティングとは何か?
有効なマーケティング手法として、注目されるコンテンツマーケティングですが、正確に理解している方はどれほどいるでしょうか。まずは、コンテンツマーケティングの定義とその目的について、見ておきましょう。
コンテンツマーケティングの定義
「コンテンツマーケティング」という言葉が、日本のマーケティング関係者の間で使われ始めたのは2015年前後ですが、当時は、「新しいSEOの手法である」とか、「ビジネス関連のブログ記事を作成することである」など、様々な捉えられ方をされました。
コンテンツマーケティング・インスティテュートの創始者である、ジョー・ビューリッチ氏は、コンテンツマーケティングの概念を世に広めてきた1人ですが、彼はコンテンツマーケティングの定義を次のように述べています。※1
「コンテンツマーケティングは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています。」
※1
https://contentmarketinginstitute.com/what-is-content-marketing/
コンテンツマーケティングの目的
コンテンツマーケティングの先進国であるアメリカでは、マイクロソフトやP&G(プロクターアンドギャンブル)、シスコシステムズなど、世界的にも有名な大企業が、コンテンツマーケティングを有効活用しています。これらの企業がコンテンツマーケティングを利用する理由として、以下の3つを挙げています。
・企業に忠誠心を抱く、良好な顧客を獲得できる。
・売り上げ数値の増加。
・コストの削減。
コンテンツマーケティングは、言うまでもなく、マーケティング手法の一つです。マーケティングとは端的に言うと、「企業が顧客と良好な関係を築き、顧客が自社の製品やサービスを購入し続ける仕組み」を作ることです。自社の製品やサービスを売り込む代わりに、見込み客や顧客が関心を持ちそうなコンテンツを常に提供し、自社に興味を持ってもらうことが初めの一歩です。そこから徐々に製品・サービスに目を向けてもらい、購買行動を取ってもらうことが、最終的な目標です。
コンテンツマーケティングに用いられるメディア、コンテンツマーケティングのメリット
コンテンツマーケティングを実践する上で、どのようなメディアを利用し、もたらされるメリットは何か、詳しく解説しましょう。
コンテンツマーケティングで用いられるメディア
コンテンツマーケティングにおいては、質の高い見込み客を獲得するために、単独のメディアのみを利用しているだけでは、成果は限定的と言えるでしょう。
世にメディアと呼ばれる存在は数多くありますが、それらは3つに分類することができます。これを「トリプルメディア」と称しています。
トリプルメディアは、それぞれ、「ペイドメディア」、「アーンドメディア」、「オウンドメディア」の3つに分けられます。
・ペイドメディア(paid media)
ペイドメディアは、企業が広告費を対価に広告枠を購入し、予め制作した企業や商品の広告を行う媒体です。テレビやラジオ、新聞・雑誌など、従来からマスメディアと呼ばれるものです。費用は高額になりますが、企業一社ではリーチしにくい、大勢のオウディエンスに情報を拡散することが可能です。
・アーンドメディア(earned media)
「アーンドメディア」の「アーンド」とは、「earned=獲得する」という意味です。何を獲得するのかというと、ユーザーの共感や顧客からの信頼感です。TwitterやFacebookなどのSNSや、営業目的でない個人ブログ、また口コミなどがアーンドメディアにあたります。特にSNSは、情報拡散により、企業ブランドの向上や商品の売上に貢献するため、重要なアーンドメディアと言えるでしょう。有名人が、「あの会社の化粧品はいい」とSNSで発信することで、一時的にではありますが、その会社の商品が大量に売れるというのはよくある話です。利害関係のない第三者が高評価することで、消費者から商品やサービスに対する信頼が増すのです。これは、莫大な費用を投じて出稿する広告には、できないことです。
・オウンドメディア(owned media)
オウンドメディアとは、企業が自社で所有するメディアの総称です。企業の公式サイトはもちろん、メールマガジン、紙媒体の会社案内、商品のカタログやチラシなど、多岐に渡ります。消費者にリーチし、自社ブランドを向上させることを目的としています。昨今では、WEB上で展開される、自社でコントロール可能な情報発信メディア、という意味合いが強くなっています。
単独のメディアでプロモーション展開するよりも、各メディアを有機的に組み合わせる方が、より高い効果が期待できるでしょう。連携する流れとしては、最初にペイドメディアで情報を消費者に認知させ、次いでオウンドメディアで自社や自社の製品・サービスに対する理解を深めてもらいます。最後に、アーンドメディアにより消費者の共感を得て、自社のファンを増やす、というイメージでしょうか。
コンテンツマーケティングのメリット
では、コンテンツマーケティングを行なうことにより、どのようなメリットがあるのでしょうか。
・顧客ロイヤリティの向上
「顧客ロイヤリティ」とは、会社や商品に対し、消費者が愛着を感じることを指します。自社サイトへの訪問者に、読みたくなるような記事を継続して提供することで、「このサイトに来れば、欲しい情報が手に入る」という認識を持たせることが重要になります。その結果、訪問者はその企業の製品やサービスにも興味を抱き、同じような商品を購入しようと検討する際は、他社ブランドではなく、その企業のブランドを選ぶようになるのです。
・広告費の節約
通常、商品の宣伝や、企業イメージをアップさせるには、テレビやラジオ、新聞・雑誌などのマスメディアに、広告費を支払って行います。しかしこれは、広告費が高額になるばかりでなく、出稿を打ち切ってしまえば、広告効果は長くは続きません。WEBメディアにおいて、リフティング広告を仕掛ける場合でも、広告費を支払い続けなければ、自社サイトへの流入は止まってしまいます。一方、コンテンツマーケティングは、記事の作成を外注すればその費用はかかりますが、一旦、公開すれば、それ以上のコストはかかりません。しかも広告とは違い、広告費を払い続けなくても、コンテンツを求めて一定の読者は流入してくるでしょう。コンテンツマーケティングは、広告費を削減する効果も期待できるのです。
・コンテンツの資産化
広告を出稿する場合、出稿を止めてしまえば、せっかく作成した広告コンテンツは人目に触れることはありません。しかし、コンテンツマーケティングでは、一度、コンテンツを作成して公開すれば、サイトを閉鎖でもしなければ、読者はいつでも閲覧することが可能です。ブログ記事などであれば、本数が増えるほど、記事の内容に興味を持つ見込み客の流入経路は拡大します。コンテンツマーケティングを継続することにより、コンテンツは見込み客獲得のための資産として蓄積されるのです。
コンテンツマーケティングの始め方(手順)
ここからは、コンテンツマーケティングの始め方について、ご説明しましょう。
目的の設定
企業が資金と人材を投じて事業を行う限り、一定の期間に決められた目標を達成することが求められます。コンテンツマーケティングという施策においても、明確な目標、目的の設定が欠かせません。
ただマーケティングのはやりだからと、見切り発車でコンテンツマーケティングを始めた企業の多くは、この目的をしっかりと定めていないばかりに、施策が迷走してしまうのです。
目的は、企業名や自社製品・サービスの認知なのか、あるいは、問い合わせの件数を増やすことなのかによって、作成するべきコンテンツの内容は違ってきます。ただ、思い出して頂きたいのは、コンテンツマーケティングの定義です。
コンテンツマーケティングは、価値のあるコンテンツを作成・公開することで、自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すことが最終ゴールなのです。従って、いくつかある目的は、見込み客を自社製品・サービスの購入へと導くためにある指標と言えます。最終ゴールがKGI(Key Goal indicator=重要目標達成指数)であるならば、各目的はKPI(Key Performance indicator=重要業績評価指数)ということになります。
ペルソナの設計
企業がある商品を開発する際には、ターゲットとする消費者の人物像を設定します。これを、「ペルソナ」と呼びます。ペルソナの設定は、コンテンツマーケティングにおいても、大きな意味を持っています。性別や年齢、職業、趣味、家族構成、使っているデジタルデバイスの種類など、人物像を細かく肉付けすることにより、ターゲットとする読者が関心を持つコンテンツを作成する指針になります。
現状の分析
目的、ペルソナの設定が済んだら、次に現状の分析を行います。達成するべき目標に対して、現状で何が実行できていて、何が実現できていないのかを洗い出します。
自社が置かれている業界や市場、競合社の動向を調べ、外部環境の分析に努めます。
また、自社の顧客に対してインタビューやアンケート、営業部門へのヒアリングなどを実施し、内部環境の分析も行いましょう。両者を把握することにより、コンテンツマーケティングにおける情報発信のテーマが明らかになるでしょう。
コンテンツの設計
いよいよ、コンテンツの設計に移りましょう。
しかしその前に、設定したペルソナが、どのような経緯で潜在的なニーズを顕在化させ、購買行動をおこすのか、その過程を認識しておく必要があります。
コンテンツマーケティングは、読者を見込み客に変え、商品を購入する顧客に育て、最後は自社のファンにして、製品・サービスを他人に薦めてもらうシステムづくりでもあります。それぞれの段階の顧客ニーズを満たす情報を、適切なタイミングで提供することが求められるのです。
運用体制の構築
コンテンツマーケティングは、即効性のある施策ではありません。短期的な売上アップを狙うなら、広告出稿などのプロモーションの方が効果的です。
コンテンツマーケティングは、長期的なスパンで継続して行うことが前提となります。それには、運用体制をしっかり構築しておくことが望まれます。誰がコンテンツを作成・公開し、誰がその後のコンテンツの管理と運営を行うのか、担当者を決めておきましょう。
効果測定の実施
コンテンツマーケティングは、コンテンツを作成し、公開したら終わり、というものではありません。
それぞれのターゲットに向けて配信されたコンテンツが、目的を達成するためにどれだけ貢献したか、定期的に測定することが必須です。
それには、指標となるKPIを定める必要があります。このKPIは、サイトのユーザー数、PV数、問い合わせの数、SNSでのシェア数など、様々です。貢献度に気を配りつつ、PDCAを回しながら、コンテンツを最適なものへとブラッシュアップしていくのです。
コンテンツマーケティングの成功事例(国内、国外)
実際に、コンテンツマーケティングを実施している企業は、どのように成果を上げているのでしょうか。国内外の成功事例を、いくつかご紹介します。
【国内事例】
・ライフネット生命
ネット保険大手のライフネット生命が運営する、「ライフネットジャーナル」は、仕事や健康、お金など、一見すると保険とは関係のないトピックの記事が並んでいます。生命保険は、結婚・出産・退職など、人生の節目に購入や見直しを検討することの多い商品です。ですから、普段から生命保険のことを考えている人は、あまり多くはないのが現状です。そこで、同サイトでは、一般の人が関心を持ちそうなテーマを選び、記事にしています。これにより、潜在顧客との接点を多く持つようにしました。自社の保険商品を押し付けることなく、いざ生命保険が必要になった時、ライフネット生命を思い出してもらう仕組みを作ったのです。
「ライフネットジャーナル」
https://media.lifenet-seimei.co.jp/
・SUUMO
リクルートが運営する不動産サイト「SUUMO」が、「SUUMOタウン」というオウンドメディアを起ち上げています。サイトに掲載されている記事は、実際にその街で暮らした人が執筆しており、街に対する愛情にあふれています。「きよらかな水、摩訶不思議薬膳中華にアドベンチャー―松本で暮らした1年半」や、「ぼくは両さんになりたかった。★谷根千ラプソディー」など、純粋な読み物として面白いコンテンツが満載です。読者が読みたいと思うコンテンツを公開し、読者がサイトのファンになる。読者が家を借りたい、買いたいという時にはSUUMOを思いうかべてもらう。コンテンツマーケティングの一連の流れが、見事に再現されている事例と言えるでしょう。
「SUUMOタウン」
https://suumo.jp/town/
【海外事例】
・Pure VPN
VPN(Virtual Private Network)サービス事業を展開するPure VPNが運営する、サイバーストーキング専門のオウンドメディアです。サイバーストーキングの被害に遭いやすい女性向けに、情報発信されています。サイバーストーキングについての知識や、実際に被害を被った女性へのインタビュー、セキュリティーの専門家によるアドバイスなどが公開されています。読者に対し、サイバーストーキングの恐ろしさを、「Learn=知識」、「Inspire=喚起」、「Trust=信頼」の3段階で示し、警戒するよう促しています。その上で、サイバーストーキングを回避する方法と、VPNが防御にどのように役立つかを掲示しているのが特徴です。
「Let`s STOP Cyberstalking」
https://www.purevpn.com/stop-cyberstalking
・Redbull
Redbull社は、エナジードリンクを提供する飲料メーカーです。「The Red BULLETIN」は、同社が運営するオウンドメディア。商品のターゲット層である、スポーツ好きの若者向けに、彼らが興味を持ちそうな話題を取り上げています。効果的なフィットネス方法や、アスリートの生きざまなど、一見、商品とは関係のない記事ばかりです。商品の宣伝は一切行わず、ひたすらターゲット層が欲しがる情報を公開することで、自社への信頼を獲得しているのです。
「The Red BULLETIN」
https://www.redbull.com/us-en/theredbulletin
まとめ:ターゲットとする顧客が求めるコンテンツを提供しよう
コンテンツマーケティングの定義と目的、施策のメリットと具体的な実施手順、実際にコンテンツマーケティングで成果を上げている企業の事例などについてご紹介しました。
成功事例からも分かるように、自社の製品・サービスを宣伝するのではなく、ターゲットとする顧客が何を求めているのか、常に考えてコンテンツ作りがすることが重要であることが、お分かり頂けたかと思います。
コンテンツマーケティングは、始めればすぐに効果が現れるマーケティング手法ではありません。中長期的なスパンで、ペルソナが本当に欲しがる情報を提供し、自社への信頼感と愛着を醸成することが求められるのです。そのため、コンテンツマーケティングを始める際は「長期的な視野」を持って戦略を立てていくようにしましょう。
なお、当ブログでは、コンテンツマーケティングを成功させる上で欠かせない「SEO対策」や「市場調査」などについて、より詳しく解説している記事もございますので、ぜひこちらも併せてご覧になってみてください。
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