【コンテンツマーケティング施策】具体的なイメージを共有し、施策を成功に導こう

PC画面に「CONTENT」の文字 ロケットのイラスト

市場には類似品が溢れ、消費者の趣味・趣向が多様化した現代において、従来のマーケティングの効果にも陰りが出始めています。そこで注目を集めているのが、「コンテンツマーケティング」という手法です。

コンテンツマーケティングは、顧客接点を意識したマーケティングであり、これからのビジネスの可能性を開く施策と言えるでしょう。

ただ、実践する人により解釈は様々で、正解と呼べるものはありません。

そこで、これからコンテンツマーケティングに取り組もうとお考えの、経営者、企業の担当者の方々に、コンテンツマーケティングとはどのようなものか、なぜ必要か、施策の主な効果について、ご説明します。

施策を検討する上で、具体的なイメージを共有して頂ければ、実施に向けて必要な体制作りの一助にもなるでしょう。

この記事の目次

「コンテンツマーケティング」とは何か、基本を理解しましょう

 

端的に言うと、「コンテンツマーケティング」とは、コンテンツを利用したマーケティングの一手法です。アメリカのマーケティング業界において注目され始めたのが2010年頃ですが、日本のマーケターの間でも話題にされたのは2014年頃でしょうか。

当時は、「新手のSEO対策である」、あるいは「ブログを活用したマーケ―ティングである」など、断片的に情報が飛び交い、体系的にまとめられたコンセプトはまだ現れてはいませんでした。

昔からあったコンテンツマーケティングの考え方

画期的なマーケティング手法として、近年、存在感が高まるコンテンツマーケティングですが、考え方自体は昔からありました。

1895年のアメリカにおいて、農機具メーカーの「John Deere」※1は、農家向けの雑誌「The Furrow」を発行しました。この雑誌は、農業で成功するための秘訣や、最新の農業技術の紹介など、農家が欲しがりそうな情報の提供に終始していて、自社商品の売り込みらしき広告や記事は皆無です。

創刊以来、購読者はうなぎ登りに増え、120年以上経た現在でも読み継がれています。紙媒体から電子版へと形は変わったものの、40ヶ国以上、150万人の読者を獲得するまでに成長しました。

世界中の美食家のバイブルとも言える「ミシュランガイド」。※2
フランスのタイヤメーカーであるミシュランタイヤが、1900年に創刊しました。ガイドブックの内容は、車のメンテナンス方法や、フランス各地の宿泊施設の紹介、もちろん、現在の料理ガイドブックの原型ともなるレストランの紹介など、多岐に渡ります。現在、ミシュランシリーズは、世界23か国、27ガイドブックが発刊され、全世界の料理人やグルマンからも愛されています。

他にも一定の顧客に向けて、特定の情報を発信することにより、自社の売上を上げさせたり、自社ブランドを向上させたりと、コンテンツを効果的に活用することで、意図した通りの効果を上げている企業の例は、枚挙にいとまがありません。

※1「John Deere」
https://www.deere.com/en/

※2「ミシュランガイド」
https://www.tgtourism.tv/2015/03/come-nasce-il-mito-delle-guide-michelin-2275

コンテンツの力で行うマーケティング

前述した、「john Deere」と、「ミシュランタイヤ」の例をお読みになって、共通点があることに気付きでしょうか。

業界も、取り扱う商材も全く異なる両企業ですが、「The Furrow」も「ミシュランガイド」も、共通した視点に立っています。それは、「どのような情報を提供すれば、読者は喜び、得をするのか」という、読者本位の目線です。

「The Furrow」は、読者である農家の人々が、どうすれば農業で成功できるか、その一点にこだわった編集内容になっています。また情報収集の手段が限られていた時代に、最新の農業関連情報を掲載して、農家が情報格差で損害を被らないように努めています。

ミシュランガイドは、ドライバーが自動車をメンテナンスするため、必要な知識を400ページにも及ぶガイドブックにまとめています。これにより、まだ自動車が一般には普及していない時代に、自動車による旅行の垣根を低くすることに成功しました。さらに、各地のホテルやレストランの情報を伝えることで、人々の旅行への興味を掻き立てたのです。

John Deereもミシュランタイヤも、このような雑誌やガイドブックの発刊により、すぐに自社の商品が爆発的に売れた、という話は聞きません。

ただ、John Deere の場合であれば、読者である農家の仕事がうまくいけば、生産性を拡大するために、農機具を新調したり、買い増したりするかも知れません。

ミシュランタイヤであれば、まず読者に、ガイドブックで自動車に関する知識を身に付けさせ、自動車を利用した旅行を市民生活に浸透させる。次に、各地域にあるレストランやホテルの魅了を伝え、読者の意識を地方へと向けさせます。
現在ほど、公共交通手段が発達していない当時では、自動車は格好の移動手段です。人々がこぞって自動車で旅行に繰り出せば、タイヤの消費が加速され、結局は自社のタイヤが売れる、という図式です。

「風が吹けば、桶屋が儲かる」ではありませんが、気の長い話ではあります。しかし、声高に自社の製品やサービスを宣伝するよりも、消費者の利益を第一に考え、彼ら・彼女らに有益なコンテンツを提供することの方が、自社に好意を抱かせるには効果的です。いつしか、消費者の脳裡には、「農機具ならJohn Deere」、「タイヤを買うならミシュランタイヤ」というフレーズが、刷り込まれることになるのです。

そして、ここからが大事なポイントですが、消費者がいざ、農機具やタイヤを必要とした時、Joh Deereやミシュランタイヤの社名を思い出し、営業マンに連絡を取るか、店頭に出向くようになるでしょう。

先に触れたように、コンテンツマーケティングは、コンテンツの力を利用したマーケティングです。コンテンツというものは、情報の集積であり、そのもの自体に価値はありません。その情報を必要としている人間に届き、活用されて初めて価値を発揮するのです。

そのコンテンツを必要としているユーザーに、適切な方法で届け、こちらが意図する行動を取らせることが、コンテンツマーケティングの基本的な考え方です。

「コンテンツマーケティング」の定義と本質を学ぶ

コンテンツマーケティングの施策において、その定義と、それに基づく本質について理解することは、実践する上でとても重要です。

なぜなら、コンテンツマーケティングは、コンテンツを作って配信すれば完了、
という即効性のある手法ではないからです。施策の効果を最大化するためには、PDCAをこまめに回しながら、コンテンツを最適な形へと修正していく作業が求められるのです。

施策を継続するには一定の時間を要し、途中で当初の目標を見誤ってしまうこともあり得ます。課題が生じたら立ち止まり、「何のために、コンテンツマーケティングを始めたのか」という原点に立ち返ることにより、施策のブレを防ぐことができます。それには、コンテンツマーケティングの定義と本質を、必要に応じて思い出すことが大切です。

コンテンツマーケティングの定義

2000年代のアメリカにおいて、インターネットが社会やビジネスシーンに浸透しはじめた頃、企業サイトでブログが活発に利用されるようになると、現在のコンテンツマーケティングの原型となるコンセプトが現れます。Google社やSNSの台頭を背景に、「自社サイトをWeb上で見つけてもらうには、ユーザーの求めるコンテンツを発信することが重要である」という考え方です。

2010年頃には、ようやく「コンテンツマーケティング」という概念が、マーケティング業界でも取り沙汰されるようになります。

世界的な規模で、コンテンツマーケティングの啓蒙と普及に努める団体、CONTENT MARKETING INSTITUTE※3のファウンダーであり、コンテンツマーケティングの第一人者としても有名なJoe・Pulizzi氏は、コンテンツマーケティングの定義について、以下のように述べています。

「コンテンツマーケティングとは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています」。

※3 CONTENT MARKETING INSTITUTE
https://contentmarketinginstitute.com/what-is-content-marketing/

コンテンツマーケティングの本質

ここから、コンテンツマーケティングの施策の本質を読み取ることができます。

コンテンツマーケティングは、マーケティングの一手法です。マーケティングとは、「企業と顧客とが良好な関係を築き、顧客が自社の製品やサービスを購入し続ける仕組み」を作ることに他なりません。

コンテンツマーケティングとは、ターゲットと定める顧客に対し、彼ら・彼女らにとって価値のあるコンテンツを継続して提供することで、自社の存在をアピールし、自社の製品・サービスに興味を抱かせ、最終的には購買行動を起こさせるマーケティング施策です。

さらに最近では、顧客に対して自社への「ファン化」を図り、SNSを活用して
自社製品・サービスの拡散させることにより、口コミ効果を狙う手法もポピュラーになっています。

コンテンツマーケティングの進め方

ここからは、コンテンツマーケティングの具体的な進め方について、順を追ってみていきましょう。

コンテンツマーケティングの目的を設定する

コンテンツマーケティングの実践も、事業活動の一環である以上、明確な目的の設定が大前提となります。大抵の民間企業は、利益の追求が経営上の至上命題ですから、最終的にはコンテンツマーケティングの目的も、売上向上への貢献ということになるでしょう。

ただ、これではあまりにも漠然とした目的となってしまい、何から手を付ければ良いのか、戸惑う向きも多いことでしょう。そこで意識して欲しいのが、「コンバージョン」という考え方です。

コンバージョンとは、英語の「Conversion=CV」にあたり、「転換」、「変換」を意味します。マーケティング用語では、見込み客が自社の顧客に変わることを指し、自社のWEBサイトへの訪問者が、商品・サービスの購入や資料請求など、こちらの意図する行動を起こす状態を表しています。

コンバージョンは、コンテンツマーケティングという施策では、効果を測る指標としても用いられますが、業界や扱う商材によって、種類は異なります。

①サイト上での商品・サービス購入
健康食品やコスメ、電子書籍やWEBサービスなど、比較的廉価な商品を扱っているECサイトでは、訪問者にサイト上で商品・サービスを購入してもらうことが、最終目標でありコンバージョンということになります。

②問い合わせフォームへの記入
一方、建設業や不動産業など、商材が高額で、購入するまでに検討期間が長く、サイトからの購入は期待できない場合、さらには顧客との対面販売が主流となる業界では、問い合わせフォームへの企業情報の記入がコンバージョンとなります。

サイトへの訪問者はこの行為により、資料や事例集など、サイト上では得られない、より詳細な情報を手に入れることができます。サイト運営側は、入手した顧客情報をリスト化してインサイドセールスへ渡すなど、商談創出の機会を得ることになるのです。またB to Bビジネスにおいては、製造業の生産ライン導入など、成約までにかなりの時間を要する商材も同様です。

③資料請求、無料体験版の申し込み
自社の取り扱う商材が、健康食品関連、あるいは美容関連である場合、無料の試供品の申し込みをコンバージョンに設定するケースも見受けられます。

もちろん、試供品の提供と引き換えに、見込み客の連絡先は獲得できるので、
営業やインサイドセールスがそのリストをもとに、電話やメール送信などで
フォローし、案件創出への足掛かりにすることができます。

④セミナーや展示会への参加申し込み
自社サイトに掲載されたコンテンツや資料だけでは、伝えることが難しい情報の提供や、確実に見込み客の囲い込みを狙うのであれば、セミナーや展示会の告知を行い、参加者を募ることでコンバージョンとする場合もあります。

例えば建設業であれば、モデルルームの見学会や内覧会、学校法人や学習塾などの各種スクール経営ならば、オープンキャンパスや無料体験レッスンへの参加を促し、参加希望者数をコンバージョンとして計上することが可能です。

ペルソナの設定

前述したコンテンツマーケティングの定義を、もう一度思い出してください。
「コンテンツマーケティングとは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチであり、明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い購買行動を促すことが目的」です。

ここで問題となるのは、価値あるコンテンツとは、一体、誰にとって価値のあるものなのか、ということです。「明確に定義されたオーディエンス」とは、自社にとって、どのような存在であるかが問われているのです。

ターゲットを誰に設定するかによって、作成するべきコンテンツは異なります。自社の扱う商品・サービスを軸に、コンテンツマーケティングで照準にすえるターゲットを決めましょう。その際、参考になる考え方が「ペルソナ」の設定です。

ペルソナとは元来、ラテン語の「PERSONA」からきており、役者が被る仮面を意味しています。そこから派生して、俳優が演じる役割、役柄、さらには性格・人格を指すようになりました。心理学では、「外界へ適応するために必要な、社会的で表面的な性格」を表し、マーケティングでは、企業が商品開発する際に設定する架空の人格の総称をペルソナと名付けたのです。

なぜ、架空の人格が必要になるのでしょうか。それは地球上において、すべての人間が満足する商品・サービスは存在しないからです。自社製品・サービスを届ける人物像を探すには、無数にいる消費者の中から、最大公約数的な人物を抽出し、それに肉付けするのが一番の近道です。

顧客が生身の人間である以上、ペルソナも血の通った人格に限りなく近づける必要があるのです。

性別、年齢、名前、学歴、職業、収入など、定量的な属性はもちろん、抱える悩みや趣味・趣向、人生観など、定性的なデータを加えて、より具体的でリアルな人物像をイメージしてみてください。

購買行動プロセスの理解

マーケティングでは、顧客の行動変容を理解する上で、「購買行動プロセス」という概念を用います。

マーケティングには、「AIDMA理論」という概念が存在します。
1920年代、アメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏が提唱した理論です。「Attention=注意」、「Interest=興味」、「Desire=欲求」、「Memory=記憶」、「Action=行動」の頭文字を取ったものです。

インターネットが登場するまでの間は、消費者は商品の情報を、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアを通じて収集していました。
この頃は消費者の購買行動は、次のようなプロセスを辿っていたのです。

まず消費者は、その企業や取り扱う製品・サービスの存在を知り(Attention)、
興味を抱き(Interest)、手に入れたいと思うようになり(Desire)、記憶にとどめ(Memory)、最終的に購買行動に至る(Action)という一連の購買決定プロセスを踏みます。このうち、Attentionの段階にいる消費者を「潜在顧客」、Interest、Desireの段階にいる消費者を「見込み顧客」、その後、「Memory」を経て、「Action」すなわち、購買行動を起こす消費者を「顧客」というように分類するようになりました。

2000年代に入ってインターネットが普及するにつれて、消費者の生活は大きな影響を受けます。特に、情報の収集と発信において、格段の変化を遂げました。それに伴い、消費者の購買行動も、以下のように変容します。

a. 情報からその商品・サービスを認知する。(Attention)
b. 商品を認知した消費者が、興味を持つ。(Interest)
c.消費者が、商品やサービスについて、ネット検索する。(Search)
d. 購買行動を起こす。(Action)
e.購買した後、商品について情報発信・共有する。(Share)

このプロセスは、「AISAS理論」と称されました。
AIDMA理論と決定的に異なるのは、AISAS理論には、「Search」と「Shear」とが加わったことです。

AIDMAでは、企業側は情報発信を一方的に行い、消費者はその情報を受け取るだけの存在でした。これに対してAISASは、消費者に検索(Search)と共有(Share)という、能動的な行動が加わることにより、企業と消費者とが互いに関係し合う関係になったとことを意味するのです。

コンテンツの内容と方向性、チャネルを決定する

この段階で、どのようなコンテンツを作成するのか、その方針を決定します。同時にコンテンツの内容も決めて、作成に取り掛かりましょう。

①コンテンツの内容と方向性

AIDMA理論で述べたように、マーケティングでは、消費者を購買行動プロセスのどの段階にいるかで、「潜在顧客」、「見込み顧客」、「顧客」に分類します。

「潜在顧客」とは、自分が何を求めているのか、自身でも気付いていない消費者です。もちろん、自社の存在も知りません。

次の「見込み顧客」とは、「リード」とも呼ばれますが、自分が何を求めているか気付いている消費者で、自社の名前くらいは知っている程度です。ひょっとしたら将来は、自社の商品・サービスを購入してくれるかもしれない存在、という訳です。

因みにリードは、「コールドリード」と「ホットリード」とに分けられます。
コールドリードは、自社の商品・サービスへの関心が浅く、購入するまでには、
まだまだ時間を要する見込み顧客のことであり、「そのうち客」などとも呼ばれます。これに対してホットリードは、自社の商品・サービスに興味を強く抱いており、購入まであと一押しの段階にいる見込み顧客を指し、「今すぐ客」などとも称されています。

最後の「顧客」は、既に自社の商品・サービスを購入した消費者です。既存顧客とも呼ばれますが、一度でも自社の製品を購入し、自社の製品に満足を得られれば、少なくとも他社との差別化をしてくれる存在です。

②コンテンツを配信するチャネルの決定

いくら良質なコンテンツを作成しても、ユーザーの目に触れなければ意味はありません。コンテンツと顧客との接点をどのように創出するのか、が問われるのです。

大抵の場合、コンテンツマーケティングは、企業のサイトを主体としたオウンドメディア上で展開されるものです。オウンドメディアとは、企業が持つメディアの総称です。コーポレートサイト、LP=Landing Page、ホワイトペーパー、eBookなどの電子媒体に加えて、会社案内、チラシなどの紙媒体、さらには、営業マンの営業トークや、店頭での販売員による商品説明、展示会でのプレゼンテーションまで、様々です。

コンテンツをオウンドメディアに掲載するのか、SNSでシェアするのか、あるいはYouTubeやニコニコ動画のような動画サイトで公開するのか。どのチャネルで配信するのか、コンテンツと顧客との接点を最適化することが重要になるのです。

設定したペルソナと購買行動プロセスに沿って、コンテンツの方針と内容を決め、適切なチャネルを選択しましょう。

コンテンツマーケティングのメリット

新たな事業活動に着手しようとするとき、当然ですが動機が必要になります。
人的リソースと資金を投じて、どの程度の利益が得られるのか。経営者であれば全社員に対して、担当者であれば上席への稟議において、説得するだけの目論見が必要になります。

ここで取り上げる動機とは、施策を実施することでどのようなメリットが得られるのか、を指します。

そこでここからは、コンテンツマーケティングという施策を実施することで、どのようなメリットを享受できるのか、見てみましょう。

誰でもすぐに始められる施策

メリットとして最初に挙げられるのは、手軽に始められるということでしょう。
ブログ形式の記事を配信するなら、パソコンとインターネット環境、それと記事を作成する手間だけです。

将来、自社の製品・サービスを購入してくれるであろう見込み客や、現在の顧客が、「こんな情報を欲しがっている」と想定しながら、まずは書いてみましょう。コンテンツマーケティングの「コンテンツ」は、テキストはもちろん、イラスト、動画、音声など、データ形式は色々あります。ただ、文章を書いて配信するだけなら、日々の仕事の延長上で、すぐに始められるでしょう。他の広告手法に比べて、取りかかる上でのハードルが低いのが、コンテンツマーケティングのメリットの一つです。

広告費の節約

一般的に、企業のイメージアップを狙ったり、商品を宣伝するためには、広告費を支払って、テレビやラジオ、新聞・雑誌などのマスメディアに出稿します。

しかし、広告を継続させるためには、広告費は高額になるばかりです。また、出稿を打ち切ってしまえば、広告の露出はそこで止まってしまいます。WEBメディアにおいても同様で、リスティング広告を出す場合でも、広告費を支払い続けなければ、自社サイトへの流入はストップしてしまいます。

一方、コンテンツマーケティングは、外注に記事の作成を依頼すれば、その費用はかかりますが、一旦公開すれば、それ以上のコストはかかりません。しかも広告とは異なり、コンテンツをオウンドメディアに掲載しているのであれば、広告費を払い続けなくても、コンテンツを目的に読者は流入してくるでしょう。コンテンツマーケティングは、広告費を低く抑える効果も期待できるのです。

顧客ロイヤリティの向上

コンテンツマーケティングの先進国であるアメリカにおいては、シスコシステムズやマイクロソフト、P&G(プロクターアンドギャンブル)など、世界的なシェアを誇る大企業が、コンテンツマーケティングを効果的に活用しています。

これらの企業がコンテンツマーケティングを利用する理由として、コストの削減、売り上げ数値の増加に加えて、「企業に忠誠心を抱く、良好な顧客を獲得できる」を上げています。

このように、良好な顧客が企業に抱く忠誠心を、「顧客ロイヤリティ」と呼びます。顧客ロイヤリティとは、消費者が企業や商品に対し、愛着を感じることを指します。自社サイトへ訪問したユーザーに、読みたくなるような記事を継続して提供することで、「このサイトに来れば、有益な情報が手に入る」という認識を持たせることができるのです。

これを繰り返すことにより、ユーザーはその企業の製品やサービスにも興味を抱き、いざ同じような商品を購入しようとする際には、他社ブランドではなく、その企業のブランドを選ぶようになります。これは、企業のブランド向上にも繋がる考え方です。

コンテンツの資産化

プロモーションにおいて広告による展開は、不特定多数の消費者に対し、即効性のある情報拡散を期待するのであれば、効果的といえるでしょう。しかし、広告の出稿をストップしてしまえば、せっかく作成した広告コンテンツは人目に触れることなく、消え去ってしまいます。

一方、コンテンツマーケティングでは、一旦、コンテンツを作成して、オウンドメディアで公開すれば、サイトを閉鎖でもしない限り、読者はいつでも閲覧することができます。ブログ記事であれば、本数が増えるほど、記事の内容に興味を持つ見込み客の流入経路は拡大します。コンテンツマーケティングを継続することにより、コンテンツは見込み顧客獲得のための資産として、アーカイブ化されるのです。

ソーシャルメディアとの親和性が高い

コンテンツマーケティングと、FacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルメディア(SNS)との親和性が高いことも、メリットの一つです。

人間は、何か情報を手に入れると、誰かに話したくなる性質を持っています。宣伝もしないのに、人の口を介して評判が上がり、商品が売れる、いわゆる「口コミ」という現象は昔からありました。しかしSNSが登場して以来、消費者が持つ情報拡散力は、飛躍的にはね上がったのです。

自社のオウンドメディアに、ブログ記事、動画などのコンテンツを公開し、読者がおもしろい、あるいは役に立つ、質が高いと認めれば、彼ら・彼女らはSNSで勝手に拡散してくれます。そして、SNSに掲載された記事を読んだ別のユーザーも、コンテンツに興味を抱けば、自社サイトに訪問してくるでしょう。この連鎖により、企業は潜在顧客を多く獲得することができるのです。

コンテンツの種類

コンテンツマーケティングにおけるコンテンツは、幾つかの種類が有ります。
施策を成功に導くためには、それぞれのコンテンツの性質を知り、把握しておくことが大切です。

コラム記事

コンテンツマーケティングにおけるコンテンツといえば、コラムやブログなどのテキストベースの記事を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
コラムとは、ある事実に基づいて、論歴的に文章を展開する記事の総称です。

2014年頃は、マーケティング業界のトレンドだからと、コンテンツマーケティングに飛びついた企業も多かったようです。これらの企業の大半は、社員に日記風の文章を持ち回りで書かせ、自社サイトに掲載したようですが、これでは読者にはすぐ飽きられてしまいます。案の定、そうした企業の中には、期待した以上にサイトへの訪問者は増えず、また、記事を書くにもネタ切れで、コンテンツの確保が難航しました。結局は、施策の打ち切りに追い込まれるケースがほとんどでした。

コンテンツとして通用するコラム記事は、ユーザーの抱える課題を解決するテーマに絞ったもの、人に話したくなるような面白ネタ、料理や健康に関する生活に役立ちそうな小ネタなど、考え方次第で書き分けることが可能です。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーとは本来、政府や公的な調査機関が、定期的に発行するリポートを指します。

コンテンツマーケティングにおいては、主にB to Bにおいて、ある課題を抱えて解決策を探りたいと思っている、企業の担当者に向けて書かれた報告書を意味します。

その企業独自の調査やアンケートの結果、あるいは自社製品の導入事例、商品の使い方の解説など、様々です。

ホワイトペーパーは、自社が扱う商品・サービスについて、開発者や技術担当者の見解を文章化したり、その企業が独自に調査したリポートなど、サイト上では公開しきれない内容が多いのです。

映画に例えると、サイトに掲載されている記事は予告編、ホワイトペーパーは本編、ということになるでしょうか。

そして、ホワイトペーパーの入手方法にも、「仕掛け」があります。サイト内の記事の内容に沿って、関連キーワードに近い位置にボタンを設置し、それ以上の情報を欲している読者を入力フォームへと誘います。

入力フォームには、「氏名」、「性別」、「年齢」、「所属している業界・業種」、「企業名」など、個人情報の入力を求められます。企業側はこれらの情報を、ホワイトペーパーの提供と引き換えに獲得できる訳です。

企業側は、読者を単なるサイトへの訪問者か、見込み顧客=リードの可能性のあるユーザーか、見極めたいと考えています。
SEO対策で自然流入してくる読者は多くても、すぐに離脱されるのでは、オウンドメディアの効果も限定的になってしまいます。しかし、読者による個人情報の入力は、「この製品について、もっと詳しく知りたい」という意思表示でもあるのです。

この行為により、企業は読者の本気度を測っています。個人情報を差し出してでも、製品の詳細情報が欲しいという意思から、単なる読者のその先、見込み顧客=リードになる見込みあり、という判断をしているのです。

メールマガジン

メールマガジンは、コンテンツマーケティングが注目される以前から、顧客を獲得するために活用されてきたツールです。

他のコンテンツに比べ、プッシュ型での配信になるため、企業側が伝えたい情報を、不特定多数の相手に対して、一斉に届けるには適しています。

インサイドセールスなどでも採用しているように、うまく使えば、顧客の育成(リードナーチャリング)にも応用できるコンテンツではあります。ただし、プッシュ型であるだけに、相手がメリットを感じない内容のメールを強引に送ると、企業への心証は悪いものになってしまうため、配信には細かい配慮が必要です。

動画コンテンツ

動画コンテンツは、そのポテンシャルの高さから、これまで以上に注目が集まっています。ブログ記事のような、文字や静止画のみの情報に比べ、動きや音声の働きにより、視覚や聴覚に訴えかける効果は比較にならない程です。文字や写真。イラストのみでは伝えづらい、商品の解説、事例の紹介には、その情報量の多さから、動画コンテンツは適していると言えるでしょう。

とは言え、書いてすぐにアップロードできる記事コンテンツとは異なり、動画コンテンツは作成するのに色々と手間がかかります。クオリティを追求するとなれば相応のスキルを要し、それなりの編集作業も必要になるでしょう。外部のプロダクションに委託するのであれば、費用も発生します。

しかし、一旦作成してしまえば、オウンドメディアで公開するだけにとどまらず、WEB広告に流用したり、SNSで公開したりと、コンテンツとして活用の幅は広がるでしょう。

ランディングページ

「Landing Page」は、そのサイトを訪れる読者が、「最初に着地するページ」を意味します。リスティング広告をクリックしての遷移、検索結果から流入、あるいはSNSを見て訪れたユーザーに向けて、ある商品・サービスについて特化した情報を提供するページです。

コンテンツマーケティングでは、一般的にランディングページと言えば、この意味でのページを指します。ランディングページは、訪問者に対し、ある特定の行動を起こしてもらうことを目的に、作り込まれているのです。

ある特定の行動の一つには、「商品の問い合わせや注文」があり、これは直接、売り上げに繋げられます。もう一つのアクションは、「無料の会員登録や試作品の申し込み」が考えられます。これにより、潜在顧客の属性情報を入手できるのです。

さらには、「内覧会や説明会など、イベントへの申し込み」があり、これは見込み顧客の獲得が狙えます。

サイトへの訪問者は、最初から商品・サービスについて関心を持っているユーザーを見込んでいます。従って、ページに掲載されるコンテンツは、該当する商品・サービスのみの情報に限定されているのです。また、CVR=コンバージョン率を上げることを目的に、他のページへ回遊することを防ぐため、ランディングページ以外のページへのリンクを削除しておくこともあります。

セミナー(ウェビナー)

コンテンツマーケティングにおいては、セミナーや展示会の開催も、有効なコンテンツの一つに数えられています。参加者にとっても、自分が抱える課題に対して、専門家が直に答えてくれる、絶好の機会です。また、普段なら会えない有識者に、面識を得るチャンスも与えられる、一石二鳥の側面があります。

しかし、新型コロナウィルスの感染が拡大して以降、リアルなセミナーは敬遠され、WEB上でのセミナーに取って代わられたように見受けます。ウェブとセミナーとの造語である「ウェビナー」も、この2年余りの間にすっかり定着しました。

ウェビナーの特徴としては、まず、リアルタイムな配信が挙げられます。参加を希望しているユーザーに対し、事前に資料をアップロードしたり、WEBのURLを伝えてセミナーの告知を行うことが可能です。セミナーの開催中でも、話の内容に応じて資料を取り換えたり、追加のファイルを共有することもできます。

また主催者側は、ウェビナー開催中に、参加者の態度をリアルタイムで観察することができます。例えば、プレゼンターが話している最中に、何人が退席したか、ネットを介して把握できるので、プレゼン中のコンテンツについての参加度合いや関心度合いを、率直に受け止められるのです。

さらに、セミナーの内容を録画しておけば、自社のオリジナルコンテンツとして、会員登録と引き換えにオウンドメディアで閲覧させたり、SNSで公開したりと、二次・三次利用が見込めます。

ウェビナーでは、参加者は実際に会場に移動する必要がないので、オフィスやカフェなど、都合の良い場所からの視聴が可能です。移動時間が節約できるため、ウェビナーを視聴する前後に、リモート商談や社内ミーティングをセッティングすることもできます。

仕事のスケジューリングも柔軟にできるため、ウェビナー参加へのハードルも低くなっているようです。

ウェビナーは、開催者側も参加者にとっても、コストパフォーマンスが高いコンテンツです。リアルなセミナー開催であると、開催側は会場費、配布する紙資料の費用、会場までの移動費などを負担する必要があります。参加者側にとっても、会場までの移動費に加え、移動時間が負担になります。WEB上のセミナーであれば、これらのコストはかかりません。

まとめ:コンテンツマーケティングのイメージを社内で共有し、施策に取り組もう

今回は、コンテンツマーケティングに初めて取り組もうとする、経営者や広報・宣伝関係の担当者向けに、コンテンツマーケティングとはどのような施策か、その定義と本質を踏まえた上で、詳しく解説しました。

「コンテンツマーケティング」という言葉が生まれる以前から、同じような考え方はあり、コンテンツの力で顧客の心を掴む手法は存在したのです。

1895年のアメリカにおいて、農機具メーカーの「John Deere」は、農家向けの雑誌「The Furrow」を発行し、農家が欲しがりそうな情報の提供に努めました。

また1900年には、フランスのタイヤメーカーであるミシュランタイヤは、「ミシュランガイド」を創刊し、車のメンテナンス方法や、フランス各地の宿泊施設やレストランの紹介をしています。

「The Furrow」も「ミシュランガイド」も、「どのような情報を提供すれば、読者は喜び、得をするのか」という、読者本位の目線が基本コンセプトになっています。

自社がターゲットに定める顧客に対し、必要としているコンテンツを届け、こちらが意図する行動をとらせることこそ、コンテンツマーケティングの基本です。

施策の具体的な進め方としては、コンテンツマーケティングの目的を明確にすること。それには、コンバージョンを何にするか、あらかじめ設定しておくことです。サイト上での商品・サービス購入なのか、問い合わせフォームへの記入なのか。あるいは、資料請求、無料体験版の申し込みか、セミナーや展示会への参加申し込みか。その企業が取り扱う商材の種類や、価格、購買までの検討期間などにより、コンバージョンは様々です。

次に、ペルソナの設定です。誰に向けてコンテンツを作成し、届けるのか、明確にしておかなければなりません。それには、定量・定性データの双方を取り入れて、血の通った人物像に仕上げる必要があります。

顧客の購買行動プロセスを理解し、コンテンツの内容と方向性、チャネルを決定しましょう。

コンテンツマーケティングに着手する動機づけとしては、誰でもすぐに始められることと、広告費の節約、顧客ロイヤリティの向上、コンテンツの資産化、SNSとの親和性が高いことなどが挙げられます。

コンテンツの種類は、コラム記事、ホワイトペーパー、メールマガジン、動画、ランディングページ、オンラインセミナーなどが考えられます。

コンテンツマーケティングには、正解がありません。
自社の現在の課題は何か。どういう顧客に対し、どのようなコンテンツを作成して提供するか、十分にイメージして社内で共有することが、施策を成功に導く上で最も重要な点です。

そして、コンテンツマーケティングは、片手間に出来るような簡単なものではありません。一定の効果が確認できるまでには、ある程度の時間がかかります。そのためには専任者を決め、継続して運営できるだけの体制作りが欠かせません。

そうはいっても、大手であればともかく、中小企業ではリソースにも限りがあります。そうであれば、作業の一部でも、外部のプロに依頼するという選択肢もあります。

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大学卒業後、新聞社に勤務。企業へのインタビュー記事作成業務を経たのち、広告制作会社に勤務。退社後は、フリーランスのライターとして活動中。得意分野は、ビジネス、マーケティング、各種マーケットリサーチなど。
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