マーケティングのトレンドとして、ここ4~5年で注目を集めてきたコンテンツマーケティング。オウンドメディアを起ち上げ、積極的に情報発信を行う一般企業も多くなりました。しかし、予想した以上に目に見えた成果が上がらず、コンテンツの作成や配信作業が滞りがちになってしまっている企業も少なくありません。
では、コンテンツマーケティングで成果を上げている企業とそうでない企業には、どのような違いがあるのでしょうか?今回は、コンテンツマーケティングに失敗する事例をいくつかご紹介し、そこから学べる成功のヒントを探ります。
この記事の目次
コンテンツマーケティングが失敗してしまう企業の共通点
まずは、コンテンツマーケティングに失敗した事例をいくつか、ご紹介しましょう。「なぜ、失敗例なんだ?」と思われる方も少なくないでしょう。先人の失敗事例を調べることで、学べることも数多くあります。何が足りなかったのか、あるいは何をするべきだったのか、失敗事例をひも解くことで、コンテンツマーケティングの施策を成功に導くヒントが垣間見えてくるはずです。
そもそも何をもって「失敗」とするのか
企業が人員や資金を投入し、一定期間、事業を展開する以上、それなりの結果が求められます。それは当然、コンテンツマーケティングの施策においてもいえることです。ただし、見込み客をナーチャリングし、消費行動にまで至らせるにはある程度の時間を要するということは忘れてはなりません。コンテンツマーケティングにおいて、目に見えた成果を得るには長いスパンで構えておかなければならないということです。
それだけに、実行した施策が効果につながらなかった(失敗した)と気づくまでには、同じように時間がかかります。気が付けば、だらだらと意味のないコンテンツを垂れ流ししている、ということにもなりかねません。
目的を達成できないことを失敗とするなら、「企業に忠誠心を持つ良質な顧客の獲得」「売上増加」「コスト削減」に、コンテンツが何ら寄与しなかったということになります。そして、もう1つ付け加えるなら、「短期的な効果にこだわるあまりコンテンツマーケティングを継続できないこと」も失敗の範疇に含まれるでしょう。
コンテンツマーケティングの目的を定めていない
コンテンツマーケティングという概念は、ここ4~5年の間に、WEB担当者の間でもてはやされてきました。マーケティングのトレンドだからと、気軽にオウンドメディアを起ち上げ、情報発信を始めた企業も多いのではないでしょうか。そうした企業のうち、コンテンツマーケティングが功を奏した会社は、あまり多くはないようです。
事実、当初は多くの企業が競って始めたオウンドメディアも、継続して運用されているケースはあまり多くはないように見受けます。この原因として挙げられるのが、明確にコンテンツマーケティングの目的が示されていないということです。ゴールが決められていなければ、どこへ進めばよいのかも分かりません。定期的に有益なコンテンツを配信し続けるにも、息切れが生じてしまい、尻すぼみで終わってしまうでしょう。
読者が欲しがっている情報を提供していない
企業のオウンドメディアは、企業が情報発信する上で非常に優れたツールの一つです。配信するコンテンツは、自社のプロフィール、扱う製品・サービスの概要、ブログ記事、新商品情報など、多岐に渡ります。
ただこれには、重要な視点が欠けています。コンテンツマーケティングの定義は、「価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチ」とされています。「価値のある一貫したコンテンツ」とは、誰に対して価値があるのでしょうか。それは、言うまでもなく読者です。企業本位の、商品やサービスの一方的な売り込みでは、誰にも相手にされません。読者が読みたがっているコンテンツを用意できなければ、見込み客や顧客を獲得し、購買行動にまで誘導することはおぼつかないでしょう。
ターゲットの設定が曖昧
コンテンツマーケティングに限らず、マーケティング全般に言えることですが、誰に対しての施策であるのか、明確にしていないと効果は期待できません。オウンドメディアであれば、読者が誰であるのか、それをしっかり設定しておかないと、読者を魅了するコンテンツを配信することは難しいでしょう。
コンテンツマーケティングの運用体制が確立していない
オウンドメディアが発信するコンテンツは、読者に有益な情報であることが大切な要件ですが、それと同じくらい重要な要素があります。それは、継続して配信できるか、ということです。
コンテンツマーケティングは、先の触れたように、効果がはっきりと認識されるには、ある程度の時間を要します。どんなに優れたコンテンツでも、単発で終わってしまっては意味がありません。継続して良質なコンテンツを作成し、提供し続けるには、社内にオウンドメディアを運用する体制を整えておかなければなりません。ただマーケティングのトレンドだからと、見切り発車でオウンドメディアを始めてしまった企業の多くは、この体制作りが徹底しておらず、途中で投げ出してしまうケースがほとんどです。
きちんとした効果測定がなされていない
コンテンツマーケティングを効果的に実施する上で、最も重要なことはゴールの設定です。
ゴールと一口に言っても、サイトへのアクセス数、見込み客の獲得、売り上げ増加など様々です。企業が事業の目標を達成する上で、指標の一つとするのが「KPI=Key Performance Indicator (重要業績評価指数)」です。これは、施策が目標達成にどれだけ貢献しているか、プロセスを可視化する上で欠かせません。コンテンツマーケティングにおいては、この効果測定が適切に行われていないと、施策が効果的に行われているか、判断がにぶります。
また、コンテンツマーケティングは、作成・配信して終わり、というものではありません。コンテンツが読者に受け入れられているか、見込み客に適切にアプローチしているかなど、日々見極めながら、絶えずコンテンツを改善していかなければなりません。そのためには、的確な効果測定により、PDCAを効率よく回していく必要があります。現状では、この過程がおろそかにされ、コンテンツマーケティングの失敗の要因になっています。
失敗を避けるために徹底するべきポイント
ここまで、コンテンツマーケティングの失敗例をいくつか、ご紹介してきました。「反面教師」の行動から、施策を成功へと導くヒントが見え隠れしていることにお気付きでしょうか。そうです、単純に解釈すれば、失敗した企業の逆の行動を取れば良いだけです。
では、1つずつ見ていきましょう。
コンテンツマーケティングの目的を明確にする
企業が予算や人員など、限られたリソースを投じて行われる事業は、一定の期間に目標を達成することが前提とされます。コンテンツマーケティング施策においても、到達するべきゴールが明確に示される必要があります。
コンテンツマーケティングの定義を、もう一度、振り返ってみましょう。「コンテンツマーケティングは、~中略~自社の見込み客を引き付け、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています。」
自社サイトの訪問客にとって有益なコンテンツを作成し、提供することにより、訪問客を見込み客に変え、購買行動を促す。これこそが、コンテンツマーケティングを実施する目的です。そして最終ゴールは、企業の売上に貢献することです。到達点が常にはっきりと示されていれば、施策にブレは生じませんし、継続してコンテンツを作成する上で、モチベーションを持ち続けることもできるのです。
読者が欲しいと思う情報を提供する
コンテンツマーケティングは、訪問客が自社サイトのコンテンツに興味を持ってもらうことから始まります。訪問客が欲しがっている情報を常に提供することで、「このサイトに来れば、欲しい情報が手に入る」と思ってもらえればしめたもの。せっかく自社サイトに流入してくれても、自社の製品・サービスのアピールばかりでは、訪問客は離脱してしまいます。そして、再訪してくれる確率は、極めて低くなってしまうでしょう。
「訪問客が抱えている課題は何か」
「訪問客はどんな情報を求めているか」
上記のような観点から、コンテンツの作成方針を設定していくと良いでしょう。
ただ、この作業を行う前に、やっておかなければならないことがあります。
それが、ターゲットの設定です。
ターゲットなる読者を設定する
コンテンツマーケティングにおいては、誰に向けて施策を打つのか、ターゲットを明確にする必要があります。このターゲットを設定する上で、重要となる考え方が「ペルソナ」です。
ペルソナとは、自社の製品やサービスを購入してくれている、架空の人物を指します。ペルソナを定めることにより、おおよその読者像が特定できますし、読者が直面する課題や求めている情報など、作成するべきコンテンツの方針を立てる際にも役立ちます。
コンテンツマーケティングの運用体制を確立する
コンテンツマーケティングは、はっきりとした効果が現れるまでには時間がかかります。コンテンツの質はもちろんですが、継続してコンテンツを作成し、公開していくことが可能かは、施策を成功させる上で重要なポイントです。誰がコンテンツを作成し、公開した後の保守運営を誰が行うのか、担当者を決め、運用体制を確立しておくことが大切です。
効果測定をしっかり行う
コンテンツマーケティングを成功に導くには、まずゴールの設定が不可欠であると述べました。限られたリソースを使って事業を行う以上、、一定の期間で成果を上げなければなりません。出発点からどの位置にいるのか、施策の進捗状況を測るには、効果測定が必要です。
効果として認識される指標は、以下のようなものが挙げられます。
・サイトへのセッション数、ページビュー数、ユーザー数
売上やコンバージョン数を増加させるためには、自社サイトへユーザーに訪問してもらわなければ始まりません。自社サイトがユーザーにどの程度認識されているか、この3つの指標で図ることができます。因みに、セッション数とは、訪問者がサイトに訪れた回数のことで、アクセス数と同義です。1回の訪問で、1セッションとカウントされます。また、ページビュー(PV)数は、訪問客がサイト内のページを閲覧した数を指します。訪問者が1回サイトを訪問し、5ページ閲覧したとすれば、5PVとカウントされます。そして、ユーザー数とは、サイトに訪れた人の数です。
・シェア数
自社製品やサービスを効率よく顧客にリーチする方法として、注目されているのが「トリプルメディア」と呼ばれるものです。ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアの3つを合わせた総称です。このうち、アーンドメディアは、FacebookやTwitterなどのSNSと同じ意味で使われています。自社ブランドがどれだけ認知されているかを目標に設定した場合、公開したコンテンツがSNSにおいて、どれだけシェアされたかはある程度の目安になります。オウンドメディアとアーンドメディアとは相性が良く、作成したコンテンツがSNSで拡散されると、自然検索よりもはるかに多い人数が、自社サイトに訪問してくることもあります。また、シェア数のみならず、「いいね」やコメントの数にも気を配っておくと、自社や製品・サービスのブランド認知度を測る指標として利用できます。
コンテンツマーケティングの適切な実施により得られるメリット
コンテンツマーケティングを効果的に実施することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
顧客の自社に対するロイヤリティが向上する
ロイヤリティとは、「忠誠心」を意味します。そこから派生して、顧客ロイヤリティとは、顧客が企業に対して感じる信頼性や愛着を指します。
顧客に有益な情報を常に提供することにより、顧客は企業に対して親近感を抱き、「この企業の情報なら信頼できる」と感じるようになります。顧客ロイヤリティを高めることは、企業ブランドを向上させることにも繋がります。
ブランドとは、企業と顧客との約束です。すなわち、「この会社の商品なら、必ず満足させてくれる」という証(あかし)なのです。その企業に信頼を感じた顧客は、商品やサービスにも、愛着を抱くようになるのです。
コンテンツが会社の資産になる
通常、製品やサービスを消費者に認知させるのであれば、広告を出稿するのが手っ取り早い方法です。しかし、広告は一過性のものであり、出稿をやめてしまえば、広告効果は長くは続きません。
一方、一度作成したコンテンツは、サイトに掲載し続ける限り、アーカイブとして残ります。ブログ記事や動画などのコンテンツが増えるほど、見込み客が流入する機会も増えます。見込み客獲得のための資産として、永続的に効果を発揮し続けてくれるのです。
まとめ:失敗例から学び、適切なコンテンツマーケティングの実施を
コンテンツマーケティングは、施策する前にしっかり目的を定め、設定したターゲットに向けて適切なコンテンツを作成し、継続して配信することが求められます。そして、コンテンツを公開して終わりではなく、定期的に効果測定を行い、PDCAを繰り返しながらコンテンツを改善していかなければなりません。しかも、施策が成功したかどうか、効果が現れるまでには一定の時間がかかります。
これほど手のかかる手法ですが、適切に実施することで、効果は計り知れません。
今回は、コンテンツマーケティングの失敗事例を、いくつかご紹介しました。
既にコンテンツマーケティングに踏み切ったものの、思うような成果を上げられていないとお嘆きの担当者の方は、これらの失敗例から学び、施策を見つめ直してみてください。
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