コンテンツマーケティングにはどんな方法がある?/そのマーケティング手法について詳しく解説

透明なアクリル板に書かれた「CONTENT MARKETING」の文字」

マス広告の停滞と共に、プッシュ型のアウトバウンドマーケティングは、その効果に限界が見え始めています。その代わりに、その可能性に注目が集まるのが、インバウンドマーケティングです。そして、その概念を実践する手法として、2010年頃からアメリカのビジネスシーンにおいて、大手企業がこぞって導入している手法が、「コンテンツマーケティング」です。

コンテンツマーケティングとは、企業が自社に都合の良い情報を一方的に発信するのではなく、自社の顧客が欲しているコンテンツを、最適な方法で提供することにより、顧客の意識をこちらに向けさせることから始まります。そうして自社に興味を抱いてもらい、最終的には自社の製品・サービスを購入してもらうことが、このマーケティング手法の本質です。

日本では2014年頃から、マーケティング業界でも取沙汰されるようになり、当時は流行りのマーケティング方法として、施策に着手した企業も少なくありませんでした。

しかしその多くが、施策の効果を確認することができず、尻すぼみになってしまうパターンに陥っています。

いずれもその原因は、マーケティングのトレンドだからと、十分な準備もせずに、見切り発車的に施策に手を出したからにほかなりません。

コンテンツマーケティングを成功に導くためには、その本質を理解し、施策の目的を明確に定め、きちんとした手順を踏む必要があるのです。

そこでこの稿では、コンテンツマーケティングという施策において効果を上げるためには、どのような方法があるのか、詳しく解説します。

この記事の目次

「コンテンツマーケティング」の定義と本質を常に意識する

コンテンツマーケティングの施策において、その定義に基づく本質について理解し、常に意識することは、実践する上でとても重要です。

なぜなら、コンテンツマーケティングは、コンテンツをオウンドメディアに投入して完了、という一朝一夕で成果が実感できる手法ではないからです。施策効果を最大化するためには、PDCAを小さく回しながら、コンテンツを最適な形へと修正していく作業が求められます。

その道のりは長く、途中で当初の目標を見誤ってしまう恐れがあります。
何か問題が生じた際には、「何のために、コンテンツマーケティングを始めたのか」という原点に立ち返ることで、施策のブレを防ぐことができます。それには絶えず、コンテンツマーケティングの定義と本質を、わきまえておくことが必要なのです。

コンテンツマーケティングの定義

CONTENT MARKETING INSTITUTEの創始者にして、コンテンツマーケティングの第一人者としても名を馳せるJoe・Pulizzi氏は、コンテンツマーケティングを以下のように定義しています。

「コンテンツマーケティングとは、価値のある一貫したコンテンツを作成・配布することに焦点を当てた、戦略的なマーケティングアプローチです。明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い購買行動を促すことを目的としています」。

ここから、コンテンツマーケティングの施策の目的が浮き彫りになります。
ターゲットと定める顧客に対し、彼ら・彼女らにとって価値のあるコンテンツを継続して提供することにより、自社の存在に気づかせ、自社の製品・サービスに興味を抱いてもらい、最終的には購買行動を起こしてもらうこと、ということになります。

さらに最近では、顧客に対して自社への「ファン化」を促し、SNSを介して自社製品・サービスの拡散をしてもらうことにより、口コミ効果を狙う手法も確立されつつあります。

コンテンツマーケティングの本質

コンテンツマーケティングはご承知の通り、マーケティングの一手法です。マーケティングとは、「企業と顧客とが良好な関係を築き、顧客が自社の製品やサービスを購入し続ける仕組み」を作ることです。

自社のコンテンツマーケティングは迷走していませんか?

コンテンツマーケティングという施策に着手するということは、未開のビジネスフィールドへ踏み出すことにほかなりません。

想像してみてください。
あなたがまだ知らない地へ足を踏み入れようとしたら、まず何が必要ですか。
そう、地図ですね。はじめに、地図を広げて目的地を設定するのではありませんか。
目的地を定めずに動き回ったのでは、それは単なる「迷走」に過ぎません。

ところが、コンテンツマーケティングを始めたばかりの企業では、この迷走状態に陥るケースが多いのです。

「マーケティング手法として注目されているから」と、取りあえずメディアを立ち上げ、社員にブログ記事を書かせてみた、という企業は、既にこの迷走状態の入り口に立っている、と言わざるを得ません。

企業が新たな事業に乗り出す時、大切な資金と人的リソースを投下して、何が得られるのか、事前に十分かつ入念な調査が行われるのは当然のことでしょう。

これから自社が手掛ける、コンテンツマーケティングという施策について、企業活動の目的は何なのか、つまりこの施策により、何を得ることができるのか。これを明確にすることが、目的の設定ということになります。

自社の目的を明確にする

前述したように、コンテンツマーケティングの定義においては、「明確に定義されたオーディエンスを引き付けて維持し、最終的には収益性の高い購買行動を促すこと」が施策の目的とされています。

しかしこれでは、施策の実践においては余りにも漠然としています。そこで、自社にとっての目的を設定することが望まれます。

自社独自のコンテンツマーケティングの目的を定めるということは、「コンテンツマーケティングに何を期待するか」と言い換えることができます。ただこれは、自社が手掛けるビジネスはB to B なのかB to Cなのか、自社が取り扱う商品やサービスは何か、ターゲットとする顧客は誰かなど、企業により異なります。

コンテンツマーケティングの目的を設定する

現時点において、コンテンツマーケティングにどのような効果を望むのか、まだはっきりとは思い浮かばないのであれば、一般的に企業が目論むコンテンツマーケティングの効果に目を向けてみると良いでしょう。

と言ってもこれは、多くの企業がコンテンツマーケティングに求める効果を、最大公約数的に抽出したに過ぎません。自社の施策に落とし込む際は、諸状況を勘案してカスタマイズするようにしてください。

売り上げと業績の向上

1つ目は、「売り上げ数字や、業績の向上」です。利益を追求する民間企業であれば、企業活動の目的は、突き詰めればこれに集約されてしまいます。従って後述するように、最終目標であるKGIと、その時点での進捗を把握するためのKPIを設計し、KPIを当座の目標として認識すると良いでしょう。

認知拡大とブランディング

2つ目は、「自社の存在を、消費者に知らしめること」です。これには、自社ブランドの向上も含まれます。

定義で述べたように、ターゲットと認める顧客に対し、彼ら・彼女らに価値のあるコンテンツを継続して提供することで、自社の存在に気づかせ、自社の製品・サービスに興味を抱いてもらい、最終的には購買行動を起こしてもらうことが、コンテンツマーケティングの施策の本質です。、

そうであれば、はじめの一歩は、コンテンツの力で消費者に自社の存在を気付かせることです。1人でも多くの消費者と接点を持ち、自社や製品・サービスへ興味を持たせることが先決です。今すぐに購入を検討する訳ではなくても、いつかその製品・サービスが必要になった時、真っ先に自社の名前を思い浮かべてもらうことが重要になるのです。

そしてこれは、ブランディングにも通じる考え方でもあります。ブランドとは、企業と顧客との約束です。すなわち、顧客から、「この会社の商品を購入すれば、必ず満足させてくれる」という信頼感を得ることなのです。

新規顧客の獲得と育成

マーケティングでは、消費者の行動や意識は変容するものと捉え、そのプロセスごとに呼び名を変えています。まずは、自社の存在はおろか、自身が抱く欲求にすら気付いていない「潜在顧客」。次に、何が欲しいかは漠然とは分かっているが、今すぐ購入しようとは考えていない「見込み顧客=リード」。そして、する程度、購入の意思が固まり、自社を含めて製品の比較・検討に入っている「ホットリード」。

コンテンツマーケティングでは、それぞれの段階にいる消費者に対し、彼ら・彼女らが今一番求めている情報を、的確に提供することで、次のステージへとステップアップさせることが可能であり、施策の主要な部分でもあります。この一連の手法の流れを、「リードナーチャリング」と呼んでいます。

コンテンツマーケティングでは、日本よりも10年先を進んでいるといわれるアメリカにおいては、シスコシステムズやP&G(プロクターアンドギャンブル)、マイクロソフトなど、世界的に有名な大企業が、コンテンツマーケティングを効果的に活用しています。これらの企業がコンテンツマーケティングを利用する理由として、売り上げ数値の増加、コストの削減に加えて、「企業に忠誠心を抱く、良好な顧客を獲得できる」と述べています。

「企業に忠誠心を抱く良好な顧客」とは、自社や自社の製品・サービスに愛着を感じ、他社とは差別化を図って、常に自社を選んでくれる顧客ということになります。日本でいえば、「お得意様」ということになるでしょう。

コンテンツマーケティングという手法を用いれば、このお得意様を1人でも多く獲得しようという目的を果たすことができるのです。

コンテンツをどのように相手に伝えるか

コンテンツマーケティングを実践する上で、大きなポイントは2つあります。
1つは、優良なコンテンツを作成すること。もう1つは、作成したコンテンツを、どのような手段で相手に届けるか、ということです。

どんなに良質なコンテンツでも、人の目に触れなければ、何の意味もありません。

コンテンツマーケティングは、自社のターゲットとする顧客が、有益と感じるコンテンツをオウンドメディア内で展開する手法です。

このオウンドメディアとは、企業が所有する情報発信用のメディアのすべてを指します。この中には、ネット上で運営される企業サイト、ダウンロード用コンテンツ、メールマガジンはもちろん、紙媒体である会社案内、チラシ、商品の取説、はては営業マンや店頭販売員からの口頭説明、展示会での商品案内など、多岐に渡ります。

顧客が欲している情報を、「いつ」、「どこで」、「誰に」届けるか。自社が持つ情報発信手段を組み合わせ、最適な方法でコンテンツを提供することがコンテンツマーケティングの戦略というものです。

ただ、一般的に取り上げられているコンテンツマーケティングの戦略は、ネット上のサイトにコンテンツを公開し、顧客に配信する方法が多いようです。

ここでは、インターネットを介したコンテンツの配信方法について、見ておきましょう。

既存サイト内のサブディレクトリ型

自社のコーポレートサイトをお持ちでない企業は、現在のビジネス環境において少ないのではないでしょうか。現在のビジネスシーンでは、もはやコーポレートサイトは名刺代わりと言っても良いでしょう。コンテンツの配信方法として、一番手を付けやすいのが「サブディレクトリ型」です。

つまり、既存のサイトにディレクトリを足していく形式で、オウンドメディアを一から立ち上げるよりも難易度は下がります。紙媒体でいえば、本を一冊作るよりも、既に発行している本に内容を付け加えて、改訂版として刷り直す、といった感覚でしょうか。

自社のコーポレートサイトの配下(サブディレクトリ)に、新たにオウンドメディア用のページを取り付けるイメージです。ドメインは、「https://abc.jp/column」といった形になります。

別ドメインのオウンドメディア型

上記のサブディレクトリ型とは反対に、既存のコーポレートサイトとは別にドメインを取得し、独立した形でオウンドメディアを立ち上げるタイプです。

こちらは、コンテンツだけを集めて、共通したテーマに基づき、運営するメディアです。

例えば、ある銀行系のメディアでは、掲載するコンテンツのテーマを「お金」に設定し、生活全般に関わる話題を幅広く取り上げ、シーンごとにかかるお金にまつわる知識を披露しています。

他の媒体へ投稿するパターン

コンテンツに限らず、情報を発信する場合、自社が所有するメディアにこだわる必要はありません。他社が運営するサイトへ、コンテンツを投稿するという方法もあります。

「はてなブログ」※1というサービスをご存知でしょうか?
「はてなブックマーク」というコンテンツプラットフォームを運営する株式会社はてなが展開している、オウンドメディア支援サービスです。「はてなブログ」では、操作性に優れ、柔軟な記事編集画面などがはじめから装備されており、サイトを自社で一から構築するよりも安価にオウンドメディアを立ち上げることができます。

また、月間1億4千万を超えるユニークブラウザを持つプラットフォームを足掛かりに、複数のユーザーコミュニティにアプローチできるほか、「はてなブックマーク」との相乗効果により、企業一社のオウンドメディアでは達成できないほどのリーチ数を獲得することが可能です。

既存メディアを利用すれば、独自ドメインを取得して、一からWebサイトを立ち上げる、という時間もコストも削減できます。

ただ、既存メディアを使用するということは、他社の用意した場所に間借りするようなものです。こちらの意図に沿わないことがあっても、自由にならないケースもあります。例えば、用意されたサイトデザインのテンプレートが気に入らなくても、勝手に変更することはできません。これは、賃貸マンションで借りた部屋の内装を、勝手に変えることができないのと一緒です。

また、既存メディアによっては、商用利用は不可などの制約がある場合も多いようです。あるいは、突然にサービスの提供を停止する、ということもあり得ます。

部屋を間借りしている人は、共同住宅には付き物の色々な制約に忍従を強いられている方が多いでしょう。そういう方たちは、「いつか一戸建てに住みたい」と願うのではないでしょうか。これはオウンドメディアでも、同様の状況が推察されます。つまり自社に、コンテンツマーケティングに投入する予算がある程度あるなら、独自ドメインを取得して、自社でオウンドメディアを運営する方が賢明な選択と言えるでしょう。

※1「はてなブログ」
https://hatenablog.com/guide/corporation

オウンドメディア開設前に準備するもの

ここからは、自社で独自にドメインを取得して、オウンドメディアを開設することを想定して話を進めます。

サーバーの準備

自社のメディアを立ち上げるにあたり、まず準備するものはサーバーです。サーバーとは、ネットワーク上で接続されたコンピュータ同士で、データファイルをやり取りするコンピュータやプログラムを指します。

このサーバーが介在することで、世界中どこからでも、情報の受発信が可能になりました。と言っても、よほどの大手企業でもない限り、自社で専用サーバーを用意することは稀です。ほとんどの企業は、独自ドメインを取得する際に、レンタルサーバーの使用契約を結んでいます。

既存メディアのサービスを利用するのであれば、サーバーは無料、あるいは有料でもかなり低額で使用できます。しかし、メールの送受信サービスが皆無であったり、PHPなどのプログラミングを活用した、動的Webページが出力できないなどの制限もあります。

その点、レンタルサーバーであれば、独自ドメインを紐づけることで、自社のドメインメールを取得して、メールのやり取りが可能になります。そしてサーバーに、PHPがインストールされている場合は、PHPを利用した動的サイトの作成も視野に入れられます。

レンタルサーバーを選ぶ際に、留意したい点が2つあります。

1つは、自社のオウンドメディアで何がしたいのか、明確にすることです。自社サイトを立ち上げる時、レンタルサーバー選びで失敗しやすいのが、必要のない機能まで装備されたマシンを選択してしまうことなのです。これは、一度も使用しない機能に、無駄な金額を払ってしまうことになってしまうからです。

もう1つは、借りようとしているレンタルサーバーが、SSL対応しているかどうかです。インターネットを経由したデータ通信は、常に悪意の第三者の目に晒されていると思ってください。SSLとは、「Secure Sockets Layer」の略で、インターネット上の通信を暗号化するテクノロジーです。

SSL対応のサーバーならば、データ通信は暗号化されているので、個人情報の改ざんや流出などは、未然に防止することができます。自社サイトのセキュリティを強化することで、ユーザーは安心してアクセスすることが可能になります。

個人情報が容易に、外部の第三者にハッキングされる時代。自社サイトへの来訪者を、情報漏洩というリスクから守ることは、オウンドメディアを運営する側の義務にほかなりません。

CMS=Content Management System

コンテンツマーケティングを本格的に展開するならば、それ相当のスキルと知見を有するプロに任せるのが一番です。

ただ、テキストベースのブログ記事の更新や画像の差し替え、サイトデザインの簡単なレイアウト変更などであれば、コストや効率面からみて、社内の担当者が行った方が良いでしょう。

しかし、まったく知識のない人であれば、HTMLなどのプログラミング言語の勉強や、ウェブデザインの習得に時間と経費を取られ、本業に充てる時間が削られてしまいます。そこで上手に利用したいのが、「WordPress」や「Mobile Type」などのCMSです。

CMSの種類はいくつかあり、その中でも「WordPress」※2は、世界中で多くの人々に利用されています。WEBの知識がない方でも、容易にWEBサイトを作成することができます。ソフトウェアは操作性や利便性に優れ、利用は基本無料です。多種類のプラグイン機能を使えば、自社のコーポレートカラーを利用したデザインにカスタマイズすることも簡単にできます。さらに複数の人間による編集も行えるので、スマートフォンやタブレットを操作して、あらゆる場所から記事を投稿・修正することも可能です。

一方の「Mobile Type」※3は、コンテンツを構造化して管理し、入出力を簡素化した、コンテンツの拡張性に富んだCMSです。コンテンツタイプのフィールド作成により、誰でも操作しやすい投稿画面が作成され、構造化されたデータが作成できます。また、これまでのエディアに加えて、ブロックエディタを搭載。これにより、使いやすさと、コンテンツの可用性(=システムが稼働し続ける能力)の両立を実現しました。

※2「WordPress」
https://wordpress.com/ja/

※3「Mobile Type」
https://www.sixapart.jp/movabletype/

目標達成のため、施策の進捗を測るには?

コンテンツマーケティングとは、オウンドメディアにおいて、コンテンツによりサイトへの集客を図り、リードナーチャリング、購買への誘導、ブランドの向上までを行う、マーケティング手法の一つです。企業の事業活動である以上、一定の期間に、期待された成果を上げる必要があります。

「やってみたけど、効果はありませんでした」、あるいは「ブログは更新していますが、どんな成果があるのか分かりません」では、済まされません。

現在行われている施策は、どのような目標に向かって、どの程度進んでいるのか、きちんと把握しておかなければなりません。そうでなければ、それこそ、施策は迷走してしまいます。そしてその挙句に、「効果があるのか無いのか、判断できない活動に、これ以上、資金も人員もかけられない」ということになり、コンテンツマーケティングからの撤退という事態にもなりかねないのです。

このようなことを防ぐため、コンテンツマーケティングを実践する前に、具体的な目標を設定する必要があります。この指標を、「KGI=Key Goal Indicator」、重要目標達成指標と呼んでいます。

そして、このKGIを達成する上で、施策がどの程度進行したか、達成度を定量的に測るための指標が「KPI=Key Performance Indicator」、すなわち重要業績評価指標です。

コンテンツマーケティングにおけるKPIとは?

そもそも経営上の概念であり、営業部門や人事部門などで、事業実績を評価するために活用されてきたKGIとKPIですが、コンテンツマーケティングという施策においても、重要な役割を果たしています。

何を達成目標に定めるかによってKPIは異なる

コンテンツマーケティングという手法により、何を達成したいのか。その最終目標がKGIであり、そこへ至るまでの中間指標がKPIです。

目的地が変更されれば、ルートやアクセス手段も変更されます。コンテンツマーケティングの目的は、前述したように、大まかに3つに分けられます。「売り上げ数字の増加」、「自社の認知拡大とブランディング」、そして「新規顧客の獲得と育成」ですね。それぞれに、何を指標=KPIにすればよいか、見ておきましょう。

①売り上げ数字の増加

政府組織や非営利団体でもない限り、企業の活動目的は、売り上げを向上させることに尽きます。コンテンツマーケティングの他の2つの目的も、突き詰めれば、売り上げ数字の増加のためにあるのです。

ただ、コンテンツマーケティングにおいて、売り上げ数字をKGIに設定してしまうと、あまりに大雑把なため、進捗を測る上で必要なKPIの設定が難しくなってしまいます。そこで通常は、新規顧客の獲得から育成までをコンテンツマーケティングが担い、ホットリードとなった顧客のリストは、インサイドセールス部門や営業部門が引継ぎ、成約に結び付けるという図式が成立するのです。

そもそも、取り扱う商材がB to B 向けである場合、購買を左右する意思決定者は複数おり、販売額が高額であることから、オウンドメディア上で完結することはありません。これは、B to Cにおいても、例えば住宅や高額な金融商品などであれば同様です。

従って、ここで述べる売り上げの増加とは、ターゲット顧客が意思決定者で、美容品や健康食品など、比較的安価に購入できる商材に限られます。この場合、購入数がKGI、資料請求や会員登録を行ったユーザーの購入率をKPIとして設定します。こうすることにより、顧客の購入状況を把握することができるからです。

例えば、会員登録数が増え、購入数も増えていれば、新規の購入者が増加していることが分かります。また、購入数が増えているのに、会員登録数が増えていなければ、以前の新規購入者がリピーターとなり、購買してくれたことを意味します。反対に、会員登録数が増えているのに、購入数が減少しているなら、コンテンツが適切に作成されていないか、ターゲットに正しく訴求されていない、との分析ができる訳です。

②自社の認知拡大とブランディング

自社の存在を多くの消費者に広めたい、あるいは自社ブランドを向上させたいのであれば、KGIにはWebサイトのPV数や、SNSにおけるインプレッション数が挙げられます。

そうすると、KPIにはWEBサイトのセッション数、ユニークユーザー数、SNSで記事投稿した際のフォロワー数などが設定されるでしょう。

因みに、PV=Page View (ページビュー)とは、そのサイトがユーザーにどれだけ認知されているかを測る指標です。ブラウザ上にWEBページが表示されれば、「1PV」とカウントされます。例えば、10人のユーザーがサイトのトップページを訪問すれば、その時点でPV数は10カウントとなります。さらに3人がページAを、2人がページBを、もう3人がページCを閲覧すれば、PV数は合計で18PVということになります。

また、セッション数とは、特定期間内にWEBサイト上で発生した、ユーザーによる操作のことを意味します。1回のセッションには、複数のページ閲覧、イベント、「Face book」の”いいね”などのソーシャルインタラクティブ、eコマースにおける注文回数などが含まれます。ユーザーは、1人で複数のセッションを行うことが可能です。複数のセッションは1日で起こることもあれば、数日、あるいは数か月置いた後に再度開始されることもあります。セッションには有効期限があり、1回のセッションが終了した時点で、次のセッションが新しくカウントされます。セッションは、下記のいずれかで終了とみなされます。

a.何の操作も行われず、30分が経過した場合。

b.午前0時を過ぎてから、再度の操作があった場合。

c.ユーザーが、あるキャンペーンを経由してサイトに訪問し、離脱後に別のキャンペーンを介してサイトに再訪した場合。

ユニークユーザー数=UU数とは、一定の期間内にサイトを訪れたユーザーの人数を指します。あらかじめ決められた期間内(集計期間内)であれば、同一ユーザーがサイトを何回訪問しても、「1UU」としてカウントされます。つまり、自社サイトに関心を持っているユーザーが何人いるか、推定する指標になるのです。

③ 新規顧客の獲得と育成

最後に、新規顧客の獲得とリードナーチャリングを目的にした場合です。この場合は、KGIにはSNSアカウントのフォロワー数、会員登録数、資料請求数、問い合わせ件数、メールマガジン登録件数などが設定されます。

そうなると、KPIには、会員登録および資料請求ページのPV数、セッション数、ユニークユーザー数が挙げられます。さらに既存顧客の育成が目的であれば、既存顧客のリテンション率や、エンゲージメント率がKPIに加わります。

【リテンション率】

リテンションとは、英語で「保有」または「維持」を意味し、マーケティング用語でリテンション率とは、「既存顧客維持率」と訳されています。リテンション率は、自社サービスが既存顧客にどの程度定着しているか、数値で表した指標です。つまり、リテンション率を維持・向上できれば、顧客満足度も高い水準を保ち、良好な関係を築いている証拠となるのです。

リテンション率は、計算方法は以下の通りです。
リテンション率=(集計期間終了時の顧客数-集計期間中に獲得した顧客数)÷集計期間開始時の顧客数×100

ここで例題です。
集計を開始した時点で、顧客は100人いたとします。集計が終了した段階で、顧客は30人増えましたが、集計期間中に10人が解約しました。このパターンでは、計算式は(110-30)÷100×100=80となり、リテンション率は80%ということになります。

【エンゲージメント率】

Engagement=エンゲージメントとは、和訳すると「契約」、「約束」、「婚約」という意味になります。マーケティングでは、「深いつながりを持つ関係性」を指し、愛着を伴うつながりの度合いを表す用語であり、そこから派生して、顧客との関係性を強化し、売上の向上に結び付けることを、「顧客エンゲージメント」と称しています。さらに、その企業に対する顧客の愛着度を、数値で定量的に表した指標を「エンゲージメント率」と呼んでいます。

エンゲージメント率の測定方法として、以下の方法が考えられます。
1つは、Webによるアンケートです。
これは、「Net Promoter Score=ネットプロモータースコア」というもので、頭文字を取って「NPS」と名付けられています。算出方法としては、「この製品・サービスを、あなたの知人にどの程度薦めたいですか」という問いかけに対して、0から10の段階で回答を求めます。次に回答結果から、顧客を3つの段階に分類します。
0~6:批判者
7~8:中立者
9~10:推奨者
「推奨者の割合」-「批判者の割合」=NPS(%)

NPSが高いほど、その企業の商品・サービスに対する顧客エンゲージメントが、向上していることを表しています。

もう1つは、SNSによる測定方法です。
FacebookやTwitterなど、SNSの利用者数が拡大する中で、企業に対する消費者の動向も推し測ることが可能になりました。企業が自社のアカウントを通して投稿した内容に対し、ユーザーがどのようなアクションを起こしたかを算出することで、エンゲージメント率を測定できます。この稿では、FacebookとTwitterにおける、エンゲージメント率の計算方法をご紹介します。

「Facebook」
Facebookにおけるエンゲージメント率は、エンゲージメント数を投稿がリーチした人の数で割った数値で表します。

Facebookでのエンゲージメントは、ユーザーが、「いいね」、「シェア」、「コメント」、「クリック」のいずれかのアクションを起こした時にカウントされます。
これらのアクションが多いほど、エンゲージメント率は高いことを示しています。

管理画面の、「投稿のエンゲージメント」をクリックすると、投稿ごとにリーチ数、アクション内容、エンゲージメントなどを確認することが可能です。

「Twitter」
Twitterにおけるエンゲージメント率は、twitterがエンゲージメントとして集計している総数を、インプレッション数で割ったものです。

エンゲージメントは、「クリック」、「返信」、「フォロー」、「リツイート」、「いいね」の5つのアクションでカウントされ、これらの総数で計算します。

これに対してインプレッションは、ツイートがユーザーに見られた回数です。1人のユーザーが、そのツイートを複数回閲覧したとすれば、その都度カウントされます。管理画面の「アナリティクス」を見れば、エンゲージメント率を確認することができます。

コンテンツの作成

コラム記事型コンテンツ

コンテンツマーケティングのコンテンツでは、コラム記事型は最もポピュラーな形です。テキストベースのコラム記事は、誰でも容易に始めることができますし、目的に応じて書き分けることで、1つのテーマを幾つものコンテンツとして再利用することが可能です。
コラム記事型は、いくつかに分類できます。

①お役立ち系コラム

コラム記事型の中では、多くの企業が採用しています。大半のユーザーは、自分が何かについて知りたいと思い立ったら、まずインターネットの検索機能を使って調べようとします。検索キーワードにヒットしたサイトを訪問し、求める情報が見当たらなければ、別のサイトへと移行してしまうでしょう。

ただ、もしそのサイトに、いわゆる「お役立ち情報」が掲載されていたらどうでしょう。サイトを訪問したユーザーは、気に留めるかもしれません。コラム記事を一読してくれれば、それだけでも、来訪者のサイトでの滞在時間を延ばすことができます。ユーザーがブックマークを付けてくれれば、何度もサイトを訪れてくれるでしょう。ユーザーに自社の存在を認識してもらい、取り扱う商品やサービスにも関心を寄せてもらえれば、コンテンツの役割は果たしたも同然です。

コンテンツマーケティングにおいて、一定の成果を上げている企業サイトの多くは、お役立ち系記事を積極的に取り入れています。

例えば、ある化粧品メーカーが運営しているオウンドメディアでは、サイトのコンセプトを「美」と捉え、「健康」、「食」、「コスメ」、「エステ」、はては「女性の生き方」まで、およそ美にまつわるコラム記事を豊富に取り揃えています。訪問者がコスメや食に意識の高い、この企業がターゲットとする若い女性であれば、つい読んでしまいたくなるような内容ばかりです。

②面白系・バズり型コラム

インターネットの普及と共に、消費者の情報発信力は爆発的に高まりました。
自分が面白いと思ったネタは、SNSなどを介して、すぐに拡散できるようになりました。ある事柄が、インターネット上の口コミを通して、各種のメディアで取り上げられるさまを、「バズる」といいます。

コラム記事型コンテンツの中でも、SNSでバズることを目的に作られたものは、「バズりコンテンツ」と呼ばれています。自社の公開したコンテンツが、SNSで上手にバズることができれば、広告費用をかけずに情報拡散することができます。また、拡散された情報を目にした他のユーザーが、興味を抱いてサイトに訪問してくることもあるでしょう。面白系・バズり型コラムは、意図した情報の拡散以外にも、サイトへの自然流入を増加させる効果が見込めるコンテンツでもあるのです。

③アンケート・調査系

ネットリサーチを駆使し、消費者へのアンケート調査の結果を公開しているサイトが多く見受けられます。事実に基づいて書かれた記事は、読者の信頼性が高く、注目を集めやすいコンテンツとして認識されています。

「Questant」※4や「Google フォーム」※5など、無料で提供されるテンプレートを使って、自社の製品やサービスについて満足しているか、していなければその理由は何かなど、顧客の率直な意見を募ることができます。顧客の生の声は、製品の向上に活かすことができるほか、アンケートの集計結果に自社の意見を交え、読者に公表することにより、1つのコンテンツ記事として成立します。

※4「Questant」
https://questant.jp/

※5「Google フォーム」
https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/

④経営者・社員インタビュー

こちらは、社内にあるリソースを有効に活用し、記事に反映させる好例と言えるでしょう。経営者へのインタビューでは、創業から続く企業理念や、事業を通して社会へ伝えたい想いなど、トップだからこそ語ることのできるメッセージを聞き出しましょう。

また社員には、その会社で働くことでどのような喜びや、やりがいが得られるか、あるいは仕事で苦労したことや失敗談など、人となりや職場の雰囲気がイメージできるエピソードを聞いて記事にまとめます。

主に採用サイト向きのコンテンツですが、「企業は人なり」というように、働く人たちの素顔がうかがえる記事は、会社のカラーがにじみ出るものです。
経営者が語る企業理念や思いに共感した顧客が、自社と他社との差別化を図り、
自社製品を購入し続けるきっかけにもなり、顧客エンゲージメントの醸成にも役立ちます。

コラム記事型以外のコンテンツ

オウンドメディアで展開するコンテンツは、これまではテキストベースのコラム記事が主流でした。しかしコンテンツは、コラム型だけではなく、動画や音声など、色々な種類が存在します。

数多くのコンテンツの種類を知り、豊富な選択肢を持っておくことにより、コンテンツマーケティングにおける戦略の幅を広げるようにしておきましょう。

①ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、企業である課題を抱え、打開策を知りたいと考えている担当者に対して書かれた報告書、という捉え方ができます。

その企業が独自に行ったアンケートや調査結果、あるいは自社製品の導入事例、商品の使い方の解説など、多岐に渡ります。ホワイトペーパーは、自社が扱う商品・サービスについて、開発者や技術担当者の見解を文書化したものも多く、サイト上では公開しきれないほどのボリュームと、より専門的な内容が詰まっています。映画に置き換えると、WEBサイトに掲載されている記事は予告編、ホワイトペーパーは本編、ということになります。

そして、ホワイトペーパーの入手方法には、ある工夫が凝らされています。サイト内の記事の内容に沿って、関連キーワードに近い場所へクリックボタンを設置しておき、それ以上の情報を欲している読者を入力フォームへと誘導するのです。

入力フォームでは、読者は「氏名」、「年齢」、「所属している業界・業種」、「企業名」、「連絡可能な電話番号」など、個人情報の入力を求められます。企業側はこれらの情報を、ホワイトペーパーの提供と引き換えに獲得できるという寸法です。

企業側は、読者を単なるサイトへの来訪者か、見込み顧客=リードの可能性のあるユーザーか、見極めたいと考えています。「個人情報を差し出してでも、製品の詳細情報が欲しい」という意思を読み取り、単なる読者からもう1つ上のステップである、見込み顧客=リードになる見込みあり、という判断をしているのです。

②動画コンテンツ

その訴求力の高さから、今後ますます注目が集まるものと思われる動画コンテンツ。文字や静止画のみのコラム記事に比べ、動きや音声の効果により、視覚や聴覚に訴えかける効果は抜群です。文書だけでは伝えづらい、商品の説明や取り扱い方法、事例の紹介などには、その情報量の多さから、動画はより適しています。

しかし、文書に起こせばすぐに公開できるコラム記事とは異なり、動画の作成には、色々と準備や時間、場合によっては金銭的なコストがかかります。クオリティを追求するのであれば、それ相応の撮影・編集技術が必要になり、外部のプロダクションに作成を依頼するとなると、さらに費用が発生することになります。

ただ動画は、一度完成してしまえば、オウンドメディアで配信するのはもちろん、WEB広告で活用したり、SNSで公開したりと、コンテンツの活用の幅は拡大するでしょう。

③メールマガジン

メールマガジンは、コンテンツマーケティングがビジネスシーンで利用される以前から、顧客をつなぎとめるツールとして活用されてきた手法です。

企業サイドから、伝えたい情報を不特定多数の相手に、一斉に届けることが可能です。

インサイドセールスなどでも利用しているように、うまく使えば、リードナーチャリングにも効果を発揮するコンテンツではあります。ただし、他のコンテンツに比べると、プッシュ型としての性格が強く、相手が関心を持たない内容のメールを執拗に送ると、企業への心証は悪くなってしまうので、配信の頻度はさじ加減が難しいところです。

④ランディングページ

「Landing Page=ランディングページ」には2つの意味合いがあり、1つは、そのサイトを訪れる読者が、最初に閲覧するページを指します。もう1つは、リスティング広告やSNSを見たユーザーが、バナーやリンクをクリックして訪れる、商品・サービスの情報に特化したページを意味します。

コンテンツマーケティングにおいては、通常、ランディングページと言えば、後者の意味で使っています。ランディングページは、ページ訪問者に対し、ある特定のアクションを起こしてもらうことを狙って、作成されているのです。

ページ訪問者に起こして欲しいアクションの一つには、商品についての問い合わせがあり、これは売り上げに直結する行為です。また、もう一つのアクションとしては、サンプルの申し込みや無料の会員登録が挙げられます。これにより、潜在顧客の個人情報を入手できるのです。さらには、展示会や説明会など、イベントへの参加勧誘があり、これは見込み顧客の獲得が見込まれます。

企業側は、サイトへの訪問者は当初から、商品・サービスについて関心を持っているものと想定しています。従って、ページに掲載されるコンテンツは、該当する商品・サービスのみの情報に絞られているものです。そして、他のページへ遷移してしまわないように、ランディングページ以外のページへのリンクを省いて、訪問者を囲い込んでしまうのです。そうすることにより、CVR=Conversion rate、つまりコンバージョン率を上げることができるからです。

⑤セミナー

コンテンツマーケティングにおいては、セミナーの開催も、強力なコンテンツと捉えられています。セミナーへの参加者にしてみれば、自身が抱える疑問に、専門家が直接答えてくれる、めったにないチャンスです。また、普段なら会えない有識者と、対面でやり取りができる機会も与えられるのですから、一石二鳥のイベントです。

ただ、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、リアルなセミナーは敬遠されがちで、WEB上でのオンラインセミナーが主流となっています。ウェブとセミナーとの造語である「ウェビナー」という言葉も、この2年間ですっかり定着したように見受けます。

少し古い資料ですが、前出したCONTENT MARKETING INSTITUTEが2017年に、アメリカの企業にアンケートを実施し、その結果を「2017 TECHNOLOGY CONTENT MARKETINGS Benchmarks, Budgets, and Trends -North America」※5という調査報告書にまとめています。

それによると、アンケートを受けたアメリカ企業の約95%が、 コンテンツマーケティングの手法を取り入れていると回答しています。

またその中で、「成功に不可欠なコンテンツは何か?」との質問に対しては、全体の57%が「ブログ」と回答し、「eブック/ホワイトペーパー」と「オンラインセミナー(ウェビナー)」が49%で、「ソーシャルメディア」の40%を抑えて第2位となりました。

※5
「B2B CONTENT MARKETING 2017 Benchmarks, Budgets, and Trends -North America」
https://contentmarketinginstitute.com/wp-content/uploads/2017/03/2017_Technology_Research_FINAL.pdf

オンラインセミナーでは、主催者と参加者との双方が、パソコンあるいは、スマートフォンの画面を通して、お互いの顔を見ながら会話します。これにより、主催側は参加者に、実際の会場にいるようなライブ体験を与えることができるのです。参加者は、プレゼンターに直接質問したり、参加者同士で会話を交わしたりと、双方向なやり取りができることが強みです。

また、参加希望者に対しては、事前に資料をアップロードしたり、WEBのURLを伝えてセミナーの告知を行うことが可能です。セミナーの開催中でも、話の内容に応じて資料を差し替えたり、追加のファイルを共有することができます。

さらに主催者側は、オンラインセミナー開催中に、参加者の動向をリアルタイムで観察することができます。ネットを介して、参加者が双方向的な体験ができるため、プレゼン中のコンテンツについての関心度合い、参加度合いをリアルにモニタリングすることが可能なのです。

セミナーの内容は録画しておくことにより、後日、欠席した参加希望者もコンテンツを参照できます。録画したセミナー内容は、自社オリジナルの動画コンテンツとして、オウンドメディアで配信したり、SNSで公開したりと、二次利用、三次利用が見込めます。

オンラインセミナーでは、参加者はリアルに会場に行く必要がないので、オフィスやカフェなど、都合の良い場所から視聴が可能です。移動時間が節約できるため、オンラインセミナーを視聴する前後に、リモート商談やミーティングをセッティングすることもできます。これまで、セミナーへ参加する場合は、半日あるいは一日がかりでしたが、オンラインによる開催であれば、ネット環境とPCがあれば参加できるので、仕事のスケジューリングも柔軟にできます。このような理由から、オンラインセミナー参加へのハードルも低くなっているようです。

ペルソナの設定と購買行動モデルへの理解

コンテンツマーケティングの本質は、ターゲットとする顧客に対し、価値のあるコンテンツを最適な形で届けることにより、こちらが意図する行動を顧客に取らせることです。

ここで、2つの疑問が生じます。1つは、「誰にとって価値のあるコンテンツなのか」ということ。もう1つは、「最適な形」とはどのような状況か、ということです。
この2つの疑問に答えるために、基本となる考え方が、「ペルソナ」の設定と「消費者の購買行動モデル」です。

「ペルソナ」の設定

自社の製品・サービスを本当に必要としている、購買行動が期待できる人物は誰なのか。この人物像を導き出す上で、大きな役割を果たすのが、「ペルソナ」の設定です。

ペルソナとは元来、古典劇で役者が被る「仮面」を意味します。心理学では、「人の外的側面、自分の内面に潜む自分」と定義されています。そこから派生して、マーケティングでは、「架空のユーザーの姿・人物」をイメージする用語と解釈されています。

ユーザーの年齢、性別、職業、収入、居住地など、数値化できる定量的なデータに加え、趣味・趣向、悩みなど、数値化しにくい定性的なデータまで、思いつく限りの要素を盛り込み、血の通った人物像に仕上げることが必要になります。これにより、誰にどのようなコンテンツを、どんな手段で提供するべきかが明確になります。

「消費者の購買行動モデル」を理解する

マーケティングにおいては、企業がターゲットとする消費者は、購買行動プロセスのどの位置にいるかで幾つかに分類されます。

マーケティングでは、消費者を理解する上で欠かせないコンセプトがあります。
それが、「AIDMA理論」です。1920年代、アメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏が提唱した考え方です。「Attention=注意」、「Interest=興味」、「Desire=欲求」、「Memory=記憶」、「Action=行動」の頭文字を取ったものです。

消費者ははじめに、ある企業や取り扱う製品・サービスの存在を知り(Attention)、
興味を抱き(Interest)、手に入れたいと思うようになります(Desire)。そしてそれを記憶し(Memory)、最終的に購買行動に至る(Action)という一連のプロセスを辿ります。この流れの中で、Attentionの段階にいる消費者を「潜在顧客」、Interest、Desireの段階にいる消費者を「見込み顧客=リード」、その後、「Memory」を経て、「Action」つまり、購買行動を起こす消費者を「顧客=ホットリード」というように分類することができるのです。

ただ、この購買行動プロセスは、企業が情報発信する際に、マス媒体が十分に機能していた時代に通用したものです。

2000年代に入ると、インターネットが普及するにつれて、消費者は自ら行動して情報収集に積極的になります。これに伴って、購買行動プロセスも大きく変化を遂げました。マーケティングでは、その変化をいち早く反応して、新たな理論が提唱されました。それが、「AISAS理論」です。

「Attention=認知」、「Interest=興味・関心」、「Seach=検索」、「Action=行動(購入)」、「Share=共有(拡散)」の5つの購買行動モデルです。

ここで重要なことは、新たに「Seach=検索」と「Share=共有(拡散)」が加わっている点です。それまでは、企業が情報を発信する場合、自社製品やサービスのアピールポイントなどを、マス媒体を利用して一方的に伝達する形が主流でした。いわゆる「プッシュ型」の広告であり、消費者は受け手に甘んじていたのです。

ところがインターネット環境が整い、消費者がパソコンやスマートフォン、タブレットなどの電子ツールを使いこなすようになると、状況は一変します。消費者がある商品について知りたいと思った時には、電子ツールを駆使して、能動的に情報を集めるようになりました。これにより、情報のやり取りにおいては、企業側と消費者側との間に、対等な関係が成立したのです。

そして、インターネットを介した情報検索の進化とともに、消費者の情報発信力も爆発的に向上しました。マス広告主流の時代には、AIDMA理論において、購買行動プロセスは行動(購入)で完結していましたが、AISAS理論では、購入した後の消費者行動にも目を向けています。

消費者がある企業の商品・サービスを購入し、満足が得られれば、レビューやSNSなどで評価を拡散するのが一般的になりました。そのレビューや評価を見た別の消費者は、該当する商品・サービスを知らなければ、取り扱っている企業のサイトを訪問して、自分の力で情報を集めるでしょう。この消費者同士が起こす連鎖は「口コミ効果」と名付けられ、AISAS理論では、「Share=共有(拡散)」と称されています。企業側はここまでを想定して、マーケティングの施策を設計しなければなりません。

コンテンツマーケティングは、潜在顧客を見込み客に変え、商品を購入する顧客に育て、最後は自社のファンにして、製品・サービスを他人に薦めてもらう仕組みを作ることでもあります。それぞれの段階の顧客が求める情報を、コンテンツとして作成し、最適なタイミングで提供することが重要になるのです。

購買行動プロセスに沿ったコンテンツを提供する

ここまで、コンテンツマーケティングの目的を設定することと、コンテンツの種類を理解することの重要さについて説いてきました。ここからは、どのコンテンツを、どのようなタイミングで提供するべきか、顧客の購買行動プロセスと照らし合わせて考えてみることにします。

認知フェーズ

この段階では、自社が見込み顧客と認めるターゲット顧客に対し、オウンドメディアで彼ら・彼女らが興味を持ちそうな記事を作成し、公開することにより、PV数を増やすことが大切です。

このフェーズに相応しいコンテンツは、コラム記事型です。また、コンテンツの伝達ルートは、自社サイト、サイトのSEO対策による検索流入、メールマガジン、リスティング広告、SNSなどが挙げられます。

興味/関心フェーズ

このフェーズでは、自社のオウンドメディアで、記事を読んだ見込み顧客=リードに対し、その記事で扱ったテーマについて、さらに深く理解してもらうために、より詳細な解説を行ったり、セミナー(オンラインセミナー)への参加を促すなど、相手の興味や関心をさらに喚起させることが望ましいでしょう。

この段階で求められるコンテンツは、ホワイトペーパー、動画コンテンツ、セミナー(オンラインセミナー)などです。伝達ルートは、ポップアップ画面から誘導する申し込みフォーム、サイト内にあるバナー広告などです。

比較検討フェーズ

この段階までに及ぶと、リードは自社の認知と共に、商品・サービスへの関心も徐々に高まっているでしょう。消費者がある商材に興味を抱いた時、起こす行動は他社との比較です。比較する項目は商品パフォーマンス(機能)、デザイン、プライスなど多岐に渡るため、詳細なデータと画像などで、ホワイトペーパーをきちんと作り込んでおいてください。また、商品の取り扱い説明や操作方法などは、動きと音声を加えた動画で、より分かりやすく表現すると良いでしょう。もちろん、セミナー(オンラインセミナー)への勧誘をメールで行うなど、キャンペーンの告知や特典の付与なども、継続して配信するようにしましょう。

購買検討フェーズ

リードは、現時点では自社や自社製品・サービスに興味を持たない「コールドリード」と、購買まであと一歩のところまできている「ホットリード」に分けることができます。とは言え、本来、両者は別々に存在するのではなく、はじめはコールドリードでも、「育てる」ことにより、徐々にホットリードへと変えていくことが可能なのです。このコールドリードを、ホットリードへと育てることが、「リードナーチャリング」と呼ばれる行為です。

ここまで、各購買行動フェーズに合わせ、自社のオウンドメディアにおいて、お役立ち情報や、課題解決に結び付くコンテンツの提供を通して、リードにどのような利益が得られるか、より明確にイメージさせてきました。これにより、リードの購買意思はより高まり、具体的な購買へと動いていくことになります。この時点で、コールドリードはホットリードへと昇華し、成約確度の高いリードのリストが完成するのです。

その後は、このリストをもとに、オペレーターが電話やメールを利用して、リードへ適時にコミュニケーションを重ね、購買意欲を少しずつ高めていく手法が取られます。この手法は「インサイドセールス」と呼ばれ、大手企業では、マーケティング部門と営業部門との間に、独立したインサイドセールス部門が設置されているケースが多いようです。

インサイドセールスでは、オペレーターがリードに架電した際、話しぶりから興味の度合いを探り、口頭によるフォローを行います。必要に応じて資料を送付するなどして、臨機応変に対処します。ケースバイケースですが、この時点で逆にオウンドメディアのコンテンツを案内することもあります。既に、リードは購買意欲を強くしているのですから、自社の製品・サービスを購入することにより、どのように課題解決に結び付いたのか、具体的なイメージを呼び起こす事例の紹介など、背中をもう一押しするようなコンテンツが求められます。

共有/拡散フェーズ

IT技術の発達と、インターネットの社会への浸透に伴い、消費者はSNSなどを介して、大きな情報発信力を手に入れました。ある商品を購入して、期待した以上の満足を得られれば、消費者はその気持ちを、TwitterやInstagramなどのSNSで拡散するでしょう。そして、その拡散された情報は、他の消費者が目にすると、利害関係のない第三者からの情報として、信頼性が増すことになります。これが、「口コミ」と呼ばれる現象です。口コミ効果は、新規顧客の獲得に貢献するほか、既に購入した顧客をさらに惹きつけ、自社ブランドの向上に繋げることも可能です。

SNSによる情報の拡散は、顧客の自主的な行為であるため、企業側の思い通りにはなりません。自社の製品・サービスにより、ユーザーエクスペリエンスを高めることで、顧客は自身の体験を他者と共有しようとするのです。企業側としては、購入後のアフターフォローの充実や、製品の今後のバージョンアップ情報の開示など、顧客が欲しがりそうなサービスを、先回りして提供することで、顧客によるSNSでの拡散を促すことができるでしょう。

コンテンツマーケティングにおける効果想定

コンテンツマーケティングは、コンテンツを作成・配信して完了という施策ではありません。ターゲットとして定めた顧客に対し、配信されたコンテンツが効果を上げているか、定期的に測定することが必要になるのです。

コンテンツマーケティングでは、自社サイトへの訪問者が、サイト内でどのような行動を取ったか、その現状分析が欠かせません。

それには、訪問者にどのような行動を取って欲しいのか、つまり何をCV=Conversion (コンバージョン)として設定するかが重要になります。これにより、サイトのPV数、ユーザー数、サイト内での回遊率、問い合わせ件数、SNSでの拡散率など、見るべき指標が変わってきます。

コンテンツを閲覧するために、どの程度のユーザーがサイトを訪れたかは、Googleアナリティクス※6を利用すれば、アクセス解析が容易に行えます。ユーザーが集まるコンテンツの把握や、複数回サイトを訪れるユーザーの年齢・性別・趣味/趣向などの属性が分かるので、ターゲット層としてペルソナを定める際にも有効ですし、効果的なコンテンツ施策が打てるのです。

多くの業界で利用されているチェック手法に、「PDCAサイクル」がありますが、コンテンツマーケティングにおいても、大いに効果が期待できます。

Pは「Plan(計画)」、Dは「Do(実行)」、Cは「Check(評価)」、Aは「Action(改善)」の頭文字を取っています。

Plan(計画)では、ペルソナの設定から始めます。コンテンツマーケティングは、顧客にとって価値のあるコンテンツを継続して配信する手法です。それには、ターゲットとなる顧客像の設定が、何よりも重要になります。できる限り多くのデータをもとにペルソナを想定し、具体的な人物像に仕上げることで、コンテンツの計画は立てやすくなるでしょう。

Do (実行)で、コンテンツを作成します。コンテンツやサイトデザインを作成したら、いよいよコンテンツマーケティングの運用をスタートさせます。

Check (評価)では、KPIの設定が大きな指標となります。KPIの指標は、何をCVに定めるかによって異なります。コンテンツマーケティング実施前のPV数、セッション数、ホワイトペーパーやeブックのダウンロード数、問い合わせのメール数などの分析データと、実施後のそれらのデータとを比較します。施策の実施前と後とで、どの箇所の数値が変化したか、明確になるでしょう。

最後に、Action (改善)で改善策を検討します。コンテンツマーケティングの施策を実行に移した後は、それまでに集めた解析データを基準に、コンテンツの改善するべき要因を分析します。「コンテンツの内容は、ターゲットの求める情報を提供しているか」、また「記事コンテンツのボリュームは十分に足りているか」、あるいは「サイトのデザインや、フォントサイズは適切か」など、サイト全体の見直しも視野にいれるようにしてください。

※6 Googleアナリティクス
https://marketingplatform.google.com/about/analytics/

まとめ:コンテンツマーケティングは長期的な視点に立って、社内で賄える業務を明確にし、それ以外は外部に委託しよう

今回は、コンテンツマーケティングという施策を始めるにあたって、具体的な方法について詳細に解説しました。

コンテンツマーケティングは、ターゲットと定める顧客に対し、価値のあるコンテンツを継続して提供することにより、自社の存在に気づかせ、自社の製品・サービスに興味を抱いてもらい、最終的には購買行動を起こしてもらうことが、施策の本質です。
コンテンツマーケティングに取りあえず着手はしてみたものの、これといった効果が見込めず、施策が打ち切りになってしまう企業の例も見られます。これは、コンテンツマーケティングを実践することにより、何を得ることができるのか、明確に設定していないからです。一般的なコンテンツマーケティングにおける目的としては、売り上げの向上、自社の認知拡大とブランディング、新規顧客の獲得と育成に集約されます。

コンテンツマーケティングでは、顧客が望んでいる情報を、どのように届けるか、が戦略になります。とりわけ、コンテンツをどのようなメディアで配信するかは、施策の成否を左右する重要な課題です。ここで主要な役割を演じるのが、オウンドメディアです。オウンドメディアは、企業が持つメディアの総称で、ネット上で運営される企業サイト、会社案内やカタログ・チラシなどの紙媒体、セミナー、営業マンのセールストークなど、多岐に渡ります。

企業活動においては当たり前のことですが、現在進行中の事業がどの程度進んでいるのか、進捗状況を測る上で、KGIとKPIの設定が必要です。企業のコンテンツマーケティング施策においては、目的に応じたKGI・KPIが求められるのです。

オウンドメディアの運営において、担当者を一番悩ませるのが、コンテンツの確保です。一口にコンテンツと言っても、コラム記事型、ホワイトペーパーに代表されるダウンロード系、ポテンシャルは無限大の動画コンテンツ、メールマガジン、ランディングページ、セミナーなど、多くの種類が存在します。

これらのコンテンツを組み合わせて、施策の効果を最大化するためには、ペルソナの設定と、消費者の購買行動モデルの理解が必須となります。自社のターゲットとする顧客像を、1人の血の通った人間として形作ることにより、その人物が求める情報が何か、鮮明にイメージすることができます。そして、消費者が購買に至るまでに、行動にどのような変容が起こるのかを把握しておけば、その都度、最適なコンテンツを提供することが可能になるのです。

コンテンツマーケティングは、コンテンツを作成してターゲットに提供して終了、というような安易な手法ではありません。きちんとしたデータ分析をもとに、PDCAを回転させながら、コンテンツを理想の形へと修正してく作業が繰り返されるのです。

それには、社内に担当者を置き、しかるべき予算と人員を確保して、コンテンツマーケティングを長期的に運営できるだけの体制を構築しておかなければなりません。

そうは言っても、大手であればともかく、中小企業であると、十分な人的リソースを割けないという事情もあるでしょう。ブログ記事の執筆・更新ぐらいは、社内の担当者でもできるでしょうが、長期的な視点で見ると、本業と掛け持ちで業務をこなすのは難しいかもしれません。

そうであるならば、はじめから社内でできる業務と、外部のプロに任せた方が能率が上がる作業とを分けて考える必要があるでしょう。

総合コンテンツ制作会社である弊社には、コンテンツ制作および、SNSを介してのアプローチ方法など、コンテンツマーケティングの効果を最大化させるスキルと知見を有した人材が、多数在籍しております。
お客様のニーズに対応し、最適なコンテンツの構築を行います。
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株式会社デファクトコミュニケーションズ
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大学卒業後、新聞社に勤務。企業へのインタビュー記事作成業務を経たのち、広告制作会社に勤務。退社後は、フリーランスのライターとして活動中。得意分野は、ビジネス、マーケティング、各種マーケットリサーチなど。
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