休業手当の支払いは必要?新型コロナウイルスの影響で従業員を休業させる場合の対応 


 
 新型コロナウイルスに関連した休業で多い相談の1つに、「休業手当を支払うケースと支払わないケースの違いがわからない」というものがあります。緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などによる休業の協力依頼や休業要請がある中で、どのようなケースなら休業手当の支払いが必要になるのか迷う経営者の方も多いのではないでしょうか。
社内で感染が広がれば、企業にとっては一大事となりかねません。本稿では、新型コロナウイルスに関連して従業員を休業させる場合の注意点について見ていきましょう。
 

そもそも労働基準法の休業手当とは?


 労働基準法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められていますつまり、企業側の都合により従業員を休業させた場合は、休業手当を支払うことが必要です。
最初に、原則的な平均賃金の計算方法から休業手当の具体的な金額を見てみましょう。平均賃金は、算定すべき事由が発生した日以前3ヵ月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除した金額で算出。
この場合、賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から起算して計算します。例えば、3月26日から休業する場合(賃金締切日が25日・3万円の月給制・残業や他の手当がない場合)、12月26日~3月25日の賃金総額で計算することが必要です。
 

期  間 月 分 暦 日 数 金 額
12月26日~1月25日 1月分 31 30万円
1月26日~2月25日 2月分 31 30万円
2月26日~3月25日 3月分 28 30万円
合 計 90 90万円

 
・平均賃金=前3ヵ月間の賃金総額÷前3ヵ月間の暦日数
手当=90万円÷90日×60%=6,000円
仮に3月26日~1ヵ月(労働日数21日)休業したとすれば、休業手当の月額は月給の60%の18万円ではなく、12万6,000円です。法律上の休業手当は平均賃金の60%以上であり、労働の義務がある日に支払うもののため、実際の金額はかなり少ない金額になってしまいます。
就業規則では、会社都合により休業を命じたときの賃金の支払いについて定める傾向です。しかし、中には基本給を全額保証する企業もあります。そのため、月給の60%がもらえると思っている労働者も少なくありません。
法律上は問題なくても、最低限の支払いだけではトラブルや離職につながるリスクがあるため、注意が必要です。なお、平均賃金の計算方法は、賃金が日給・時給・出来高払いなどで決められている場合の最低保障額もあり、支給方法や手当の種類によって計算方法が異なります。
計算方法がわからない場合には、労働基準監督署などに問い合わせるようにしましょう。
 

新型コロナウイルスに関連して従業員を休業させる場合の注意点

 休業が「不可抗力」の場合には、使用者の責めに帰すべき事由には当たらず、休業手当の支払い義務はありません。しかし、「不可抗力」とは、以下の2つの点で判断することになるので注意が必要です。
・①その原因が事業の外部より発生した事故
・②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても避けることができない事故
新型コロナウイルスの影響は、外部から発生したものですが、休業手当の支払いの義務は諸事情を総合的に勘案して判断することになります。そのため、協力依頼や要請により営業を自粛し従業員の休業を行う場合でも、一律に休業手当の支払義務がなくなるわけではありません。
自宅勤務やテレワークができる場合など業務可能な方法があるにもかかわらず、企業が十分に検討せずに休業を命じると、休業手当の支払いが必要になることがあります。

  • 感染した従業員を休業させる場合

従業員が感染し、都道府県知事が行う就業制限により休業させる場合には、休業手当の支払いは必要ありません。企業が加入している健康保険制度の保険者から傷病手当金が支払われます。しかし、傷病手当金は、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支払われる制度です。
最初の3日間について年次有給休暇を利用するなど、従業員とよく話し合って決めておきましょう。

  • 従業員が自主的に休む場合

新型コロナウイルスかどうかわからず、従業員が発熱などの症状で自主的に休む場合は、通常の病欠と同じ対応をすることになります。従業員が感染を恐れて休みたいと希望する場合も、休業手当の支払いは不要です。年次有給休暇を利用するなど、従業員の収入確保にも留意した取り扱いを検討してください。

  • 感染が疑われる従業員を休業させる場合

従業員の家族が感染し、従業員への感染が疑われる場合もあるでしょう。企業の判断で就労可能にもかかわらず従業員を休業させる場合、一般的には休業手当の支払いが必要です。後日、コロナウイルスへの感染が判明した場合には、「感染した従業員を休業させる場合」と同様の対応となります。
 

雇用調整助成金の有効活用を

 
新型コロナウイルス感染症により、事業の休止などを余儀なくされた企業も多いでしょう。労働基準法上の休業手当の判断とは関係なく、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた企業が活用できるのが雇用調整助成金です。
 
アルバイトやパートタイム労働者なども従業員に変わりありません。コロナウイルスの脅威が去った後、事業を通常業務に戻すためには、アルバイトやパートを含めた従業員の協力が必要となります。貴重な戦力となる従業員を守るためにも、今は雇用を維持しつつ、安心して休むことができる体制を整えることが大切です。
 
 
 

文・加治直樹(1級FP技能士、社会保険労務士)
銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。

 

 
 
 
 
 
 
 

デファクトコミュニケーションズでは年間1万2000本を超える制作実績のもと、専属ライターや各種有資格者による執筆や監修を実施。
お客様の「したい」を形にします。
各種新規事業、医療、美容、金融、法務や税務など、コンテンツ制作にお悩みの際はぜひご相談ください。