資金繰りに疲れたときに考えたい対策5選

多くの中小企業の経営者が頭を悩ませているのは、資金繰りについてではないでしょうか。なかには、数ヵ月後の運転資金をどう準備しようかと考えている経営者もいるかもしれません。資金繰りをがんばりすぎて疲れたときには、どのような対策を講じることができるでしょうか。今回は、資金繰りに疲れたときに考えておきたい対策を5つご紹介します。

一般的に考えられる資金繰りの方法とは?

一般的な資金繰りの方法は、主に以下の3つです。

資金繰り方法内容
融資の申し込み・必要な資金を金融機関に融資してもらうよう依頼する
在庫の整理・不要な在庫を廃棄や安売りで処分する ・廃棄にかかった費用を損金で処理する ※損金処理する場合は所定の手続きが必要です。また、必ず損金処理できるとも限りません。
固定費の見直し・使っていない倉庫や事務所の解約をして固定費を減らす ・不要な場所に人員を配置していないかをチェックし、余剰人員は足りない部署に異動させる

資金繰りをがんばっている経営者であれば、すでにこれらの方法を実施済みかもしれません。では、上記以外に取れる対策について考えていきましょう。

対策1.取引先と交渉する

資金繰りが厳しくなり、買掛金や銀行融資の返済金などの支払いが難しくなった場合は「返済を待ってもらえるように交渉する」という方法があります。その際は、いつごろに支払いができるようになるのかを明示しましょう。

特に、銀行融資については、新型コロナウイルス感染拡大が企業経営にも大きな影響を及ぼしていることもあり、リスケジュール(返済猶予)依頼には柔軟に対応するよう、金融庁から通達も出ています。返済条件を変更しやすい環境が整っている点は、経営者にとってメリットといえるでしょう。

また、返済猶予期間は督促をされないため、企業の経営に影響はありません。ただし、融資の条件変更を依頼する場合は以下の点に気を付けてください。

・条件変更を依頼する場合は、経営改善計画を求められる可能性が高い

申し出るだけで融資条件を変更してもらうことは、難しいでしょう。経営改善計画を作成したうえで、いつまでに返済できるかをはっきりさせておくことが必要です。

※コロナ禍が原因の返済条件変更の場合は、経営改善計画も相談しながら作成しましょう。

・条件変更で延ばせる返済期間は半年~1年程度

返済期間を延ばしてもらえるとしても、延ばせる返済期間は半年~1年程度です。その間に経営改善計画に従い、資金繰りの見直しやリストラ、役員報酬のカットなどを行わないといけません。経営改善計画は、実現可能なものを作る必要があります。

※コロナ禍が原因の場合はこの限りではありません。

・条件変更をしている間は、新たな融資は受けられない

返済猶予中は、同じ金融機関で新たな融資は受けられません。そのため、いくら厳しくても今ある資金で事業を運営する必要があります。さらに、猶予期間が終わり、返済が再開しても新たな融資が受けられるとは限りません。

リスケジュールは、倒産を避けるために有効な方法ですが、返済猶予期間は半年~1年ほどしかありません。また、猶予期間中は新たな融資が受けられない点は大きなデメリットです。「猶予してもらえれば返済が可能なのか」「資金繰りの目途は立つのか」などを判断してから交渉しましょう。

対策2.税金・社会保険料の支払猶予

銀行や取引先に支払い・返済猶予をしてもらうのと同様に、税金や社会保険も支払猶予(支払期限後の分割納付)ができないか確認してみましょう。猶予してもらいたいときは、担当窓口に申し出てください。

種類担当窓口
法人税・消費税などの国税国税局猶予相談センター
法人事業税・法人住民税税事務所
健康保険・介護保険・厚生年金保険年金事務所
労災保険・雇用保険労働局

猶予の手続きを取らず、延滞になった場合は延滞税(延滞金)が課せられます。例えば、国税の場合、年8.8%(※)です。

※納期限の翌日から2ヵ月を経過した後の割合。2021年1月1日~2021年12月31日までの期間の措置です。

なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、税金・社会保険料の納付が厳しくなった企業もあるかもしれません。その際は、納付期限までに申し出れば猶予が認められます。

※納付期限を過ぎて猶予を申し出ていなかった場合でも、やむを得ない事情がある場合は認められる場合があります。詳しくは所轄税務署や税事務所、年金事務所などにご相談ください。

対策3.使える給付金・補助金がないか確認しよう!

資金繰りに困った場合、中小企業向けの補助金が使えないかを確認してみてはいかがでしょうか。例えば、以下の補助金があります。

・雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置)

事業活動の縮小を余儀なくされた企業のための補助金です。労働者に対して一時的に休業、教育訓練、出向を行い、雇用維持を図った場合、事業主が労働者に支払った休業手当の一部が助成されます。

・小規模事業者持続化補助金(一般型)

経営計画を作成する法人・個人事業主が事業を発展させるため、販路開拓や生産性向上に取り組む費用が支援されます。

※対象となる法人、個人事業主は常時使用する従業員が20人(商業、宿泊業・娯楽業を除くサービス業の場合は5人)以下のところに限る

・小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型)

経営計画を作成する法人・個人事業主がポストコロナを踏まえて新たなビジネスやサービス生産プロセスの導入を行う際、販路開拓や生産性向上に取り組む費用が支援されます。

※対象となる法人、個人事業主は常時使用する従業員が20人(商業、宿泊業・娯楽業を除くサービス業の場合は5人)以下のところに限る

中小企業庁の中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」では、さまざまな利用可能な給付金・補助金が検索できます。自社が使えるものがないか一度確認しておきましょう。

対策4.日本政策金融公庫のセーフティネット貸付

正式名称は、「経営環境変化対応資金」です。外的要因で一時的に売り上げが減少している中小企業が利用できます。中長期的に業績が回復、発展することが見込まれる中小企業のための支援です。利用できる企業には、以下のような条件があります。

・最近の決算期における売上高が前期または前々期に比し5%以上減少している

・最近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比し5%以上減少しており、かつ、今後も売上減少が見込まれる

・最近の決算期における純利益額または売上高経常利益率が前期または前々期に比し悪化している

・最近の取引条件が回収条件の長期化または支払条件の短縮化などにより0.1ヵ月以上悪化している

・社会的な要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障をきたしているまたはきたすおそれがある

上記以外にも利用できる企業の条件がありますので、該当するか確認のうえ、申し込んでください。なお、資金の使い道は、企業維持上緊急に必要な設備資金、経営基盤の強化を図るために必要な長期運転資金です。担保設定、担保の種類については相談のうえとなります。また、直接貸し付けで一定の要件に該当する場合は、経営責任者の個人保証が必要となる場合もあるので注意しましょう。

融資限度額は7億2,000万円、設備資金は15年以内、運転資金は8年以内の返済が必要です。本当に返済できるのかを判断して申し込むようにしてください。

対策5信用保証協会の「セーフティネット保証」

信用保証協会とは、中小企業が資金を借りる際に保証人となる機関です。資金繰りが難しいときだけでなく、通常の場合でも中小企業の資金繰りの助けとなってくれます。信用保証協会でも、中小企業のための支援「セーフティネット保証」があります。セーフティネット保証は、経営の安定に支障をきたしている中小企業が利用可能です。具体的には、以下のいずれかに該当した企業が利用できます。

号数内容
1号大型倒産の発生により影響を受けている
2号取引先企業のリストラ等の事業活動の制限により影響を受けている
3号特定地域の災害等により影響を受けている特定業種を営む
4号特定地域の災害等により影響を受けている
5号全国的に業況が悪化している業種を営む
6号金融機関の破綻により資金繰りが悪化している
7号金融機関の合理化(支店の削減等)により借入が減少している
8号整理回収機構または産業再生機構に貸付債権が譲渡された再生可能な中小企業者

出典:東京信用保証協会

いずれかに該当し、所在地の市区町村の認定を受けた場合、一般保証枠とは別に最大2億8,000万円(6号の場合は3億8,000万円以内)の保証が利用できます。保証期間は10年以内、信用保証料率は0.85%~1.0%です。なお、支援を希望していても、「5号 全国的に業況が悪化している業種を営む」のように支援対象業種が限られている場合もあります。

詳細は、中小企業庁のホームページで確認してください。また、信用保証協会の保証が得られることになっても、貸付をする窓口は金融機関です。金融機関の審査次第では、融資を受けられない可能性がある点を覚えておきましょう(100%保証の場合は信用保証協会が審査します)。

「セーフティネット保証」と「セーフティネット貸付」の違い

「セーフティネット保証」と、先にご紹介した「セーフティネット貸付」は名称が似ていますが、次の違いがあります。

セーフティネット保証セーフティネット貸付
・信用保証協会は保証のみ、貸付は金融機関が行う ・利用できる業種が限られる場合がある・日本政策金融公庫が貸し付ける ・売上減などの条件を満たしていれば、業種は限られない

資金繰りが厳しくてもあきらめないで!できることを探そう!

資金繰りが厳しくなると、何をしたらいいのか慌てる経営者もいるかもしれません。そのときは、今回ご紹介した5つの対策について調べてみてください。まずは少しでも資金繰りにつながることはないか探してみましょう。コロナ禍においては、資金繰りのための支援策も多く登場しているため、中小企業庁や、各都道府県の支援で使えるものがある可能性も高くなっています。

また、いざというとき慌てないように日ごろから資金繰りについて何ができるのかを考えておくことがおすすめです。

文・田尻宏子  複数の金融機関での勤務経験や証券外務員第一種、ファイナンシャル・プランニング技能士2級の資格を活かし、金融関連専門のライターとして活動中。生損保・不動産・ローンの情報を中心に「誰でも分かりやすい記事をお届けする」をモットーに執筆。

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